ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■絶対的な響きをもって鐘の音は時を告げた 6
「おい、あんた! そこにいるんだろ!」
その声は言葉を続ける。
「夕方、チビの女の子を助けなかったか、あんた」
「無事だったの、あの子」
乱菊が思わず問うと、その声は笑った。
「そうだ。姉妹そろってウチに駆け込んできやがったんだが、混乱していてまともに喋れねえもんでさ。やっと説明を聞いてあんたを探しに出たってわけさ。花ちゃんがあんたの匂いを辿ってここまで来たんだが……逃げ出してきたのかい?」
乱菊は樹から滑り降りた。目の前には、見たこともない大きさの猪と、その背から降りた短い髪を布でまとめ上げた女性が立っていた。
「あんたを攫ったのは噂の抜け死神だろう? もう追っ手がそいつらのもとに着いているはずだ。大丈夫だ。とにかく町へ行こうぜ」
「でも」
「まだ誰か捕まっているのか?」
「捕まっていたのはあたしだけ。ただあたしを逃がして、まだ」
ギンが。
言葉に詰まりながら説明をしようとする乱菊を抱え上げると、女は乱菊を猪の上に放り投げた。乱菊は叫び声をあげて猪の背中にしがみつく。
「あんたは助けられたのか。あんたを助けた奴は大丈夫だ。もう追っ手が向かっているって言ったろ。今頃もう、着いている。あんたは戻らない方がいい。女が、ああいった連中に捕まったことはあまり知られない方がいいからな……そんな顔をするな。大丈夫だ。刑軍だけでなく、抜けた奴らの隊長が追っていると聞いている。さっきのでかい霊圧を感知して、もう到着している頃だよ」
女は乱菊を腕の中に抱え込むようにして猪に跨った。そして乱暴に、けれどやさしい手つきで乱菊の頭を軽くたたいた。乱菊は泣きそうになって、俯いた。
「とりあえず町に行けばいいか? 俺ん家で休むか?」
「あたし……死神の試験会場に行かなきゃ」
「え、マジ? 時間が……花ちゃん!走れ!」
いきなり猛烈な勢いで猪が走り出し、乱菊は慌てて背中の毛を握りしめた。
「そうか、死神になりてえのか」
「うん、そうすれば食べていけるから」
「はは、そりゃそうか。ただ着物に血がついてるぞ。途中で俺の家に寄ろう。着替えをやるよ。それで会場まで花ちゃんで送ってやる」
驚いて振り返ろうとした乱菊を、女は猪の背に押しつけた。
「体勢を崩すと落ちるぞ。送ってやるから心配するな。そんなに時間がねえんだよ。口を閉じてろよ。花ちゃん、もっと急いでくれ」
女の言葉に猪は更に加速した。顔に当たる空気が痛くて、ギンのことが気になって、乱菊は無言でしがみついていた。
夜が明けようとしていた。
目の前の空が、朝焼けで、真っ赤に染まっていた。
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04月04日(火)
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