ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■絶対的な響きをもって鐘の音は時を告げた 5
一地区に入ったのは、もうすぐ冬も終わろうとする、陽射しが少しずつ和らぐそんな頃だった。人から伝え聞いた試験日程まであと少しもないはずだった。
最も中央に近い地区だけあって、町並みは整えられ、人々の集団生活は最も機能しているように見えた。しかし、町ゆく人の表情は浮かない。どこか顰められた声で何かが囁かれていた。奇妙な違和感を感じて、ギンも乱菊も顔を見合わせた。
「何だか、変よね」
「そやな……なんかあるんやろか」
ギンは乱菊の手を握る力を強くする。
「乱菊……どこぞに隠れていてくれへんか。なんか、怪しいわ」
「……うん。ギンが心配なら、それでいいよ」
二人は固く手を握って町を出ると、森に入った。乱菊は荷物を持って大樹の上に登り、ギンに合図する。乱菊の姿が見えないことを確認して、ギンは町へと戻った。
ギンは急いで町を廻った。試験会場や時間を確認しておかなければならなかったし、この違和感の情報を聞いておきたかったが、乱菊を長く一人にするのは不安だった。試験の情報はすぐに手に入った。瀞霊廷内部の建物で二日後の午前中から行われるとのことだった。普段、平民は入ることの出来ない瀞霊廷もこの日ばかりは門番に受験を申請して入ることができるとのことだった。
それに対し、違和感の情報を手に入れるのは少し時間がかかった。目立つ容姿のギンは明らかに余所者で、警戒している人々の重い口はなかなか開かなかった。ギンは人の良さそうな老人と長々と四方山話をし、やっと聞くことができた。
抜け死神数人がこの辺りに潜伏しているらしいということだった。
「なんでまだこんな近くにおるんやろ」
ギンの問いに、老人は笑った。
「捜索が厳しくて動けないんじゃろう。どうも、危ない死神の仕事よりも、人買いの方が楽だと死神を抜けた者共らしい。力のある人買いの元に持っていく土産を探しているとも噂されとるの。そりゃあ、死神になれるくらいの力の持ち主なら、人買いなんぞやっても命を落とすこともなかろうからのう」
「そやけど、抜けたら罰せられるんと違うんか」
「今、刑軍の死神がここらをうろついるのも、そやつらを捕まえようとしているからじゃろう。すぐに捕まるじゃろうが。……あんたはまだ坊主だからいいが、目立つから一応、気を付けなさい」
「何でや?」
「人買いに土産に持っていくなら、子供か女を持っていくじゃろうよ」
ギンは思い切り眉を顰めた。どこにでもこういう話はある。特に狙われるのは少女だ。ギンは乱菊を置いてきたことを後悔した。
「この辺に、空き家あらへんか」
町から離れていると危ないかもしれない。そう危惧したギンは老人に問う。老人は首を傾げた。
「ここらは人が溢れてるくらいじゃから、ちょっとないのう」
「……あまり町はずれに行きとうないんやけどな」
「ワシも泊めてやりたいが、もう人が入りきらんからのう……それに、あんたは死神の試験を受けるんじゃろう。ここらでは死神は敬遠されとる上にこの状況じゃから、泊まれるかどうか」
「そうなんか?」
「下っ端の死神は威張り散らす乱暴者が多いからのう」
「……」
黙り込むギンを前にして老人はしばらく髭を弄んでいたが、やがて明るい顔をして言った。
「ここより少し北に行った森の手前には空き家があるな」
「森」
「そこも確かに町はずれじゃが、森を抜けた先の草原に志波様が住んでおるから、他の森よりは人通りがある」
老人は真面目な顔をした。
「が、用心を怠ってはいかんよ。あんたのその髪は目立ちすぎる。目立つということは、目を付けられるということじゃ……抜けたとはいえ、死神じゃからのう。強いだろうよ」
ギンはすぐに乱菊を迎えに行き、北の森に移動した。老人に教えられた空き家はすぐに見つかった。そこに人の気配はなかったが、ギンは霊圧を完全に押し殺してしばらく気配を探ってから、やっと中に入った。
「ああ、乱菊、ここまあまあきれいや。試験勉強しよ」
「今更何をするっていうのよ」
「読み書き」
「……確かにまだちょっと不安が残るわね」
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03月31日(金)
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