ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■地上の縁からのぞき込むと深遠の青が底もなく 2
あの夜以来、ずっと『これまで通り』にギンと話していない。このことは乱菊にとって予想以上にこたえた。ギンは最大半年も家を空けたことがあったし、ギンと話さないこと自体は特に苦痛でもない。しかし乱菊にとって、ほぼ毎日会っているのにもかかわらず、他人行儀にすることが何よりも辛かった。その他人行儀がいつか本当のことになってしまいそうで、そう考えると乱菊は自然と俯いてしまう。
こうやって距離が開いていくのだろうか。乱菊は思う。傍にいた頃だってギンの考えていることなど、乱菊は具体的には分からなかった。しかし、それでも全身から伝えられる言葉ではない言葉で、乱菊はギンのことをよく理解していたし、それはギンも同様だった。
それが今では確信も薄れ、乱菊はただ駆けていくギンの背を見ながら、何を隠しているのかぼんやりと考えるしかできない。喜びを哀しみを幸福を苦悩を分かち合いたくても、姿が遠くてその気配がよく分からない。
名を呼び合って笑っていた日々は、たった数ヶ月前のことなのに、それが今の乱菊にはあまりに遠かった。
そしていつのまにか立ち並ぶ高い白壁の建物の向こうにあった空は淡い霞んだような青ではなく、鮮烈に深く、濃く、染め抜かれた青になっていた。その空に切り抜かれたような輪郭で白い雲が浮かぶ。強い光は地面に濃い影を作り、その輪郭は切り取られたように鮮明だった。
石畳は強い光に照らされて熱を帯び、その上ではゆらゆらと空気が揺れて幻を浮かび上がらせる。木々は青々とした葉を茂らせ、その中で鳥は光を避けて羽を休めた。
季節は、夏になった。
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06月04日(日)
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