2005年01月15日(土)  ノンストップ『Mr.インクレディブル』

■ようやく『Mr.インクレディブル』を観る。作品ごとに新境地を拓いているピクサー。苦手だといわれてきた「人間」がついに主人公に。リアル追及ではなく2Dアニメのデフォルメ手法をうまく取り入れることで、生きたキャラクターを創り出すことに成功したのは、さすが。主人公一家のキャラクター設定のデフォルメ具合も、これまたさすが。冒頭から息もつかせぬ展開で、どうなるどうなると観ているうちにラストに突入。起承転結でいうと、起承転転転結と思ったらまた転結といった感じで、絵の動きはもちろんストーリーもスピード感抜群。このスピードに乗って観ていると痛快なのだが、破壊シーンが多すぎて、途中でしんどくなった。戦闘もの、破壊ものは観ていて疲れる。『スチームボーイ』『スパイダーマン2』そしてこの『Mr.インクレディブル』と、人間の作った「黒くて足がいっぱいの機械」が人間に制御できなくなって混乱を招くという図式が流行りなのだろうか。『ハウルの動く城』の城も黒くて足いっぱいだけど、あの城も反乱を起こすのか、観に行かなくては。■クレジットロールがはじまり、ようやく一息と思ったら、タイトルバックのモーショングラフィックがこれまたよくできていて見入ってしまった。『キャッチミー・イフユーキャン』のタイトルロールはCM界ではけっこう話題になったけど、それを彷彿とさせる。『Limony Snicket's...』のクレジットロールも凝っていたし、タイトルやクレジット周りまでエンターテイメントに仕立てるのが流行りだとしたら、うれしい。「(本編よりも)そういう映像に惹かれてDVD買っちゃう人もいるよね」と同僚グラフィックデザイナーの意見。

2004年01月15日(木)  谷川俊太郎さんと賢作さんの「朝のリレー」
2003年01月15日(水)  ひつじの国 ひつじの年
2002年01月15日(火)  ノベライズ


2005年01月10日(月)  オペラシアターこんにゃく座『森は生きている』

三軒茶屋の世田谷パブリックシアターにて、オペラシアターこんにゃく座公演『森は生きている』を鑑賞。イギリス旅行以来、オペラ・ミュージカルづいている。

今日の観劇に至ったきっかけは、半年前の発見。小中学校の同級生で、現在はチェロ奏者として活躍している中田有ちゃんのことをネット検索してみたら、『ぼくたちのオペラハウス』というCDを出していることがわかった。演奏者のところを見ると、中田有と並んで林光という名前がある。もしかして、義父がよく話している「こんにゃく座の林さん」だろうかと思って義父に聞いてみたら、そうだった。宮澤賢治の研究に関わっている義父は、宮澤賢治作品を題材にすることの多いこんにゃく座とは長いおつきあいだが、知り合ってもう三十年近くになるわたしと有ちゃんも負けていない。その有ちゃんがこんにゃく座の公演で演奏すると聞いて、義父とともにかけつけたのだった。

『森は生きている』の原作は『十二月物語』というロシアの児童文学。日本での初演は1954年だが、なんとそのときの作曲が林光さん。以来、半世紀以上も林さんの音楽とともにこの作品は日本で上演され続けている。そういえば、子どもの頃、おやこ劇場の鑑賞会で観たことがあった。そのとき聞いた歌も林さんの作曲だったのだろうか。全体的には聞いたことがあるような、ないような。でも「燃えろ燃えろ」ではじまる歌には確かな聞き覚えがあった。女王様の気まぐれでまつゆき草を探しに行くというストーリーも、観ているうちに思い出してくる。

役者が歌っているというより、歌手が演じている。表現力豊かな歌に引き込まれた。出演者は十二人。十二月の精だけで十二人以上なので一人二役以上を早変わりでこなしている。心優しい村娘が「十二月のみなさん」と言うとき、実際には十一人しかいなかったり、女王が精を兼ねていたりするのだが、それを不自然に感じさせないことに感心。隣の女の子は途中から数え直しては首を傾げていたけれど。面白かったのは、小道具のトランク。早変わりの着替えを入れるスーツケースであり、椅子であり、積み上げて馬車にもなり……と場面に応じて自在に変化。十二月の精たちが手にしたトランクを一斉に開けると、白いまつゆき草の花が咲きこぼれていたのには、思わずため息がこぼれた。

お目当ての有ちゃんのいるオケピには第二部の開幕と閉幕のときに光が当たり、有ちゃんの顔もしっかり見えた。どの音がチェロなのかまでは聞き分けられなかったけれど。楽屋を訪ね、少しだけ世間話。最近はクラシック以外での活躍が増え、Kinki kidsのコンサートでは5万人の歓声のなかで弾いたそう。教え子という小学一年生の男の子がお母さんと一緒に挨拶に来ていた。小学生の頃、有ちゃんが抱えているチェロはとても大きく見えたことを思い出す。

大阪の母に電話し、わたしが以前観た『森は生きている』を演じたのは劇団仲間だったとわかる。同劇団は今も公演を続けているが、作曲はやはり林光さんだった。さらに、小学校教諭をしていた母が参加した研修会でパネラーとして話されたのも林さんだったという。わたしが生まれる前の話。

2004年01月10日(土)  ラブリー「ニモ」!


2005年01月05日(水)  英国旅行10日目 オクトパスと三越とママの会とフレンチ


Heron Lodgeでの4泊は快適そのもの。夜遅いと心細いのでタクシーを使わなくてはならない不便はあるが、一泊一人£23でバスタブつきの部屋はありがたく、歩き疲れた体をお湯にしずめて癒す時間は至福だった。"Inspired Breakfast Award"受賞の朝食は4種類あり、全部制覇。何よりもChrisとBobの心づかいがすばらしい。財布事件では自分のことのように心配し、見つかったときには心から喜んでくれた。また帰りたくなる場所。9:42 Stratford発Marilbone行で11:55ロンドン着。少し歩いてcircle lineの駅からSlone Squareへ。駅前のブラッセリーで昼を食べ、Y邸に預けておいたスーツケースをピックアップし、タクシーでイギリス最後の宿The Rubens at the Palaceへ。

今回の旅で唯一のホテル宿泊で、チェックインするのもはじめて。ここは駆け込み宿泊をディスカウント予約できるサイトlaterooms.comで知ったのだが、ホテルのオフィシャルサイトに行ってみると、「ここで提供しているレートより安いところがあれば、お知らせください。その料金からさらに10%下げます」と表明。朝食つきツインを£99でおさえたが、通常レートだと£250以上するらしい。ディスカウントしているからといって安っぽいホテルではなく、建物も装飾もクラシカルで格調があり、従業員は皆フレンドリーで親切。red carnationというホテルグループのひとつで、隣には41hotelというワンランク上のホテルが建っている。従業員の胸にもバスルームにも赤いカーネーション。バスローブにも刺繍されている。なぜゆえレッドカーネーション?と聞くと、"Red carnation is the flower the owner fell in love with"とコンシェルジュ。なんだか素敵。

38番のバスに乗ってピカデリーサーカスへ。地下鉄とバス1日乗り放題券£4.5は3つ乗れば元が取れる。たまたま入ったショッピングモールで、わたしの目を釘付けにしたのがoctopusという雑貨屋。イギリスに来てこれほど物欲が湧いたのは初めて。引き出し、ライト、トースター、全部変で全部欲しい!シュガーポットと自転車のベルとバッグを買う。ポップな見た目の割には、けっこういいお値段。

舞台のPhantom of the Operaを上演しているHer Magesty Theaterをのぞくと、今夜もチケットはSold out。三越でしか売っていないという紅茶を買いに行くと、店内は日本!値札もポスターも日本語があふれ、店員さんもお客さんも日本人。地下のお土産コーナーでは「日本未入荷」と誇らしげな紅茶やジャムが並ぶ。京都に住む友人に「電車男に出てくるレノアって紅茶買ってきて」と頼まれて、あちこちの街で探したのだが、結局見つからなかった。(帰国して調べると「ベノア」だった。そりゃあ見つかりません)

三越近くの広場の露店でハートのキャンドルを買い、一人でホテルの部屋に戻る。5時過ぎ、留学時代の同期のN子が10月に生まれた長男君を抱いてやってくる。続いて、先日泊めてもらったご近所仲間で元同僚のI嬢が訪ねてくる。2月に出産を控えているI嬢とN子を引き合わせ、女三人で出産の話。この展開を予知したダンナは買い物を続けているが、「赤ちゃん連れなら部屋で会ったら?」と提案したのも彼だった。医学生でもあるN子の話はわかりやすく、わたしも今後のためによーく聞いておく。長男君でオムツ換えの実演、抱っこの練習も。イギリスは「自然なお産」の世界最先端を行っているそうで、好きなCDで音楽をかけ、アロマを焚いて水中出産なんてことができるらしい。

夕食はC君I嬢夫妻とともにチェルシーのLa Poule au Potへ。今回の旅行ではじめてのフレンチで、ジビエ料理が自慢のメニューはフランス語。フランス語もわかるC君にチョイスはまかせる。ダック、うさぎ、鹿などがそれぞれの肉に合った調理法で運ばれてくる。しっかりした肉の味は赤ワインによく合う。パンやバターはさすがフレンチ、つけあわせの野菜もおいしい。今回の旅の途中、ダンナが「結婚していちばん良かったことは何だろう?」と言い出し、それはご近所の会を結成したことではと二人で話した。ご近所仲間の二人がいなかったら冬のイギリスを訪ねることはなかっただろうし、ロンドンでこんなに楽しい時間を過ごすこともなかっただろう。人生をおいしくしてくれる友人がわたしたち夫婦の財産だとあらためて思った。

2002年01月05日(土)  知ってるつもり


2005年01月04日(火)  英国旅行9日目 ティーとブラッセリーと中華とショコラ

■やっとパブリックバスが走る!今日こそコッツウォルズの村へ。タウンセンターのBridge St.から本数は少ないが定期便がある。終点のMorton in Marshからバスを乗り継げば、前回訪れたときに感動した村Borton on the Waterに行けるのだが、接続に期待はできない。一本で行ける村はBroadwayとChipping Campden。まず遠いほうのBroadwayへ。一人£2.2。30分ほどで着くが、羊あり、はちみつ色の街並みあり、バスから眺める風景も楽しい。Broadwayはレストランや商店が並ぶ一本道のHigh Streetの他には教会があるぐらいの小さな町。30分も歩けば見て回れるが、観光協会(どんな小さな村にも必ずあり、親切なおじさんかおばさんがいる)ですすめてもらったティールームでゆっくりランチとお茶をすることに。
■とてもラブリーな店だが、応対したロッテンマイヤーさん風おば様は、他の客にはにこやかに愛想をふりまくのにわたしたちには注文をとる以外は口をきかず、「ここ座っていいですか?」「トイレはどこですか」などと質問しても、眼鏡の奥から上目遣いに見据えるだけだった。日本人は何か嫌な思い出でもあるのだろうか。そういえば、「日本人が何かやらかした跡」にあちこちで出くわす。「ドアは持ち上げて引く」「走行中は立ち上がらない」「お勘定は出口でお願いします」といった日本語の貼り紙のまわりに英語や他の言語のものが見当たらないのは、「言葉は通じないがトラブルを起こす日本人対策」だと思われる。中には書き写したようなたどたどしい日本語もあり、よっぽど差し迫った事情があったのだろうかと想像すると、痛い。ドアがうまく開かなくてもなるべく騒がないようにしよう。
■Chipping Campdenまではバスで15分ほど。元来た方角に戻るのに、なぜか降りた停留所から乗る。Broadwayよりはひとまわり大きな街だが、Broadwayよりも観光地っぽくなく自然な佇まいがある。こっちで昼を食べるべきだった。洒落たブラッセリーに入り、「飲み物だけでもいい?」と聞くと、快い返事。何でも作れると言うのでモカチーノを注文。ここのトイレは、木の便座、テラコッタタイル率の高いイギリストイレの中でも特筆もので、エンボスつきトイレットペーパーに感激。この村は買い物も楽しく、キッチュな指輪(£2.25)や紙と布でできたミニミニスーツケース(£8.5)を衝動買い。
■醤油の味が恋しくなって、夕食はStratfordのMayflowerで中華。スープとおかず3品と炒飯で二人前£24は、ボリュームの割におトクだが、ここでも感じのよくないおばさんに当たってしまった。映画『The Marchant of Venice』を見ようかどうか迷うが、寝そうなので早めにHeron Lodgeへ引き上げる。部屋に置いてある本や雑誌の中に映画ショコラの原作Chocolatを発見。原作ものだったとは知らなかった。途中まで読んでいたら、いい感じで眠くなる。

2004年01月04日(日)  じゅうたんの花の物語
2002年01月04日(金)  ひだまりでウェイクアップネッド


2005年01月03日(月)  英国旅行8日目 妻・母・長女の家と財布とシーザー

■5つあるShakespeare Houseのひとつ、シェイクスピアの妻、Ann Hathewayの家は宿泊先のHeron Lodgeから歩いて10分ほどの緑の中にある。木の上を走り回るリスを見上げながら10時の開館を待つ。「シェークスピアも興味ないのに、妻の家を見せられてもねえ」とダンナは渋々お付き合い。シェークスピアは結婚前、現在タウンセンターにある生家から徒歩でここまで通っていたそう。わたしたちは昨日Ann Hatheway Houseからタウンセンターへ抜けたのだが、もしかしたら同じ道を歩いたのだろうか。「シェイクスピアとアンが会うときは必ずアンの家族の目があったが、なぜか結婚したときアンはすでに身ごもっていた」らしい。ここは庭が素敵で、寄付した人のメッセージ("Eternity is in your lips and eyes""I loved nothing in the world so well as you"など詩のようなフレーズも)が刻まれたベンチや彫刻や植え込みでできた迷路などが上品に配置されている。これらは最近の試みのよう。■ギフトショップで買い物しようとして、トラブル発覚。財布がない!あわててHeron Lodgeに戻ると、部屋にもない。最後に使ったのは、昨日タクシーで宿に戻ったときだから、落としたとしたらタクシーの中。ベルを鳴らし、ChrisとBobに助けを求めると、ストラットフォード中のタクシー会社に電話してくれるが、答えはことごとくNO。ところが最後に警察に電話したBobが「Fantastic!」と叫んだ。なんとわたしたちの後に乗った乗客が車内で拾って届けてくれたらしい。警察署に現れたわたしを見るなり、窓口の女性が「あなたがラッキーレディーね」とにっこり。クレジットカードに顔写真が入っているおかげで本人確認もスムーズ。届けてくれた親切な人の住所と電話番号を聞き、電話でThank youと伝えると、良かったと喜んでくれる。お礼なんていりませんよと遠慮されたが、日本から何か送ろうと思う。ほっとしたらおなかがすいて、EDWARD MOONでスープとビーンライスをもりもり食べる。綾戸智絵風な元気笑顔のウェイトレスさんがとてもいい感じ。■バンクホリデーなので今日もパブリックバスは走っていない。シェイクスピアハウスを解説付きで巡回する観光バスを使うしかないが、£8もするくせに解説の日本語はコピー的にもナレーション的にも改善の余地大いにあり。「妻の家も興味ないけど、お母さんの家もねー」とぼやくダンナを引きつれ、郊外にあるMary Arden's Houseへ。タウンセンターに戻り、「今度は長女夫妻ですかい?」。長女の夫は外科医で、当時の医療器具やカルテも展示されている。このハウスに併設されたティールームはとてもいい雰囲気なのだが、4時でclosed。残念。■近くに教会があるので行ってみると、ここにシェイクスピアが眠っているという。妻のアンや母のメアリーの名前もある。高い天井、ステンドグラス、閉館前で他に訪問客はいない。あなたの今日のdonationもTSUNAMIで被害に遭った人に届けられますよと案内の男性。どこの教会へ行っても「TSUNAMI DISASTER」への募金と理解を呼びかけている。「正面は鍵閉めちゃったから、こっちから出て」とおばちゃんが先導してくれ、立派な教会とギャップの事務室のようなところを抜けて裏口に出る。「バックステージを見られてラッキー」と言うと、おばちゃんは笑っていた。
■昨日一昨日に比べると今日は人出が多く、Avon川のほとりを散歩する人の姿も目立つ。シェークスピア気分が高まり、「今夜はシェイクスピア劇に挑戦しよう」。「Caesar」のチケットを求めると、立見しか空いていないが£5だと言うので購入。劇場のSwan TheaterはRoyal Shakespeare Theaterの隣。ここには小さなミュージアムがあり、過去の公演で使われた衣装が展示されているが、点数は少ない。川の近くのダイナーで腹ごしらえ。カウンターでテーブル番号を伝えて注文するスタイルだが、チップの煩わしさもなく、長居出来た。ここも店員さんはウェルカムな感じ。さて、Caesarは予想を裏切り、ウエストサイド物語の決闘シーンのような衣装とライティングで幕開け。ダンスが始まるのではと期待させたが、ひたすら台詞、台詞。元ネタがよくわかっていない上に現代風にアレンジしているので、わけがわからない。聞き取れるのは「シーザー!」だけ、と思ったら、もうひとつ、「ブルータス!」も出てきた。この状況で、バーにつかまっての立ち見もキツイ。客席を見回すと、皆腕を組み、神妙な顔つき。退屈しているのか反芻しているのか。と、万雷の拍手。すばらしーというより、やっと終わったーと聞こえる。1時間半かけて第一部が終了したのだが、見続ける体力はなく劇場を出る。£5のチケットに未練なし。
■パスタが食べたくなり、CAFFE UNOというイタリアンへ。二人合わせて大人一人分の小柄なわたしたちはどの店に行っても「一皿をシェアします」と言うのだが、取り分け皿を出してくれるお店さえ稀なのに、この店は最初から二皿に盛ってきてくれた。「わたしもコレ、今日の夕食に食べたのよ」と言うウェイトレスにも好感。味も期待以上。

2004年01月03日(土)  庚申塚の猿田彦神社
2002年01月03日(木)  留守番


2005年01月02日(日)  英国旅行7日目 生家と古城とリモニー・スニケット

■「今日は日曜日なのでバスは走ってないよ」と言われ、電車でWarwick Castle(ウォーリック城)へ行くことに。Heron Lodgeからfootpath(小道のようなもの。あちこちに「footpath」の看板がある)を40分かけて散歩しながら10時前に駅に行くと、「次の電車は11時57分」と言う。待ち時間にShakespeare's Birth Place(シェークスピアの生家)を訪ねる。シェークスピア関連ミュージアム5館共通チケットは£13。別々に買うと£25.6。こっちのcombine ticketは割引率が大胆。ちなみにWarwickまでの往復切符と入場料のcombine ticketが£14で、入場料だけだと£13.5。■Shakespeare's Birth Placeではシェークスピアが暮らした時代をできるだけ再現。当初は手袋職人として生計を立てていたシェークスピアの工房も当時の風情を伝えている。「手袋職人は、いい仕事だったの?」「手に職があるというのはいつの時代もいいことですよ」といったやりとりがゲストと案内係の間で交わされている。とても小さなベッドに驚く。
■駅へ向かう途中でHathaway's Tea Room(Hathawayはシェイクスピアの妻の旧姓)でクロワッサンザマンドとティーをテイクアウト。あわせて£1.85とリーズナブル。イートインもできるお店だが、ショーウィンドウに並んだパンやスイーツがそそる。何より驚いたのが、店番していた女の子たちが恐ろしくかわいかったこと。美人遭遇率の低いこの国で一度に三人の美少女が出現。顔立ちからすると東欧系かもしれない。結局、この旅で出会った美女ベスト3は彼女たちが占めることに。■電車の切符はFrom:Stratford To:Warwick Castleとなっている。Warwick Castleという駅があるのではなく入場券込みの意味だが、Warwick駅の手前にWarwick Parkway駅があり紛らわしい。日本のような親切な路線図が車内にあるわけでもなく、電車乗るのもドキドキ。約25分で着き、駅から10分ほど歩く。ただの城跡かと思いきや、見所満載でテーマパーク化しているWarwick城。有名なマダム・タッソーが蝋人形で再現した当時の優雅な暮らしは、蔵書3000冊のライブラリー、客人のためのベッドルーム、マダムたちが集うオリエンタル長の部屋……と何部屋にもわたり、見ごたえ十分。外では530段の階段を上り下りして要塞に上ったり、水車小屋のある川べりを散歩したり、Peacock Gardenで目の前をうろうろする孔雀に驚いたり、地下牢跡をのぞいて身震いしたり、中世の拷問道具の展示にギョッとしたり。一時間ごとに人形劇や大道芸(派手にお皿を割るヘタクソな兄ちゃんが愛嬌で勝負)があり、さらにお金を出せば占いや輪投げ、お化け屋敷にスケートリンクまである。カフェテリア形式のレストランの食事も動物園とは大違い。なんたってお城だし。野菜コロッケ風メニューがおいしそうだったので注文すると、レシートにはkid's menuと印字されていた。日曜日で電車が2〜3時間に1本しかなかったのだが、遊びきれないので5時間滞在。
■今夜のストラットフォードは芝居もなく、昨日以上にひとけはない。そんな中、妙ににぎわっているレストランVintnerに入ると、大当たり。対応よし味よし、アスパラとルッコラのバルサミコ酢&パルミジャーノ、ケイジャンチキン&アボカド、ほうれん草とリコッタチーズのラビオリをぺロリ。親切なウェイターが「この街にはcinemaがある」と隣の客に話しているのを聞きつけ、場所を教えてもらったのも収穫。
■映画館は、何度も通っている時計台前から少し奥まったところにあった。8:30からMarchant of VeniceまたはLimony Snicket's a series of Unfortunate Eventsの上映。シェイクスピアの里でベニスの商人を観るのも粋だけど、ジム・キャリーが怪しいオッサンになって三人の子どもたちをびびらせているポスターに惹かれて後者を選ぶ。ここでも一人£5.5。このLimony Snicketが掘り出し物。「げ、スクリーン間違えた?」と焦るような明るいアニメではじまり、「これはこれから上映する作品とは別物。ハッピーエンドがお好みなら、今からでも遅くないから他のスクリーンへどうぞ」と人を食ったナレーションが入る。主人公はBeaudelaireの三きょうだい、inventer(発明家)の姉Violet(Emily Browning)、reader(読書)の弟Klaus(Lian Aiken)、biter(何でもかじる!)の赤ちゃんの妹Sunny(Kara and Sherby Hoffman なぜ二人?)。 両親を失い、孤児になった三人は莫大な遺産を相続するが、それを狙うのがジム・キャリー演じる初代後見人Count Olaf。本気で子どもたちを殺そうとするし、2代目3代目後見人guardianにも容赦なく手を出すし、長女との偽装結婚まで企てるし、子ども相手に本気で立ち向かってくるのだが、きょうだいは発明したり本の知識を応用したり噛んだりしてピンチを乗り切る。はちゃめちゃのまま突っ走るのかと思いきや、ラストには泣ける手紙。あなたたちにはお互いがいる。どんなに小さくてもサンクチュアリを作ることは出来る。どんなときにも何かできることがある……。"There is something"は何度も出てくるフレーズ。絶望的に見える状況でも何かある、何かできる、と希望を失わない三人のたくましさに拍手。演技もブラボー。語り部リモニー役はジュード・ロウ、文法命の後見人Josephine役はメリル・ストリープと贅沢なキャスティング。クレジットロールの屏風調アニメも凝っていて、ビジュアル的にも楽しみが尽きない。わたしは知らなかったけど、原作のリモニー・スニケットは全世界で1800万部売れている人気シリーズなのだそう。映画の邦題は『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』。

2004年01月02日(金)  金持ちよりも人持ち
2002年01月02日(水)  パワーの源


2005年01月01日(土)  英国旅行6日目 嵐とプリンと美女と野獣

■ロンドンからシェイクスピアの故郷Stratford upon Avonへ行くには「Paddington駅から」とガイドブックに書いてあったので、Paddington発Stratford upon Avon着で列車を検索し、プリントアウトを持ってきた。乗換えがいっぱいで厄介だなあと思っていたら、乗換え1回というルート見っけ。London Paddington駅から地下鉄で2駅のLondon Marylbone駅へ行けば、あとは一本。地図で調べると、Marylboneは「ロンドンにいくつもある鉄道始発駅のひとつ」だとわかる。二日酔いのC君に直接駅まで送ってもらい、乗換えなしで終着駅のStratford upon Avonまで約2時間半。今夜から4泊するB&B、Heron Lodgeは駅をはさんでタウンセンターと反対側へ約1マイル。ご主人のBobに駅でピックアップしてもらい、宿に到着すると、夫人のChrisが温かいお茶とクッキーで迎えてくれる。
■外は強い風雨だが、傘を借り、タウンセンターまで歩く。雨の元旦ということで人出は少なく、開いている店もまばら(商店は5時で閉まることを後で知る)。だが、ロイヤルシェイクスピア劇場では今夜上演があると言う。窓口で「なるべく舞台に近い席」をお願いすると、前から3列目が空いていた。芝居前に腹ごしらえする客目当てのレストランが集まるSheep StreetのOppoという店で海鮮サラダとラザニアの夕食。イギリス料理にしては繊細な味つけ。バースより食事のレベルは高いのかも。調子に乗ってデザートも注文したら、甘さに卒倒しそうになる。
■7:15Beauty and Beast開演。黒いスーツとドレスに白塗りの顔の男女が客席側から舞台に上がり、呼吸を合わせてサングラスをかけ、スポットライトがONになる。かっこいいオープニング。このお芝居では彼らが黒衣とダンサーを兼ねる。対照的な白い衣装の男女8人が登場。お金持ちの夫婦と6人の子どもたち。長男は天文家を夢見る勉強バカ。次男はオリンピックを目指すスポーツバカ。三男は嫌われ者のただのバカ。長女は高望みな生意気娘。次女は物欲狂いの病気ちゃん。今度こそ、の望みを託されて生まれた三女は生まれたときに"Qu'est bella la Monde(世界は何て美しいの!)"と言ったことからBeautyと名づけられ、姿も心も美しい子に育つ。■舞台装置は極めてシンプルだが、想像力をかきたてる計算が尽くされている。母が亡くなり、父が事業に失敗し、召使つきの生活から一家が没落するシーンでは、天井から吊るされた7本のハンガーに父子がそれぞれの上着をかける。天井に引き上げられる上着を見上げる7人は客席に背を向けているが、もう手が届かない優雅な暮らしを惜しみ、行く末を案じる気持ちは、表情を見せないことでかえって伝わる。そして、自らが耕すことになる荒野へ向かう7人は、天井から吊るされた大きなブランコに乗り込む。ステージ上をスイングするブランコの上で力強く歌う父子。その下では沼地を表す茶色い布が張られ、布の下を動き回る黒衣の動きがぬかるみを表現。左右からパペットのウサギが現れると、"What's that?""Dinner!"と笑いを取ることも忘れない。ロープ使いといえば、道に迷ってBeastの屋敷に迷い込んだ父がBeautyのために摘むバラの花は、左右からピンと張られたロープの真ん中に咲いていた。Beastが天井から壁を這って登場したり、Beastの屋敷のMirror Roomの「鏡」を枠と黒衣のパントマイムで表現したのも面白かった。役者もレベルが高く、Beauty一家とBeastはもちろん、三枚目役のロボット召使(三男、長女が二役)のコミカルな演技も爆笑を誘っていた。■ディズニー映画のBeauty and Beastは大家族の設定でなかった気がするが、この舞台は、バラを摘んだのを見つかった父がBeastに「生きたまま食うぞ」と脅され、「さもなくば、Beautyという愛娘を差し出せ」と持ちかけられる。父の苦悩を知ったBeautyが自ら宮殿に乗り込み、Beastと心を通わせ、呪いを解く。感動的なストーリーだが、呪いが解けて人間の姿になったPrinceが立ち上がったとき、観客の目に最初に飛び込んだのが淋しい頭髪で、ちょっと夢がさめてしまった。大団円のウェディングパーティーの後、冒頭と同じく黒衣たちが舞台中央に集まり、ポーズを決め、サングラスをかけ、指で「オフ」の合図をするとライトが落ちる。その瞬間沸き起こる拍手の嵐にゾクゾク。シェークスピア作品ではないけど、さすがシェークスピア劇場!

2003年01月01日(水)  2003年の初仕事
2002年01月01日(火)  幸先
1999年01月01日(金)  テスト


2004年12月31日(金)  英国旅行5日目 ロイズとパブと年越し

■体に良さそうなスープとおいしいフランスパンの朝食で目覚める。イングリッシュ・ブレックファースト続きだったので新鮮。「ロイズに入れるチケットがあるんですが、興味ありますか」とC君。「そうですね。ひょっとしたら、欲しいものが見つかるかもしれないし」とダンナが神妙に言うと、「え? ロイズって保険の取引所」ですよ」とC君。ダンナは宝石屋だと勘違いしていたが、わたしも「レストラン?なわけないか」と思っていた。ロイズでは市場のように各保険会社がブースを出していて、そこで日々保険が売り買いされているそう。損害保険会社に勤めるC君は入管許可証を持っていて、家族や友人を同伴することもできるのだとか。「関係者以外立ち入り禁止」の館内に足を踏み入れ、グランドフロアを見学。アンダーライターと呼ばれる「書類にサインをする人」が待ち受けるブースの間をブローカーが顎を上げ、颯爽と歩き回っている。脇に抱えているのはPCではなく分厚い書類。デジタルではなくアナログなのだ。建物中央のエスカレーターはスケルトンになっていて、黄色い車輪が回っているのが見える。上層階にもブースはあるが、グランドフロアに出店するのがステータスなのだとか。行きかう人々の顔からは誇らしさが感じられ、大晦日だというのに活気に満ちている。ひときわ目を引く祠のようなものには、難破船から引き上げられたという鐘と、それを鳴らすための赤いローブをまとった老番人が佇み、荘厳さと風格を醸し出している。わたしの仕事とは縁遠い空気に包まれたこの場所に招き入れてくれた友人に感謝。
■イギリス紳士たち(最近ではもちろん女性も)はパブで一杯引っ掛けながら仕事を話をする。というわけでロイズのすぐ脇にあるDavyというパブへ。昼休みの11時を過ぎると、たちまち人でいっぱいに。席に着かず、立ち飲みの人がほとんど。今年の仕事納めということで「お疲れ様」の雰囲気が感じられるが、書類を広げて商談を進める紳士の姿も。食事はなかなかおいしく、レバノン料理のhoumosa(?)というヒヨコ豆とにんにくのペーストが最高。タバコと年月でセピア色に染まった壁、積み上げられた樽、ブーブクリコの空き瓶のロウソク立てもいい味を出していて、ノンアルコールでもいい気分。
■スーパーマーケットに立ち寄り、King's Roadを冷やかし、6時頃からY邸で夕食。夫婦二組で年越しするはずだったが、今朝、わたしの留学時代の同期だったN君から「ロンドンで働くことになり、一昨日からこっちで家探ししている」と電話があり、大晦日は一人きりだと言うので、C君I嬢に相談したところ、N君も混ぜてもらえることになった。I嬢の手料理に歓声を上げながら、よく食べ、よく飲み、よくしゃべる。N君は初対面のC君をいきなり指差し、「下唇が大きいから、あなたはグルメですね」と断言。N君とは高校時代からのつきあいだが、あんなに話す姿を見たのは初めて。とても楽しかったよう。ビッグベン時計大晦日ディナーテレビに映し出されたビッグベンが12時を指し、一同で「あけましておめでとう」。ロンドンの新名所となっている巨大観覧車ロンドン・アイ周辺で繰り広げられる花火が10分にわたって中継される。観覧車の周りを火が走ったりして大掛かり。■こちらのテレビは始終スマトラ沖地震の津波のその後を報道しているが、大晦日のニュースでも「皆さんが新年を祝っているこの瞬間も救いを求めている人々がいます」と時間を割く。新聞の一面も、連日、食料を求める家族連れや親を亡くした少女の写真が飾る。自分だけ幸せになれない、ならない、ということを強く意識させられるようになっている。日本でも同じような報道がされているのだろうか。悲劇は時間とともに忘れられるが、復興は根気と時間が要る、とレポーターは訴える。地震に遭った新潟の人々は、希望を持って年を越せただろうか。

2003年12月31日(水)  年賀状でペンだこ
2002年12月31日(火)  大掃除に救世主あらわる
2001年12月31日(月)  祈り
2000年12月31日(日)  2000年12月のおきらくレシピ


2004年12月30日(木)  英国旅行4日目 動物園と再会と中華

■朝食とホスピタリティが自慢のMarlborough Houseに別れを告げ、今日はロンドンへの移動日。だが、バースからロンドンとは逆方向行きの電車に乗り込む。ブリットレイルフレキシーパスは指定日中は乗り放題。いっぱい乗らなソン、と浪速のおばちゃん根性で、バースの隣の終着駅Bristol Muse駅で降り、Bristol見物することに。ところが駅に着いて「スーツケース預かってくれる場所は?」と尋ねると、「ない」と駅員さん。冗談かと思ったら「We can't trust tourists anymore」とマジな返事。荷物に爆発物が入っているかもしれぬ、というテロへの警戒心なのか。さて困った。美しい港やつり橋があるらしいが、でかいスーツケース転がして行くわけにもいかない。仕方なく、2004年のzoo of the yearに選ばれたBristol Garden Zooだけ見ることに。バス(一律£1.1 一日券£2.9)
■入場券(£9.5)を買って「スーツケース預かって」と言うと、窓口のおじさんは呆れ顔で首を振る。「じゃあこれ転がして檻の間歩くしかないの?」と言うと、事務室で預かってくれることに。ドイツの動物園と似た印象で、日本のものに比べて檻が開放的。鳥などは檻の外を歩き回っていたりする。便器の中に蜘蛛を展示していたり、見せ方も面白い。ところどころに「フラミンゴみたいに片足で何秒立てるかな」といったzoolympicの立て札があり、楽しませてくれる。大人が子どもたちに動物の説明をしている姿がほほえましい。Aye-Ayeという種類のおサルさんがいて、みんなが「アイアイだー」とはしゃいでいた。「アイアイ アイアイ おサルさんだよー♪」のアイアイはこいつだったのか、と感激。ゴキブリの展示もあって「この大きな種類のゴキブリは迫力があるので映画やテレビの撮影に引っ張りだこ」なんてマジメな解説がついている。
■Paddington駅に5時過ぎに着き、構内で軽くお茶。カプチーノはSmallなのにボリュームたっぷり。10年前に来たときより、イギリスでおいしいコーヒーが飲めるようになっている気がする。■6時、circle lineに乗ってSlone Square着。初乗りが£2.1。400円以上と換算すると高い。今年春からロンドンに住んでいるI嬢と待ち合わせ。I嬢とC君の暮らすY邸に今夜から2泊お世話になる。夕食はチェルシー地区にあるHUNANというチャイニーズ。繊細なだしや醤油の味に体が喜ぶ。豚の腸、カエルなど面白い食材も。デザートの杏仁豆腐と小豆クレープまでおいしくいただく。

2001年12月30日(日)  アナログ


2004年12月29日(水)  英国旅行3日目 巨岩と村と怪人

■今日はMarlborough HouseのLauraおすすめのバスツアーに参加。ストーンヘンジやコッツウォルズの村を7時間かけて案内つきで回る。madmaxという家族経営の会社がやっていて、移動は乗客最大16人のミニバン、お値段もひとり£22.5とリーズナブル。Elgin Villaで早めの朝食を済ませ、abbey横のピックアップポイントに8:45集合。日本人はうちの夫婦と留学生らしい若い女の子二人。あとはアジア系、アラブ系、地元系など様々。ドライバー兼案内係のIanが慣れた口調でイギリスの6000年の歴史を20分で駆け抜ける。ところどころで乗客が質問を投げ込み、歴史の授業風。約1時間でストーンヘンジに到着。
■遺跡の岩のまわりはだだっ広い緑。教科書などで写真は見ていたものの実物の迫力は桁違い。地面に根を張って立つ巨岩の列は、低く垂れ込めた雲ともあいまって、神々しさが漂う。何のために建てられたかはミステリーだが、何か説明のつかないパワーを感じる。古代の人々もこの建造物に常識を超えた何かを求めたのかもしれない。おなじみオーディオガイドはここでも興味深い説明をしてくれるが、懇切丁寧すぎて、最後まで聞いているとなかなか前へ進めない。■土産屋が軒を連ねるということはなく、小さなギフトショップとテイクアウトのSTONEHENGE KITCHENが並んでいるのみ。このキッチンのメニューが妙にそそる。アップルスコーン(£1.95)とお茶(£0.65)を買い、バスに戻って味わっていると、集合時間を過ぎても日本人留学生二人組が戻ってこない。15分が過ぎ、Ianがイライラして探しに行った。車内では「おいおい」という冷たい空気が流れ、わたしも肩身の狭い思いをする。だが、戻ってきた二人はIanが何に苛立っているかわかっていない様子。「集合時間とっくに過ぎていて、皆さんを待たせていたんですよ」とわたしが耳打ちすると、ようやく「マズイ」という顔に。「集合時間聞いとけばよかったね」「だねー」と二人なりに反省していたが、英語力ではなく団体行動力の問題だった。謝るタイミングも逃してしまい、他の乗客には「待たせて平気な日本人」の印象を残すことになった。
■観光名所のストーンヘンジ以外にもこの辺りにはストーンヘンジが点在する、ということで、車で10分ほど行った先にある「石に触れる身近なストーンヘンジ」へ。古代の生命力を秘めた石からパワーがもらえるとか。ご利益ありますように。さて、ここで聞いた興味深い話。この一帯を保存するために買い取った人物が巨岩のひとつをどけたところ、白骨化した男性の死体を発見。石に押し潰されての圧死ではと死因鑑定のため遺骨をロンドンの研究機関に送ったが、第二次世界大戦の最中で、1940年、研究機関の建物が爆撃に遭ってしまう。ところが二年前にひょんなことから大英博物館が遺骨を発見、半世紀以上遅れて鑑定が実現した。その結果、あわれな男性の死因は圧死ではなくblack deathだとわかったという。black deathとは中世の頃に流行った疫病で、当時は人口の25%がこれで命を落としたとか。恐らくペストのことだろう。何百年も前の死体の死因を骨だけで判定できるってすごい。
■昼食はLacockという古い村にあるGeorge Innというレストランで。Lacockは村ごとnational trustに保存されており、村にゆかりのある家族しか住むことができないそう。古い家は13世紀から家系図をたどれるとのこと。ここの寺院はハリーポッターのホグワーツ魔法学校のロケ地として使われているそうだが、冬の間は中に入れない。1時間半のランチタイムの間に食事と村観光をするはずだったが、同じテーブルになったアフガン人夫妻とタイ人姉妹との会話が弾み、気がついたら集合時間10分前になっていた。国費留学中の夫・アズィール(be lovedという意味だそう)に妻がくっついてきているアフガン人夫妻は、わたしたち夫妻と結婚年月日が2週間違いということもあり、意気投合。アズィールの専攻は政治だそうだが、非常にスマートでユーモアもあり、こんな人物がいればアフガニスタンも心強い、と思わせた。留学中の姉のところに妹が遊びに来ているタイ人姉妹は育ちが良さそうで、頭のいい受け答えをしていた。
■最後の目的地はコッツウォルズの小さな村、Castle Combe(カッスル・クーム)。全英一美しい村に選ばれたこともあるとかで、時間が止まったように佇む風景は、どこを切り取っても絵になる。お墓も橋も何もかもが静謐で美しい。Manor Houseという名の格調高いマナーハウスがあり、窓から赤絨毯とアンティーク調の家具が見える。この静かな村で約1時間、思い思いの散歩を楽しむ。各自が自由に見て回れる時間をなるべく取るのがmadmax tourの方針のようで、「we do things different」が宣伝文句。カッスル・クームからバースへ戻る道は、疲れて眠る乗客のためにIanは黙って運転する。バースへ行く人にはおすすめのツアー。
■4:30にBathに戻り、「今行けば間に合う!」と昨日偶然見つけた映画館へ走る。4:40からThe Phantom of the Operaの上演。座席はfront middle backから選べ、frontにする。ひとり£5.5。20分ほどのCMタイム(イギリスのCMトレンドもわかってなかなか面白い)に続いてトレイラー(予告編)上映。アメリの監督と女優が再び組んだThe longtime Engagementなど。期待の本編は、オークションにかけられた「オペラ座の怪人事件のシャンデリア」があのテーマ音楽とともに吊り上げられ、場面がモノクロからカラーに変わっていく冒頭(日本で観た予告編でもこのシーンが使われていて鳥肌が立った)から鷲づかみ。設定も時代も近い数年前のFOX映画、『MOULIN ROUGE(ムーランルージュ)』を彷彿とさせるが、それ以上に音楽と美術がとにかく圧倒的。■ムーランルージュの二コール・キッドマンのほうがヒロインの華はあったけれど、「その他大勢から歌姫に抜擢される」設定のクリスティン役には、愛らしいエミー・ロッサムがふさわしいのだろう。屈折した過去と類まれな才能を持つファントム(ジェラード・バトラー)がクリスティン(エミー・ロッサム)の歌声を目覚めさせるが、ファントムの正体を知ったクリスティンは苦悩する。ファントムとクリスティンの葛藤も切ない歌になっている。自分の才能を引き出してくれた恩人を裏切れないと揺れる気持ちには共感を覚える。台詞の合間に歌うというよりは大半の台詞が歌。クリスティンを想う御曹司ラウル(パトリック・ウィルソン)とのラブソングの歌詞も素敵。僕が君を守る、君がどこに行こうと〜♪ うっとりしているいい場面で、横からダンナが「わけわかんないよ」と話しかけてくる。どう見てもラブシーンでしょうが!■2時間を超える長編だが、もっと見せて、まだまだ聞かせて、という感じで最後まで引きつけられる。地下の秘密部屋、華やかな舞台、雪の積もった霊園……妖しくも美しい絵が連なり、心を揺さぶる旋律で彩られ、すっかり魅了される。途中で迷子になっていたダンナも「すごいものを観た」と最後は喜んでいた。日本で字幕つきでもう一度観たい。映画館入口にはティム・バートン監督のCharlie and the Chocolate Factoryの告知が。こちらも楽しみ。■夕食は地元で人気のレストランという噂のWalnusにて。何を注文しても「Good」と親指を立ててくれる店員の兄ちゃんの感じがよく、おいしく食事できる。こういうお店にはチップも気持ちよく弾める。

2003年12月29日(月)  そんなのあり!? クイズの答え

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