パラダイムチェンジ

2004年03月20日(土) オリンピック予選日本ラウンド第2、3戦

そんな訳で、サッカーオリンピック最終予選B組日本ラウンド、第2戦
と第3戦である。

一言でいうなら、「勝った、めでたい」であろう。
いや、本当に勝ってよかったよ。

しかもその勝ちっぷりがいい。
自分が見に行った第1戦と、残りの第2、3戦の大きな違いは、積極的
に勝ちにいった、ということだろう。

守備的な陣容から、第2戦では1ボランチで、平山、大久保、松井、
前田、石川が中心の攻撃陣。
第3戦では、平山、大久保、田中の3トップと、結果的にこれが大当た
りした。すなわち、攻撃に厚みが生まれたんだと思う。

また、第2戦で見られた、闘莉王、那須の欠場から生まれた連携ミス、
クリアミスからの失点も、第3戦ではきっちりと修正されていたよう
な気もする。つまり1戦ごと、確実に彼らが成長したんだと思うのだ。

第2戦、第3戦では、セットプレイ絡みの得点が多かった事は、日本
ラウンドから召集した阿部が闘莉王の代わりに入った事が大きいん
だろうし、また大久保が、平山のマークにより出来た相手DFのスペー
スに積極的に飛び込み、しかもきっちりと得点した事が大きかった
んだと思う。彼らのモチベーションとコンディションは高かったんだ
と思うし。

でも、それにも増して今野、茂庭、那須といったDF陣までが、まるで
闘莉王が乗り移ったかのように積極的に攻撃参加した事も大きかった
んじゃないかな、と思うのだ。

だからこの勝利は誰か一人が頑張ったというより、ベンチで声を上げ
続けた闘莉王を含めて全員でもぎとった勝利だといえるんじゃない
のかな。

本当にグッドジョブ!!と声をかけてあげたくなるようなチームだった
と思う。

そしてもう一つ、特に第3戦に関して恵まれたのは、地の利、だろう。
全てが青色に染まった国立競技場の雰囲気だけでなく、冷たい雨が
降った事が、日本代表にとって有利に働くことはなくても、決して
不利にはならなかった。むしろ連戦の疲れと共に急激な気候の変化に
戸惑ったのは、UAEや、バーレーンの選手だったのかもしれない。

今回、第1戦のチケットを買う時に、実は第2戦、第3戦のチケットを
買うという選択肢もあっただけに、正直、惜しかったなーとは思った
が、でも第1戦で悔しい思いをした分、第2、3戦に関しては、いつも
より身を乗り出して応援することが出来た気がするので、後悔はして
いない。

むしろ、自分が競技場にいるかのような臨場感を感じながら応援する
ことができたし。
それにしても、直前まで冷たい雨が降る中、応援する観客の人たちも
相当寒かっただろうなあ、と思う。
彼らの熱い応援があったおかげで、このアテネオリンピックへの切符
により一層の花を添えたような気がする。

また見に行きたいなあ。



2004年03月15日(月) U23@埼玉スタジアム2002

そんな訳で、対バーレーン戦である。
前日の日記で触れたように、埼玉スタジアムまで応援に行ったにも
関わらず、日本代表は負けてしまった。うーん、マジで残念。

ちなみに埼玉スタジアムは、南北線→埼玉高速鉄道で駒込から約30分
強、と意外に近い感じで、帰りも相当混雑することを予想して、予め
パスネットを買っていたおかげで、そんなに待たされることなく、
比較的スムーズに乗ることが出来た。

でも、中の売店の食料品メニューが売り切れるのが意外に早かったり
したので(試合開始前)、入場前になんか買っておいた方がいいの
かも。ちなみに最寄り駅の浦和美園駅には、コンビニとかは何も
なかったっす。以上、簡易メモ。

座った席は、メインスタンドアウェイ側の結構高めのいい席でした。
でも、そのおかげで最も見たくなかったシーンを見る羽目になっちゃ
ったんだけど。

でも、スタジアム自体はとても見やすく、またドリンクホルダーが
ついていたりして、いいスタジアムでした。
また、オリンピック進出がかかったゲームだからか、それともレッズ
の選手が何人も参加したチームだからか、試合前から応援が熱かった
のも、見にきてよかったポイントだったかもしれない。


さて、実際の試合である。
前半開始早々?闘莉王がいきなりの負傷退場。
代わりに阿部が入ったあたりから、なんとなーく流れは悪かったの
かもしれない。
試合を見ている感じでは、高松に集めたボールをことごとく、バーレ
ーンに奪い取られ、日本が決定的場面を迎えることが本当に少な
かったような気がする。

でも、その一方で、バーレーンのスピードもそんなに速さは感じな
かったので、ゴール前に詰められることはあっても平気かなー、
なんて思いながら、前半終了。

後半開始時に、選手交代があるかな(個人的には高松を変えて大久保
とか)、と思ったんだけど、予想外の選手交代で、1枚カードを切っ
ていたためか、選手交代はなく、後半開始。

後半開始早々は、前田が切り込んだり、今回召集された根本が、
上がったりと、押していた雰囲気だったんだけど、得点を奪う事は
できず、というより、ゴール前まで迫ることがなかなかできず、
そうこうしてるうちにカウンターからゴール前で、那須がファウル。
イエローカードをもらってしまう。
でも素人にはわかんないけど、イエローもらうほどのファウルだった
のかな?
今回の中国人の主審も、ホームなんだからもう少し日本びいきの
ジャッジがあってもいいなと思ったのに。
なんか、日本がホームで得することって少ないような気がする。

そして、セットプレイでボールがこぼれた所から、バーレーンが
得点(…)。
その後は、もうバーレーンの露骨な時間伸ばしの作戦の前に、日本が
得点することは出来なかった。
ちなみにTVで聞こえたのかはわからなかったけれど、バーレーンに
対しては、結構みんなブーイングしまくってました。
つうか自分もしてました。指笛吹けたら、吹きまくっただろうなあ。

ちなみにバーレーン、試合終了後、ブーイングの中、観客に手ぇ振る
わ、胴上げするわ、やりたいことやりまくってました。
まあ、アウェイで勝ってうれしかったんだろうけどさ。

と、いうことで、見に行った試合で、日本が負けたおかげで帰りの
足取りは結構重かったんだけど、心行くまで応援しまくったので、
思う存分発散したって感じでした。
やっぱり実際に見に行って、自分の好きなチームを思う存分応援し
まくるのって楽しいっす。


で、今回の日本代表に関して、残念だったなあ、と思うのは、
結局枠内に飛んだシュートが本当に少なかった事かもしれない。
決定的なチャンスって言うのが本当に少なかったと思うのだ。

その理由の一つは、高松のポストプレイが機能しなかった事もある
だろう。でも、今回見てて、もったいないなあ、と思うのは、今まで
の試合では見られた、バックの選手が、味方を追い越すプレイが
殆ど見られなかったことかもしれない。

また、松井が終盤にならないと出場できなかったように、ボールを
持って溜めるプレイがなかったから、攻撃が淡白で、相手に読まれ
まくっていたんじゃないのかなあ。

右サイドが徳永だったり、闘莉王の代わりに入った阿部が、さすがに
闘莉王のようには、攻撃に参加できなかったのも、淡白さを感じさせ
る原因の一つだったのかもしれない。

今回、UAEラウンドと一番の違いは、UAEラウンドの以前のスタメンの
メンバーで組めなかった日本代表の台所事情もあるのかもしれない
けれど。

森崎が出場停止で、菊地が体調不良の為、参加できず、松井、石川が
途中出場で、平山が出場しなかったのも、まだ体調が万全でなかった
こともあるんだろうし。

そう考えると、今回闘莉王が肉離れで抜けて、しかも那須が累積警告
で出場停止になる次戦も、相当厳しい戦いになるのかもしれない。

でも、逆にいえばもう日本は後がなくなり、引き分け狙いがなくなっ
て勝ちにいかなきゃならないわけで、選手たちもその辺は充分過ぎる
ほど、わかっているんだろうし。

やっぱり、彼らはここで解散するのはあまりにもったいないと思う
ので、是非とも後の2戦を勝って、オリンピック出場を決めてほしい
と思うのだ。


関係ないけど、埼玉スタジアムについた時、ちょうど前の試合の
UAE−レバノン戦の試合終了直後で、日本代表出てないのに、やたら
と観客が盛り上がっていたので、なんでだろう、と思ってたら、
UAEとレバノンの選手、試合終了直前につかみ合いの喧嘩してたん
すね。今日ニュース見て初めて知りましたわ。



2004年03月13日(土) U23UAEラウンド第3戦

と、いう訳で今更ながら、オリンピック最終予選UAEラウンド第3戦、
対UAE戦である。

この試合を一言でいうなら、「勝ってよかったー」である。
日本代表のスタメンのコンディションが悪く、その為に動き(スピー
ド)が悪く、連携もうまくいかない状態だったのは、画面を通じても
よくわかったし、前半の中盤以降は、UAEの怒涛の攻めをなんとか、
かわすのが精一杯だったと思うし。

それにしてもUAEは本当によく、枠を外してくれたなあ、と思う。
あの日、UAEには本当にツキと言うか運がなかったのかもしれない。

後半に入って、高松や松井を入れることで、日本代表チームには、
一つの流れみたいなものができつつあったが、試合全体としては、
まるでボクシングの選手が12最終ラウンドに入って、ノーガードの
戦いをしているような感じだった。すなわち、お互いにヘトヘトに
なりながらも、立ち続けているような印象だった。

でも、そこで勝機をつかんだのは、今まで幾度となくチャンスを
つかんでたUAEではなく、日本だった。
後半40分過ぎ、田中達也−今野−松井とワンタッチでつないだボール
を田中が再びドリブルで切り込み、シュートした球をGKが弾いた
ところをつめていた高松が合わせてゴールを決めた。
この段階で、もうTV画面の前で絶叫である。

そしてその興奮の冷めやらぬ2分後、田中達也が打った強いシュートを
相手GKがミスし、2点目をあげた。いや、よかったよ、マジで。

UAEラウンドを通して、U23日本代表は最初の1点を取るのに本当に苦労
していた。そして、レバノン戦、UAE戦で得た1点目は、決して綺麗な
形ではなく、泥くさい、もみ合いの中でとった1点だった。

でもそれは、逆にいえば競り合いで負けない、という日本代表の意思
のこもったシュートが入ったと言うことでもあるわけで。

個人的にゴン中山が大好きな私としては、こういう淡白でない熱い?
プレイのできる選手と言うのが大好きだったりする。
田中達也、カッコイイじゃん。

また、この終盤にきての得点が、もしかしたら大きいかなーと思うの
は、次にUAEと当たる時である。もしも、似たようなシチュエーション
がやってきた時、UAEの選手たちは終盤に点を取られて負けた、という
嫌な記憶をひきずってくれて、またやられてしまうのでは?と思って
くれるかもしれないし。

逆に日本側は終盤まであきらめなければ、もしかしたら何とかなるか
も、という自信がついたんじゃないかな、と思うのだ。
そしてそれは、UAEラウンドでの体調の不良を引きずってしまっている
今の日本代表の強力な武器になってくれるんじゃないのかな。

だから、勝ちグセと言うか、苦しみながらも勝った、という経験は
やはり選手たちを一段階上のレベルに押し上げてくれるのかもしれない。

さあ、そんな訳で埼玉まで、日本代表を応援しに行ってきます。



2004年03月12日(金) 「ビューティフル・サンデイ」OA

という事で今回は告知。または備忘録。
以前、日記で感想を書いた「ビューティフル・サンデイ」が、NHKBS2で
3月14日深夜(15日)1:00〜4:00でOAされます。
ついでに長野里美のインタビューつきらしい。
ちなみに以前の日記はこちら

もしも、興味を持った人がいたら、見て下さいな。
わかりやすいコメディなので、個人的には結構おすすめ。
脚本は、昼ドラの名作「ぽっかぽか」の中谷まゆみ。

個人的には以前の日記でDVD化されたら買う!と豪語してしまったので
当然?録画する予定。
と、いいつつこれで録画し忘れたら洒落になんないな・・・・・・



2004年03月11日(木) ミスターという存在感

先週の木曜日、ミスターこと長嶋茂雄が脳梗塞で緊急入院した。
幸い発見が早く、その後の加療も順調で、生命の危機などには発展
しなかったようだ。

1週間経った今日、主治医による、記者会見が行なわれた。
とりあえず、急性期の危険な事態は脱し、これから地道にリハビリが
行なわれることになったようだ。

病因は心房細動による中脳大動脈の閉塞による脳梗塞。すなわち、
血管に出来た微小な血管の内壁などによる血栓が、脳にまで行き、
中大脳動脈という脳細胞を栄養する大切な血管でつまってしまった
為、血液が回らない細胞が死んでしまい、つまったことで栄養される
べき部分に障害が残ってしまったという事である。

この時期に主治医の記者会見が行なわれた背景には、マスコミの
ベッドで起き上がれた、や驚異的な回復力である、などイメージが
先行したことに対して、事実で釘をさしておきたかったって事だった
と思う。

実際の長嶋監督の病状は意外に重く、障害が残ってしまう可能性に
ついて、予め説明しておきたかったという事かもしれない。

実際に脳梗塞のリハビリを行なった経験のある立場で言えば、
長嶋監督の病状は、よくある右半身麻痺患者の病状を示している
という事かもしれない。

今回、気になるのは、それが右半身麻痺、すなわち左大脳の梗塞で
あったことである。左大脳には言語を司る部分があるので、意識が
戻った後も、構語障害といって、言葉が流暢に出なくなってしまう
事がある。だから、早期から言語療法を開始したとしても、すぐに
あのミスター語録は聞くことができないかもしれない。

記者会見では、今後も急変する可能性など、リスクについての言及が
あったけれど、血栓を出来にくくする抗凝固剤のコントロールは、
一般的によく行なわれている事であるし、いわゆる急性期の危険な
状態は脱したと考えていいんじゃないだろうか。

いや、もちろん血圧のコントロールとか、今後もリスク要因は色々
考えられるんだと思うけれど。

でも、ミスターだと体力も同年代に比べてもまだまだあるだろうから
リハビリも常人よりはめざましい回復をはかる可能性はあると思う。
女子医大としても、ミスターのように世間一般に注目される患者だ
ったら、最上級?のリハビリメニューを組むんだろうし。

逆に言えば、一つの目安ともいえる3ヵ月後に一体どのくらい、
ミスターの機能が回復しているのかを見るのが職業上、興味深かった
りする。最先端?のリハビリがどんなものであるのか、おそらく
マスコミが事細かに説明してくれるんだろうし。

一般的に考えた場合は、下肢の機能回復は問題なく歩けるようになる
が、上肢、特に手指の巧緻性に関しては、障害が残る事が多いような
気がするが、果たしてミスターの場合はどの位、回復するんだろうか。


でも、毎日定期的に病状についての会見が開かれるあたり、ミスター
という存在はやっぱり特別なんだと思うのだ。
同様に毎日会見が開かれた例なんて、天皇陛下位しか思い当たらない
し。

アテネオリンピックの日本代表監督に関しては、回復の度合いを見て
ということもあるだろうけど、正直個人的には遠慮した方がいいん
じゃないかなあ、と思う。

元々読売グループが、というよりナベツネ氏がオリンピックにプロ
選手を積極的に送り出そうとしたきっかけは、朝日新聞が2002年の
W杯の公式スポンサーになった事だと思うし。

ライバルに出し抜かれたことがよっぽど悔しかったと見えて、2000年
のシドニーオリンピックでは巨人軍選手を出すことに消極的だったの
が一転、巨人軍選手と共に最後の切り札としてミスターをアテネ代表
監督にすえつけたような気がするし。

なんとなーく、戦前の統帥権を振りかざし、自らの権勢を振りまくっ
た某国軍隊と構造的に似ていると思うのは気のせいだろうか。





2004年03月06日(土) 財前教授の嘘

人は誰でも嘘をつく。嘘をつかない人間なんていない、なんてよく
言われる。
もちろん、それは私にも当てはまる。私も嘘をつきまくる。
だけど、それはある一定の条件を満たした時に当てはまるような
気がする。

TVドラマ「白い巨塔」第18話で、財前教授が法廷で嘘をついた。
自分の執刀した患者さんが死亡した事に対する、医療過誤を争う裁判
で、それまでは財前教授のとった治療方法は常識的に考えて問題が
ない、という結論が下されようとしていた中、原告側の弁護士から
手術以外の治療法についての説明、すなわちセカンドオピニオンが
あったのか、と問い詰められ、言わなくてもよかった口から出まかせ
を、つい口にしてしまった。

本人にしてみたら罪の意識もなく、つい口がすべった位の感じだった
んだろう。でも、その場所は法廷で、そこでの証言は絶対である。
勝つはずの裁判で、一転財前教授は不利な立場に立たされてしまった。
というのが前回までのあらすじである、これからどうなるんだろう。
わくわくどきどき。


個人的に、法廷ドラマや映画は大好きである。特に好きなのが、トム
クルーズ、ジャックニコルソン主演の「アフューグッドメン」
映画の終盤、軍事法廷で追い込まれたトムクルーズ演じる弁護士の
とった方策とは?という感じで息詰まるシーンがとてもよい。

今回のシーンが、果たしてあの映画を意識したのかどうかはわからな
いが(上川隆也演じる弁護士は、トムクルーズを彷彿とさせた)、
非常に演出もうまかったと思う。


さて、冒頭に戻る。
何故、財前教授はあの場で、あんな嘘をつく羽目になったんだろうか。
そのまま説明しなかったことを認めたとしても、もしかしたらまだ
裁判は有利だったのかもしれないのに。

他人事ながら、その理由について考えてみる。
それは上川隆也に追いつめられて、自分の語る世界が破綻しそうに
なったからではないだろうか。

すなわち人が嘘をつく理由の一つには、自分の存在が脅かされた時の
自己防衛本能である、といえるかもしれない。

人は人をだますことは出来ても、自分を否定することは、なかなか
できない。また、その人に地位や名誉など、本人にとってはかけがい
のない、守りたいものが沢山ある場合、それが脅かされそうになった
場合に、それを必死に守ろうとする時は、嘘をつくことに対する罪の
意識は、どんどん薄くなってしまう。

だって、嘘をつくことによってかかるコストなんてたかが知れている
訳だし、嘘をつく位で自分の地位や名誉が守られるんだったら、平気
で嘘をつくだろう。

だかど、その嘘をついた人は、肝腎な事を忘れていると思う。
嘘をつくと言うことは、今度は嘘がばれた時のリスクを負わなければ
ならないのである。

社会的に嘘をつくことはよくない、とされている。それは嘘をつく
ことがいかに易しい事である一方、その嘘で不利益をこうむる側に
とってみれば、その被害が莫大なものになる可能性がある、という
事を皆が知っているからだと思う。

だから他愛のない嘘は許される。せいぜいあいつは嘘つきだと言われ
る程度である。
でも、嘘をつく事が他人に迷惑を及ぼしたり、また嘘をついた人間が
それによって多大な利益を得た場合には、その人間は社会的に制裁
されてしまう。

某ペパーダイン大学に在籍したが卒業できなかった某代議士である
とか、鳥インフルエンザの感染報告を隠蔽した養鶏業者に非難が集中
した理由はそういうことだろう。
養鶏業者にいたっては、自殺をしてしまった。果たして自らの命を
絶たねばならないほどの罪であったのかどうかは置いといて、それ
だけ、一時の迷いでついた嘘の代償は大きかったという事だろう。


だから、なるべく嘘をつかないに越した事はないのだが、その為には
一体どうすればいいんだろう?
一つは、自分の存在自体が揺らぐような、そんな事態がやってくる
のを未然に防ぐと言う事だろう。

例えば、今回の「白い巨塔」の財前教授の場合でいえば、江口洋介
演じる里見助教授が語っていたように、それが多少煩わしいもので
あったとしても、事前に患者および患者の家族に手術の術式のみなら
ず、手術以外の可能性について説明すべきだったという事である。

その時に患者が選んだ結果、思ったほど延命効果が得られず、落命し
てしまったとしても、患者側としては少なくとも納得できる根拠は
あったといえるんじゃないだろうか。

逆に言えば今回の財前教授はあの時説明を怠ったことのツケを払わさ
れたといえるのかも。


そして、もう一つ、嘘をつかなくなるための方策とは、相手の立場に
たって考えるということかもしれない。

患者にとってみれば、自分が突然ガンになる、ということは相当、
理不尽な事である。その時に何の説明もなく、突然に死んでしまった
場合は、その理不尽さの理由を、医師や病院側にぶつけるしか、
納得のしようがなくなってしまうのかもしれない。

だから嘘をつくつかないに限らず、相手側の立場に立って考えれば、
どうすればいいのかという方策は決定すると思うのだ。

またもしも、嘘をつくとしても、自分がそういう嘘をつかれた時の
事を想像できる人間であるならば、そこで嘘をつく以外の面倒くさい
かもしれない代替案を選択する余裕がでてくるんじゃないだろうか。

もしもあの時、財前教授の脳の片隅に直接の被害をこうむる柳原医局
員の顔が浮かんでいたら、展開は違っていたかもしれない・
ま、ただしこっちの方がドラマとしては確実に面白くなった訳だが。

冒頭に戻れば、そんな理由で私は嘘をついてきたし、これからも嘘を
つき続けるかもしれない。
でもできれば、嘘をつかなくて済む人間関係の中で生きていたいと
思うのである。
だってその方が気が楽だもん。



2004年03月05日(金) 平山相太

つくづく、日本人は初物が好きなんだなあ、と思う。
何の話かといえば、平山相太の事である。

全国高校サッカー選手権の得点王(になったんだっけ?@爆)で、
本来はユース組であったのが、U23に飛び級で抜擢され、その緒戦の
イラン戦で、いきなり結果を出してしまう。そりゃ、マスコミは
こぞって平山という素材に飛びつくだろう。結果、彼には「怪物」
の異名がついた。

確かに、彼は怪物のごとき才能の持ち主に違いない。ただのウドの
大木ではなく、190cmという身長でポストプレイをこなすだけではなく
ペナルティエリアでのポジショニング、トラップした時の柔らかさ
など、彼に関しては手放しと言ってもいいほどの賛辞の声が集まって
いる。素人目に見たって、今までのU23チームの得点シーンの多くに
彼が絡んでいることを考えれば、彼が18歳としては並外れた才能を
持っているんだろうなあ、と思うし。

ただ、彼はまだ高校を出たばかりの18歳の少年である。
同じく、飛び級でU23代表入りし、アトランタオリンピックの予選ラウ
ンド以降、徐々に頭角を現してきた中田英寿も、この時期にはまだ
そんなに期待されていなかったことを考えれば、今の段階で過度の
期待をかけてしまうよりは、今後彼がどういった形で成長をとげて
いくのか、といった方が興味が湧いてくる気がする。


その意味では、オリンピック最終予選第2戦、対レバノン戦で、平山の
放ったゴールがことごとくゴールに嫌われ、その一方で他のU23の選手
たち、田中達也、鈴木、高松、石川が決めたのはよかったんじゃない
かな、と思うのだ。
これで平山だけが脚光を浴びることなく、他の選手たちにも注目が
集まるようになったんじゃないだろうか。

私が、サッカーを見るようになった直接のきっかけとなった一冊の本
がある。金子達仁著、「28年目のハーフタイム」。アトランタオリンピック
U23代表を追ったノンフィクションである。

この中に確か、マスコミがあまりに前園や城などのFW陣を取り上げる
ものだから、それに振り回される形でDF陣と攻撃陣の間に亀裂が生ま
れ、結果チームは内部崩壊しかけた、という話があったのを思い出した。
まあ、今のU23代表たちは、そこまでマスコミに振り回されたりは
しないと思うけれど。

でも、今まで何試合か見てきて、このチームは個々人を見ても、本当
に実力の伯仲したいい緊張感のあるチームだなあと思うから、できれ
ば、選手の一人一人にスポットライトが当たって欲しいなあ、と思う
のだ。

普段は下がり気味の位置にいながら(それだけ動きのあるという事か
もしれないが)決める時はズバンと決める高松とか、格好いいなあ
と思うし。田中達也にしても、FWがゴールを決めるチームってやっぱ
りいいなあ、と思うし。

また、これで平山ももっと伸び伸びとプレイできるようになって、
結果ゴールシーンも増えてくるんじゃないだろうか。


話を平山相太に戻す。
マスコミの「平山マンセー」記事に限らず、やはり彼の存在は、スポ
ーツライターたちの好奇心を刺激するようだ。

最近、家でとっている東京新聞には、毎週火曜日、元新体操の山崎
浩子が、コラムを書いている。
毎回、その着眼点が結構面白いのだが、これは2月24日の記事。


そしてなんといっても素晴らしいのは、彼の"ボーっとした顔"であ
る。頬の筋肉がだらりと下がり、口はたいてい開いている。下唇の
あたりの筋肉がゆるんでいるために、口がぽかーんと開いている
状態である。もともと、それほど覇気を感じさせる顔ではないのだ
ろうが、試合になってもこれほど顔は変わらないのは珍しいことで
ある。

普通は、「さあ、やるぞ」と意気込んだり、緊張したりすると、通常
より目が開いてしまう。そうすると頬の筋肉が上がり勇ましい"闘う
顔"になるのである。しかし、その度が過ぎると、頬の筋肉が上がると
同時に首の筋肉や肩の筋肉まで固まることがある。いわゆる「肩に
力が入る」状態である。

こうなると重心が肩や胸の辺りになってしまい、また筋肉が固まって
いるのだから、思い通りの動きができずにバランスも崩しがちになる。

重心はおへその辺りにあり、上半身はリラックスさせるのがベスト。
そうすれば安定した動きと、俊敏な動きの両方を兼ね備えることが
できる。平山も、重心は下半身にしっかりと置き、上半身を軽やかに
使っていた。つまり平山のように、必要以上に目を開かないことは
大事。また歯を食いしばらないことも重要というわけである。

今年の大阪国際女子マラソンを制した坂本直子も、きつい場面では
口をすぼめて軽く息を吐くことで、歯を食いしばらずにすんでいた。
二番手、三番手の選手は必死で追いつこうとするがあまりに歯を食い
しばってしまい、かえって筋肉を硬直させていた。(略)

平山の"ボーっとした顔"はリラックスしている証し。そういう顔を
できるのは、精神的な強さもあるからこそである。(以下略)



また、ナンバー596号「アテネ五輪サッカー アジア最終予選プレビュ
ー」
には、「平山相太は中田英寿の再来である」という記事が載って
おり、今までに彼を指導した指導者たちのコメントが興味深い。

以下、抜粋してみると
「平山相太はね、本当にゆっくり丁寧にドリブルをするんですよ。
こっちからすれば、もう少しスピードをつければいいじゃないか、と
思う。でも、速くやろうとすればできるんでしょうけど、ゆっくり
やるんです。私は20年、このチームを指導していますが、あんな子は
初めてです。子供は少しできるようになると、急ぎ過ぎて、ミスが
多くなる。相太はまったくそんなところがなかった。丁寧さ、確実さ
が成長する最大のコツだということを、あの子を見て感じましたね」


小学生時代の恩師である永井が中学3年の平山とばったり会ったとき、
意外な言葉が返ってくる。
「僕は個人的には今ひとつだと思います。だから、鍛えてくれる国見
に行こうと思うんです。戦術的なことはプロに行っても教えてもらえ
るから」

それを聞いた永井は、驚愕したのと同時に心から感心したという。
「この子はしっかりと考えて選んだんですから。この子に任せていれ
ば、大丈夫だと思いました」

国見高1年から注目し、獲得に動いたFC東京の霜田正浩強化部長代理は
言う。
「彼と話しているとすごく頭がいい子だな、と思う。考える力がある。
どんな場面でも試合中に焦っているところをみたことがないでしょ
う。それは彼が常に考えているから。ヒデのようにね」


平山に接する指導者は、その底知れない可能性に魅了されていく。

最初に、飛び級を後押しした大熊は、彼のすごさをこんな風に表現
している。
「あいつは自分を、過大評価も過小評価もしない。自分の高さは絶対
通用するんだと過信もしないし、通用しないのではという不安も抱か
ない。だから、自分の力をそのまま大舞台で発揮できる。ああいうメ
ンタリティーは今後ももち続けて欲しいですね」



以上、彼を指導してきた人々の意見をつなぎ合わせてみた。
そこから感じるものは、やはり「非凡」の一言であるといえるのかも
しれない。

同じような匂いは中田英寿だけでなく、やはり「怪物」の松阪大輔
にも通じるような気がするのだ。

ただ、まあ松坂は4年連続最多勝投手、という栄誉を手にしているが、
それでも多くの「怪物呼ばわり」されてきた早熟の才能を持った人々
は、周囲の過度の期待には応えられずに来た事が多かったように思う。
「怪物」江川卓しかり、今にいたるも無冠の清原しかり。

だから、今この時期に過度の期待をかけてしまうよりは、やはり今後
彼がどんな風に成長してくれるのか、を期待した方がより楽しめる
ような気がするのだ。


彼は今春、あまたのJリーグチームのオファーを断り、筑波大学へと
進学するらしい。その進路に関しては、賛否両論があるようだが、
「頭のいい」彼のこと。そこには今まで同様、彼なりの計算がある
のかもしれない。

でも、少なくともJリーグチームで、いきなりプロとしてもてはやされ
、客寄せパンダの如く扱われてしまうよりは、まだこの時期はじっくり
と自分のフィジカルを鍛える方がいいのかもしれない。

だって、彼は2008年の北京大会でも、まだ23歳なのだから。


おまけ
ナンバー594号平山相太「国見育ちの真髄」



2004年03月02日(火) オリンピック最終予選第1戦

そんなわけで、1回アップロードしたはずの日記がサイシンに登録され
ておらず、どうしたんだろうと思ってもう1回書き直したら、実は
2004年ではなく 2003年3月2日にアップしていたことに
気がついた(苦笑)。

しかも書き直す前の方が出来がいいような気が。
まあ、せっかく書いたのでこっちは書き直しバージョンという事で。


当たり前の話だが、お互いに点を取りたいチームと、点を取らせたく
ないチームがぶつかりあう。それが真剣勝負である。
何の話かといえば、サッカーの話である。

日曜日の夜にチャンピオンズリーグのレアルマドリード−バイエルン
ミュンヘン戦と、月曜の夜にオリンピック最終予選の日本代表−バー
レーン戦を見たわけである。

まあ、スカパーにも加入せず、地上波で偶々やったチャンピオンズ
リーグの試合を有難がって見ているあたりで、サッカーファンとして
は「終わっている」のかもしれないが。
その程度の素人ファンの話だと思ってもらえればいいんだけれど。

でも、そのたまたま見たチャンピオンズリーグの試合は、いい展開
だった事もあって、やっぱり面白かった。今後も地上波でやんないか
なあ、フジテレビ。


と、いう事で冒頭の話に戻る。
日本代表のU23チームは個人的には、チームの連携もあるし、戦術も
しっかりとあり、なおかつ個々の個性が引き立っている気がするので
結構好きなチームである。
このメンバーだったら、なんかしでかしてくれそうな、大化けしそう
な感じがするし。

対バーレーン戦で残念だったのは、パスミスも多かったけれど、
決定的なチャンスを活かすことができなかった、というそれだけ
だろう。

逆に言えば、GKを含めて、がっちりと引いて守備を固めていたバー
レーンの守備力を誉めるべきなのかもしれない。
素人目にはやるな、あのGK、とか思っちゃったし。

親善試合の対イラン戦では、相手も積極的に攻めてきてくれたから、
日本も得点を許したにせよ、相手のゴールをこじ開けることができた
のかもしれないが、ああもガッチリ固められちゃうと、綺麗な形での
攻撃ができても、やっぱりなかなか得点は挙げられないのかもしれ
ない。

でももう一つ、日本の攻撃が不発だったのは、日本の戦術を、相手
チームに研究されていた、っていうのもあるのかも。

これはサッカーの話ではなく、確かラグビーの平尾ジャパンか、その
前の話だったと思うけれど、フィジカルで劣る日本が奇策というか、
戦術で戦うと、1回は成功するけれど、2回目には相手が対応してくる
ので、使えなくなる。だからもしも日本が、その方法でW杯の予選を
突破をする為には、それだけの数の戦術を用意して、しかもぶっつけ
本番で試さなければならないが、そんな事は不可能でっせ、なんて
話を平尾誠二がしていたのを思い出した。

同じようなことは、最近、選手たちの自主性だけに任せるのではなく
きちんとした戦術を立てろ、などと批判されているジーコジャパンの
話とも関連すると思うが、それはまた別の話。

今回のオリンピック最終予選に関しては、もう今ある戦力と戦術で
戦わなければならない訳だから、初戦での反省点を素早く修正して
第2戦以降に臨んでくれる事を祈るのみである。


日曜日のレアル−バイエルン戦も実は似たような試合展開だった。
膠着状態のまま前半が過ぎ、もしかしたらこのままスコアレスドロー
なのかなあ、と思った先にバイエルンが先制。その後当然のごとく
守備を固めていたバイエルンのゴールをこじ開けたのは、ロベルト・
カルロスのたった1本のFKだった。

バイエルンのGK、カーンが押さえながらも勢いあまってゴールライン
を割った、ロベルト・カルロスの地を這うシュートが入り、平山相太
の打点の高いヘディングシュートや、松井のシュートがGKに跳ね返さ
れた背景には、もしかすると個人の技術力もさることながら、その
気迫の違いなんていうのもあったのかなあ、などと思ったのである。

レアルマドリードもこの第1戦を落とした後、ホームでもう1戦あると
はいっても、ここで負けた場合はやはり苦しかった筈だと思うのだ。
だって、相手のGKはカーンだし、バイエルンミュンヘンに負けてしま
えば、ベスト16で予選敗退という可能性が濃くなっていたんだから。

でも、結果たった1本のゴールが、その立場を逆転させ、一転バイエル
ンの方が苦しい展開になってしまった。
そういうことが起こるから、サッカーはやっぱり面白いんだと思う。

そんな訳で、日本ラウンドでまた再びバーレーンと戦うときには、
ホームの応援団の一人として、バーレーンの固かった守備陣をびびら
せて、幸運の女神を味方につけるような応援をしてきたい、と思うの
である。
それまでちゃんと勝ち続けていてくれー、日本代表。


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harry [MAIL] [HOMEPAGE]

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