f_の日記
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 彼方

ものいわず
流れゆく空
白雲の

時に時雨れて
誘う春雷

2005年03月28日(月)



 

飲みほして

消ゆることなき
春の夜の

桜うかべた
月の杯

2005年03月22日(火)



 或る夜

眼を閉じて

敬虔な心で
祈りを捧げる

救いを求めるでもなく
ただ祈りを捧げる存在であるために

ひきかえに
徳人であろうとは思わない

聖人でも君子でもない

祈りを捧げる存在であるために

敬虔に
つまびらかな自身に向き合う

どれほどそれが

偽物に見えても

2005年03月14日(月)



 Eloi,Eloi,lama,sabachthani

ペテロよ
あなたに言っておく
今日鶏が鳴くまでに

あなたは三度
わたしを知らないと言うだろう


彼は
孤独だっただろうか

人々への愛と
主への信仰と

いつかわかりあえるとでも
思っていたんだろうか

いや
知ってたんだろう

ただほんの
ほんのひとかけらくらいは

希望をもっていたのかな


Eloi,Eloi,lama,sabachthani?

主よ、主よ、

どうしてわたしを
お見捨てになったのですか?


そんな最期の言葉に
なんとなくそう思った

2005年03月12日(土)



 四月の風

戦う準備を
調える

ナイフで
鉛筆を削るように

少しずつ
地味に

時折ふっと
息を吹きかけて

目を細めて
尖端を窺う

誰かに勝つためではなく
ただ運命に報いるために

静かに

黙々と

誰もいないところで

2005年03月11日(金)



 

二ヶ月間禁煙をして
その煙草代を

どこぞへ寄附してきた

プラスかマイナスか判らない出費

何処かで何かをチャラにしないと
やってられないのかもしれない

記念品を傍らに
そんなことを思う

2005年03月10日(木)



 

特別だから
孤独で

普通だから
傷つく

平然と忘れゆく
そんな時を

憾むよ

2005年03月09日(水)



 けれど

街灯を滑り抜けるように
さらさらと雪が舞う

熱いお茶を啜りながら
窓からそれを眺める

傍観者のような自分

何もかもから断絶されて
こんな風にお茶を啜るような

そんなところで終わりを迎えたい

絶望の淵で
悲しみの深淵で

なにもかも
あきらめてしまうような

そんなところではなくて

きっとそれが本当に望むことで
きっとそこが地図に印された場所で

2005年03月04日(金)



 

コートにくるまって
俯きながら

信仰を失った神父のように
灰色の街を横切る

真実など
誰の救いになろう

奇蹟など
誰に訪れるというのか

軋みながら
胸から滴る悲鳴に

足を取られながらも
何とか生き延びてきた

愛にも見捨てられた
そんな絶望の淵で

2005年03月01日(火)
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