f_の日記
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 徒歩

ポケットに残っていた煙草を
無意識にくわえて

火をつける前に
ぷっと吐いて捨てる

僕は

卑怯者にならなかったろうか
卑怯者でなかったろうか

十六夜の月
首を傾げるオリオン

孤高に輝く彼らと
夜道を歩きながら耽る

2004年12月27日(月)



 

また時代が
まわりはじめて

僕たちを
押し流して行くだろう

逆らえない波に何時しか
違う場所と時間を与えられて

それでも僕は
夜空と街の灯に

消えることない
微かな温もりを

忘れることは
ないのだけれど

2004年12月26日(日)



 ブレス

どんなカタチでもいい

幸せになって欲しい

切実な想いに

まもられてる

そんなあなたたちに

2004年12月21日(火)



 

もう面倒臭くなって
人に関わるのも煩わしくなって

でも

導いてくれた
その人のことを想い出すと

自分がちっぽけに思えて


喩えようのない
孤独と齟齬と憂鬱と

そんなスレ違いの中

報われないような
たたかいを

何の道標もないまま
それでも

続けていかなきゃ


自分に言い聞かす

2004年12月20日(月)



 かさぶた

人を励ますほど
立派でもないのに

棚に上げて
何故だろう

人の痛みに向き合って
隣人であろうと

所詮
出来もしないことに
心砕く

節操の無さよ

2004年12月16日(木)



 パイプの煙で流星が霞む夜

毎日会おうが
何年ぶりに会おうが

二度と会わなくても


会えなくても


友情は色褪せないものさ

信じることさへ
できれば

2004年12月14日(火)



 冬の星座

いつの間にか
吐いた息が白く伸びる季節で

空に大きな
三角形

凛と輝く冬の星座
飽くことなく眺める

あの空の向こうの
もっと向こうの

何億光年という単位を
遺してくれた科学者に
感謝する

それがどれほど
人の心を広く開いたか

宇宙の塵と
覚らせたか

僕は人が思うより

ロマンチストではなく
リアリストなんだ

見上げながら想う

2004年12月13日(月)



 望郷

自らの
打った手駒に
囲まれて

儚くゆがむ
荒城の月

2004年12月12日(日)



 ある物語

昔々

お釈迦様が
印度の或る村に立ち寄った時のこと

ひとりの女が
涙ながらに近付いて

お釈迦様なら

死んだ私の赤ん坊を生き返らせる
仙薬の作り方をご存じでしょう

どうか私に教えて下さい



気も狂わんばかりに嘆願したという


お釈迦様は静かに

では薬を作ってあげよう

先ず村の中で
一度も赤ん坊が死んだことのない家の
瓶の水を取ってきなさい

と言った

女は一日中村を回り
瓶の水を探し求めたが
赤ん坊が死んだことのない家は
ひとつも見つからなかった

何件も何件も家を回り

いつしか女は
自分と同じように
苦しみながら生きている

そんな人々がいることに気付いた

悲しみが
消えることはないのだけれど

女は

2004年12月09日(木)



 remember

たとえば

くじけそうになることも
ひがんでしまうことも

人に支えを
望むことも
あって

けれど
自分の業に立ち向かうのは

自分でしか
独りでしかないのかな

忘れてしまいそうになるから
ここに

記しておくよ

リベンジでも
贖罪でもない

今を

2004年12月08日(水)



 案山子

君の痛みが止まるなら
この身を捧げよう

君の痛みが止まるなら
幾つでも恥をかこう

君の痛みが止まるなら
それだけの存在で

痛みが止まるまで
ただ痛みが止まる時まで

2004年12月07日(火)



 

またひとつ
世界が終わる

またひとつ
物語が終わる

地球が回る毎に

心が

閉ざされて
ゆく度に

2004年12月06日(月)



 こんな話

まあ或る会社の
かなり上の方の人で

その人はやさしくて
いつもにこにこしていて
何でも赦してくれた

きっと何不自由ない
幸せな暮らしを
続けてきたんだろうと

僕は最初
そんな風に思っていたんだけれど


一度だけ
激怒されたことがあって

それは仕事について
ちょっと生意気な口をきいた時だったっけ


後で聞いた話じゃ
その人は若い頃
鬼、と言われていて

仕事にとても厳しい人だったらしい

休日も返上
家族を顧みることなく


でもそんな或る日

息子さんを亡くされてな

と古い人がぽつり
と教えてくれた

その日から抜け殻のようになって
誰かを怒ったりすることは
なくなったんだよ



この間
駅のホームで
その人を見かけた

少し老け込んだように見えたけど

奥さんと二人
佇んでいる姿は
幸せそうで

でも

あのどんなに笑っていても
悲しそうだった眼差しは

今でも変わらなくて



人生には
色々なことがある

それがすべて必要なことだなんて
ほんとうは僕には言えないんだけど

悲しみだとか
幸せだとか

そんなこともほんとうは
口に出すのも憚られるんだけど

けれど

2004年12月03日(金)



 光あるうちに、光の中を歩め

たとえ高望みでも

たくさん苦しみながら
息をしている

君はかっこいいよ

どんなに着飾った
雑誌のモデルより

2004年12月02日(木)
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