2009年11月06日(金)  クリスマス映画だった『曲がれ!スプーン』

本広克行監督最新作『曲がれ!スプーン』を試写で観る。函館イルミナシオン映画祭で監督と知り合ったときにひっさげてきていた『サマータイムマシーン・ブルース』(>>>日記)と同じく劇団ヨーロッパ企画の戯曲の映画化ということで、観る前から期待は膨らむ。

原題は『冬のユリゲラー』で、エスパーのお話。クリスマスイブに超能力者を探して放浪する超常現象番組スタッフ・米(よね)を演じるのが、長澤まさみさん。ほぼ紅一点と言ってよいキャスティングで、他は舞台系を中心にかなり渋い男性キャストに占められている。エスパーの皆さんそれぞれいい味を出していて、とくに透視の中川晴樹さんから目が離せなかった。テレパシーの辻修さんも雰囲気がある。舞台の人というのは、やっぱり独特で、まわりの空気まで演技しているように見える。寺島進、松重豊、ユースケ・サンタマリアといった名のある役者さんを脇役に持ってくるというぜいたくさも遊んでいて、役者さんたちも楽しんで参加している感じ。

「カフェ・ド・念力」という名のカフェに集まる、世を忍ぶエスパーたちの超能力の使い道のしょぼさが、小市民らしくて、なんともお茶目。そこに現れた米(この「よね」という狙ったような名前にも意味が!)は、彼らにとっては天敵! 果たして米はネタを持ち帰れるのか? エスパーたちはわが身を守れるのか? という一見シンプルな筋立てながら、終始ドキドキし続けてしまう。エスパーの話なのに、彼らの困っちゃったぶりに共感して、観てしまう。

そして、小さな事件を積み重ねた先に、ああ、これをやりたかったのか、という大きな奇跡を見せてくれる。映画作りではよく「ひとつだけ大きな嘘をつくために、あとの部分をいかに真実に見せるか」ということが話されるけれど、超能力とか超常現象ってあるかもしれないけどないかもしれないと思ってるところに、どかんと大嘘。「曲がれ!スプーン」を信じていた頃の気持ちを持ち続けていたいなと思わせてくれるラストに、予想した以上にじいんとなった。

奇跡が起こりそうな夜だからクリスマスイブにしたのかなと思っていたけど、観終わると、これは絶対クリスマスイブじゃなきゃと思える。

子どもの頃、サンタクロースを信じて、待っていた人には、ど真ん中。
UFOを見つけては大人の手を引っ張って大騒ぎしていた人も。
学研の「ムー」を毎月読んで、本気で驚いていた人も。
テレビのユリゲラー特集を観て、真似していた人も。
ESPカードで透視に挑戦したことがある人も。
マジックや大道芸を見るのが好きな人も。
舞台を観るのが好きな人も。
ムロツヨシファンも。

全部あてはまるわたしには、思いがけないクリスマスプレゼントのような作品。11月21日よりロードショー。サイトも、まあかわいい。

UFOの存在は、子どもの頃、かなり本気で信じていて、幼なじみのヨシカとしょっちゅう空を見上げては「確認」し、「今日は何台見た」と親に報告していた。小学校3年ぐらいの頃だったか、ある子ども雑誌で「UFO目撃情報の99%は誤報」という記事を見つけて、相当ショックを受けた覚えがある。

というわけで、今夜の子守話は、UFOのお話。

子守話97「まほうつかいたまちゃん そらとぶえんばんのまき

まほうつかいの たまちゃんの きんじょの こうえんに
うちゅうから そらとぶえんばんが とんできました。

「まほうを つかって こっそり しのびこんでみようじゃないか」と
たまちゃんに まほうを おしえている まじょが いいました。
「まじょの ほうきでは うちゅうまで とべないからね」

たまちゃんと まじょは とうめいになる まほうを つかって
そらとぶえんばんに しのびこみました。

ところが なかに はいったとたん
たまちゃんも まじょも まほうが とけて すがたを あらわしてしまいました。
どうやら そらとぶえんばんの なかは まほうが きかないようです。

たまちゃんと まじょに きづいた うちゅうじんたちは おおよろこび。
ちきゅうに やってきたのは ちきゅうじんを つかまえるためだったのです。
めずらしい ちきゅうじんを うちゅうサーカスの にんきものに するつもりなのです。

たまちゃんと まじょを のせて そらとぶえんばんは
うちゅうへ とびたちました。
たまちゃんと まじょは うちゅうじんに「たすけて」と うったえましたが
ちきゅうの ことばは つうじません。

「まほうが つかえないんじゃ おてあげだ」と まじょ。
まどの そとに みえる ちきゅうが どんどん ちいさくなります。
もう にどと おうちには かえれないのでしょうか。
たまちゃんは パパと ママの かおを おもいだして かなしくなりました。

うわああああああん!
そらとぶえんばんが われそうな おおごえで たまちゃんが なきだすと
なみだが ふんすいみたいに いきおいよく とびちりました。
すると うちゅうじんたちは にげまわるではありませんか。
なんと うちゅうには みずが ないので
うちゅうじんは みずが だいの にがてだったのです。
「いいぞ。そのちょうしだ。もっと おなき!」と
まじょが ばんざいして いいました。

たまちゃんは かなしいことを たくさん おもいだしました。
だいすきな クッキーを ママに たべられてしまったこと。
あめが ふって おさんぽに いけなかったこと。
かくれんぼで かくれたのに みつけてもらえなかったこと。
おたんじょうびを おいわいしてもらったのは うれしい おもいで でした。
でも こんどの おたんじょうびには ちきゅうに いないかもしれません。
そう おもうと なみだが あとから あとから でてきました。

うちゅうじんたちは たまちゃんの なみだが とんでこない
そらとぶえんばんの かたすみに あつまって そうだんを はじめました。

ちきゅうから とおざかっていく そらとぶえんばんを 
みあげていた ひとたちは びっくりしました。
とつぜん そらとぶえんばんが まわれみぎして ちきゅうに もどってきたのです。
うちゅうじんたちは こまった みずを まきちらす ちきゅうじんを
ちきゅうに かえすことに したのでした。

こうして たまちゃんと まじょは まほうを つかわずに
ぶじ ちきゅうに もどってくることが できました。 
「こどもが びいびい なくのも たまには やくにたつもんだね」
いじっぱりな まじょは すなおに おれいを いいませんが
おやつを にばいに ふやす とっておきの まほうを
たまちゃんに おしえてくれました。

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