2006年03月25日(土)  丸善おはなし会→就職課取材→シナリオ講座修了式

「『子ぎつねヘレン』映画記念 映画絵本版『子ぎつねヘレンの10のおくりもの』 著者 いまいまさこさん えほんおはなし会」という長いタイトルのイベントに出演するため、丸善丸の内店へ。はじめて足を踏み入れた丸の内オアゾの5階The Orchid(ジ・オーキッド)で打ち合わせを兼ねて文芸社さんとお昼。絵本は映画公開後ぐんぐん売り上げを伸ばしているとか……という気分のいい会話をしながら、おいしくいただく。東京駅の線路を見下ろせるトレインビューの個室も、なかなか素敵。

今日は先日取材してくれた学生新聞キャンパス・スコープの記者さんのインターン先である株式会社 就職課の取材が入っていて、就職課で発行している学生新聞と、就職課とゲオ@チャンネルのコラボでの映像配信コンテンツ用のインタビューを受けることに。七人の学生さんと合流し、控え室で取材の打ち合わせ……のつもりがいつの間にかいつもの調子でしゃべりだしてしまい、学生記者さんたちは熱心にペンを走らせる。

予定時間の2時を少し過ぎ、「いまいまさこさんの登場です」と呼ばれて児童書コーナーに姿を現すと、おはなし会用に敷いたカーペットには、かわいい子どもたちとそのお父さんお母さんたちの姿が。パパママを後ろに控えさせて、かぶりつきスペースを陣取った子どもたちは早くも目がキラキラ。「みなさん、映画『子ぎつねヘレン』知ってますか?」と聞くと、「知ってるー!」「知らなーい!」と元気な返事。こんな感じでやっていけばいいんだ、とつかめて、アドリブを入れながら読んでいくことに。絵本を引き伸ばしたものを、文芸社広報担当の朽木嬢が話の進行に合わせて紙芝居風に見せていく。焼きたてのパンが登場するシーンで、「ヘレンパンはどれかな」と投げかけると、一斉にいくつもの小さな指が絵を指し示した。クマのぬいぐるみがボロボロに引き裂かれるシーンで「どうしてこんな風になっちゃったのかな」と問いかけると、「ヘレンの頭の中には悪魔が住んでいて、そいつが暴れて苦しかったから!」と利発な女の子。昨日観たばかりの映画の内容を見事に記憶。春から小学生という彼女は、質問コーナーで「謎の森の老婆」の正体について聞いてくれた。

質問コーナーでは「ヘレン・ケラーから子ぎつねをヘレンと名づけたとありますが、映画の中でその説明はありますか」という質問も。「ヘレン・ケラーを知ってますか?」と問いかけると、子どもたちの手が誇らしげに挙がる。おはなし会に来るような子は本をたくさん読んでいて、物知りなのかも。映画を観てくれたという丸善の担当者の女性は「原作を映画化するにあたり、何に気をつけましたか」と質問。「死んでしまって悲しい話より、出会えてうれしい話にしたかった。短いけれど精一杯生きた命がのこしてくれたおくりものを受け止めてもらえるように」と答えた。

サイン会は閑古鳥の心配をよそに、ペンがかすれるほどサインさせてもらう。はじめて会う人たちが「映画観ました」「これから観ます」と言って買い求めてくださり、感激。昭和ひと桁世代の余語先生とT氏をはじめ、知人、友人も駆けつけてくれ、懐かしい人との再会も。10年前に同じ忘年会に出ていたわたしを覚えていてくれた大学の後輩嬢。5年ぶりに会う他大学の応援団チア仲間は会社の後輩と、高校の同級生は二人のお子様と、留学時代の同期はヨチヨチ歩きの男の子とダンナさんと。

ご近所仲間のK家の0歳児まゆたんからは花束贈呈のサプライズ。丸善さんからも春色の花束をいただく。さらに、ハヤシライスとカレーライスの詰め合わせ『新厨房楽』も。ハヤシライスの生みの親は、日本初の株式会社・丸善創業者の早矢仕有的氏なのだそう。副店長さんからは店作りのコンセプトの興味深いお話もうかがえ、今度は客としてゆっくり訪ねてみたいと思った。そのときは書店の一角にあるエムシー・カフェでハヤシライスを食べよう。

場所を銀座の就職課オフィスに移し、ゲオ@チャンネル用のインタビューを収録。学生記者さんたちの質問に雑談のノリで答えながら「子ぎつねヘレン脚本に込めた思い」「脚本の書き方」などについて一時間半ほど話す。脚本の書き方については「書くルールは月刊ドラマや月刊シナリオを読めば覚えられるけど、大事なのは発想法と世界観」といった話をする。ただ原稿用紙を埋めるんじゃなくて、ト書きの1行、セリフの1行で世界観や人物像が見えるように書くことが大事。たとえば、主人公がお茶を飲む仕草ひとつ、クッキーの食べ方ひとつ取っても、性格を表すことができる……と実演しながら説明。

何を書くか、どうやったらシナリオが面白くなるか、は頭の中をひっかきまわして一人ブレスト。たとえば……と、「雑誌発想法」を使って、雑誌のページをめくりながら、出たとこ勝負で「この三人が強盗だったら」などとストーリーを作っていくのを実演すると、「へーえ」と面白がってくれる。「頭をやわらかくしておくことは、脚本家だけじゃなくて、どんな職業にも役立ちますよ」と話す。脚本家になってわかったのは、「人生、どんなことも無駄じゃない」ということ。出会いや体験を宝の山にするか宝の持ちぐされにするか、毎日を楽しくするかつまらなくするか、それは自分の気の持ちよう。第一志望の会社に就職できない人も多いだろうけれど、その仕事からも学べることはあるはずだし、与えられた環境が人生を決めると思うと窮屈だけど、今ある環境で何ができるかと考えれば、自分が主導権を握れる……といった話は、就職で人生の勝ち負けが決まると思いがちな学生さんたちには新鮮だったよう。

自分のやりたいこと、夢や目標を持ち続けていれば、情報や出会いがアンテナに引っかかってきて、着実にそこへ近づいていける。美大に行きたいと思ったけれど断念したものの、広告会社に就職してデザインに関わる機会に恵まれた。書くことが好きで書き続けていたら脚本家になれて、絵本を出したい夢も叶った。教職を取ったものの教師の道には進まなかったけれど、シナリオを教える仕事がめぐってきた。今すぐじゃないかもしれないけど、夢は、遠回りしても、見失わなければ、いつかたどりつける。

赤坂のシナリオ会館に移動して、シナリオ講座修了式。3週間に一度、半年間の講師は、毎回とても刺激的な時間だった。シナリオを教えながら、わたしも学び直すことが多かった。教え子の生徒たちにも「書き続けていれば、道はひらける」と話す。

2005年03月25日(金)  傑作ドイツ映画『グッバイ・レーニン!』
2002年03月25日(月)  脚本はどこへ行った?

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