再生するタワゴトver.5
りばいぶ



 天井から(庄司 、書いちゃった)

 始めは、「う」だった。次に「ら」が出てきて、「やましい」がドドドっと続いた。天井がボコっと膨らんで、固形の言葉が抜け落ちてきたのだ。
 今朝がたの話である。寝ていたぼくの上にどんどん言葉が降ってきたのだ。転がっている文字に新しいものがぶつかると、文字同志が、文字そのものの音を立てる。金属的なひびきで「コ」「キ」とか「ア」「パ」といった音が響き渡るのだ。なんじゃこりゃ?と思っていると「なんじゃこりゃ」というかたまりが降ってきて、音を立てた。「ナンジャコリャ」。「!」と思うとやっぱり「!」が降ってきて「!」と音を立てた
 しばらくの間、突然起こったとんでもない状況に戸惑っていたのだが、となりで寝ている彼女が「暑い」と言ったとき、頭の中で筋がとおった。やはり、天井から「あつい」が降ってきたのだが、それよりも「天井」と「夢」と「声」が結び付いたのだ。「獏」である。
 昨夜、寝る前に中島らもの『獏の食べ残し』を読みはじめたのだ。せっかちなぼくは「あとがき」から始めたのだが、問題はその書き出しである。
「地上の人口は増えているが、獏の数はたぶん減っている。ということは獏が食べ残す夢の量はどんどん増えていっている」。「獏の食べ残しは、明け方にもすこしだけ闇がこごっているような路地裏とか、天井板のどう見ても女の人の顔に見える木目の中とか、あるいは赤ん坊が握り締めているこぶしの中だとかによくひそんでいる」。
 という部分があったのだ。
 特に「天井板」が、頭にこびりついていたのだと思う。で、それが発展して、ぼくの大好きなドラえもんの「声かたまりん」という声がかたまる道具のイメージと結び付き、固形の「なんじゃこりゃ」が降ってきたのだ。
 夢の最後は天井がはじけとんで終わった。ものすごい音を立てて、「わああ!」「け」「ちゃ」「がん」「どやややや」「なああ!」「あああ!」が四方八方にはじけとぶ。で、最後にまた、「う」と「ら」と「やましい」がひらひらと落ちてきた。結局ぼくは中島らもに嫉妬していたようだ。消化不良なぼくの夢のかたまりを理解するというとんでもなく寝覚めの悪い状態で、4月26日がスタートした。んんん…。

2005年04月26日(火)



 さくらさくら

いや、もうすっかり十日、いつの間にか桜も満開である。
水曜日からの芝居も満開といきたいものである、特に、早く散らないようにしたいものである。(笑)

わたしが花粉症であって、春を恨んでいるということはさておいておいて。
これほど、桜が四月、入学式あたりまで残っていて、尚且つ、桜の咲いた週末の天気が良いというのは、どれくらいぶりなんだろう。
だから花見も、三月下旬なんかにやるのとは違って、暖かいし、もってこいである。
花粉症も、大勢の殆どを占めるスギが弱まってくるので、花粉症の人間にとっても花見をしやすい。わたしがどうやら、その後どんどんひどくなっていくのは、もしやヒノキのアレルギーもあり、そっちの方がひどいようであり、春をうらんでいるということはさておいておいて。

雨が降っていないから、無理やり散らずに狂い咲き。
余りの桜に、人が狂い咲いてしまいそうである。

 そして昨日−
稽古帰りの山手線。高田馬場から新宿までというわずか二駅の出来事。
大きな声で話す大柄な男(スーツ1・スーツ2)二人。
彼らは、まあ、それは楽しそうだった。
優先席付近に立って、つり革に摑まっていた。
ま、彼らは今日した花見について喋りあっているのだ。
と、携帯電話が鳴る。ここは優先席の目の前なのにである。
ま、それくらいの事はいいのだが…
と、スーツ1が出る。電車の中なのに。
と、その後ろにいた大きなカバンをもった男(カバン男)、イラッとしたのか、スーツ1を見る。気がつかないスーツ1、まだ喋る。
その、カバン男がわざわざ身体をスーツたちの方に向けるので、優先席に座っていたサングラスをかけた女(サングラス女)と目が合う。女も、スーツ1を見ている。
その頃、スーツ2は両手でつり革に摑まり、頭を両手に持たせかけている。
スーツ1まだ喋る。カバン、サングラス、更にイラつく、スーツ2は両手に…
スーツ1「…あああ、おつかれさまです。ええ、いや、もう電車なんですけれど。…ええ。は?…ええ。は?…ええ、いや、A(スーツ2)を送ってるとこなんですが。いやいや、大丈夫です慣れてますから。…で、ええ、はあ。課長の靴…、靴、ですか…、ちょっと待ってください!」
と、スーツ1電話口に言い放ち、スーツ2のズボンをまくって靴を見た。
カバン、サングラス、まだ話すのかと思いつつ−
なんとスーツ2は上はスーツだが、下は汚れたジャージを穿いているのだった。(スーツ2改名→下だけジャージ)※
※もうわかりますね。ゲロッて、スーツの下をダメにしたものと思われる。
そして更にスーツ(スーツ1改名→スーツ)は下だけジャージの靴を調べる。
カバンと、サングラスは、今更その格好に気がついてしまい。怒りが、笑いに負けそうになっている。なぜなら…
スーツ何かを見つけた。
スーツ「これ、お前のじゃないよな。」
下だけ「んー、あー、あっ。いや。」
スーツ「お前これ、明らかに違うだろ。かたっぽ潰して履いてるじゃないか。」
下だけ「あれ、んー、あー、……どうしましょう?」
カバン、サングラス。色は同じだが、左右、大きさ(左は小さいので踵をつぶして履いている、当然革靴)と紐の結びの違う靴を見て、もう絶えられないことになっている。下だけジャージ改名→革靴の踵を潰して履く男(略:履く男)
スーツ「(電話口)すいません。はい、あります。いや、はい。兎に角、明日ですね、課長のお宅まで届け届けさせます。(履く男に)おい、いいよな?」
履く男「(なぜかちょっと前からものすごく酔っ払っている風情で)あー、んー。」
スーツ「ちなみに、ちょっと踵が潰れているんですが…、大丈夫ですよね?…スイマセン」
カバン、サングラス、笑い声を出さないのに必死である。だって、花見で吐いた男は今、課長の革靴を履いた男なのだから…

そして電車は新宿に到着。
スーツは履く男の肩を抱え、履く男はスーツの肩を抱き、千鳥足で新宿のホームを消えていった。
なぜか、電話を注意できないわたしなのだった。

狂い咲き。
いや、春はいい。
わたしが、花粉症であることをさておいておけば。

2005年04月09日(土)
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