戯言、もしくは、悪あがき。
散る散るミチル
ミチルは果てた
充電切れたら
今夜も寝逃げ

2016年06月22日(水) 「やがて、ひかり」無事終了しました

『無題/小夜』リリース記念朗読会「やがて、ひかり」@Jazz喫茶映画館、無事終了しました。
いらしてくださった皆様、気にかけてくださった皆様、本当にありがとうございました。
また、素敵な会場と素敵なマイクを快くお貸ししてくださった映画館さん、そしてCD制作はもちろん、今回の企画でもほぼすべての実務をこなしてくださったカワグチタケシさんにも、感謝しかありません。ありがとうございました。

雨を心配していましたが、まさかの真夏日で、夏好きの私としては最高の日和でした(暑がりの皆さん、水不足にお困りの皆さん、ごめんなさい)。

朗読する合間に、映画館さんの時計の音がずっと聴こえていて、お客様が見えて、自分の声が遠くから聴こえてきて、幸せだなあと思いました。

朗読は2部構成で、1部は自作詩と、大好きな詩人さんたちの作品を。2部はCD収録の詩を収録順に読みました。

CDに入っていない自作詩で、朗読したものはテキストをアップしました。
タイトルをクリックすると、新しいウィンドウで開きます。

「やがて、ひかり」(2016年6月18日によせて)

「Ring.」

「ひかりまで」

「各駅停車」

「まがりかどで」

「0621-夏至」

今回、1時間というのは先に決めていたので、あとはパズルを解くように、朗読する作品を選びました。後半をCDと同じ構成にすると決めてから、前半は映画館さんの空間だからこそ読める詩を読もう、と思って、今まで朗読したことのない「各駅停車」と「まがりかどで」を選びました。余白多めの詩で、時計の音がたくさん聴こえました。

私は朗読が、やっぱり好きだなあと思います。文字のなかに、気配やリズムがあって、それを声にするという行為が、好きです。踊ったり歌ったりと同じように、朗読があって、踊りや歌とはまた違う、広がりや高まりがある。それが、とても、好きです。


幸せな1日でした。ありがとうございました。



小夜





2016年06月21日(火) 「0621-夏至」

「0621-夏至」


旅先から無事をおもって電話をかける
陰惨なできごとを知ってしまったから
数日が永遠に飲み込まれないように

あなたは毎日変わる
出発の日には ずいぶん少女だった
ガイジンのようにハグをしたら
情けない顔で照れた

語ることばがないのなら
なおさら寄り添っていなければいけないはずだと
機械越しのため息がほそくにじんで

雲がしろく湧き上がっていく
方角を失う
自由であれるようにもなった
うしろめたさが袖をかすめる

陰惨なできごとを耳にして
ひととき旅を忘れた
日がどんどん長くなり
ひとりの午後が引き伸ばされていく
窓の下でこどもたちがひとつのことばを繰り返して
ボールのアスファルトに跳ねる音が遠く響く
近くではテレビがそらぞらしい光を放ち
原色のレポートが絶え間なく繰り返される
冷えた空気を超えて肌がじっとりと湿っていた
どこかに熱が生まれていて
あの太陽の角度
まだ昼間と呼べてしまうから
ひとり のことをおもった

動いていることと留まること
守人は水をやり油をさしほこりをはらい
いつのまにか暮れ方の空に気づく

日差しが徐々に強くなり
洗濯物の隙間から畳を灼き付ける
勝手に腕をひろげた入道雲が
いまはない面影をどこまでも濃くする
庭はずいぶんと荒れてしまったけれど
それでも鳥は舞い降りて
いくつかの強靭な草は茂った
その強さに背を押されて
久しぶりのお茶を入れる
どれもこれも工芸品のように手の込んだ
もらいものの焼き菓子を並べて
テレビではまだレポートが続いている
消してしまうと静寂が降りた

こちらは楽しくやっているよ
梅雨なんて別の国の話みたいで
世界がずいぶん歪んだとおもうよ
けれどああ夏がやっぱり好きだって
あのワンピースを貸してください
うすいみずいろがまるで儚くて
いまになってとても着てみたくなったよ
あなたももちろん似合うのだから
時々でいいから とっておきの青空の日に
何も羽織らずに着てみたくて (困った 靴がないや)
ねえ今年の夏もちゃんと
夏でありますように

旅先から無事をおもって電話をかける
馬鹿みたいに確かめる
永遠がわたしたちを飲み込まないように
提げて帰る土産のことを考えながら
穏やかな夜が降りるまで

夏がきたら
ちゃんと夏がきたらね
ガイジンみたいなハグをして
暑くるしいって笑おう
もうすぐ帰るよ
夏はやってくるよ
なにひとつ永遠ではないから
お茶を入れるように暮らしを
していてね
ねえ
世界のしぶとさを信じます
たとえば 夕立の前に
買い物を済ませるように
焼き菓子があればやかんをかけるように
こちらはますます生きているから

それにしても
この

だだっぴろくすばらしい空を




2016年6月18日 Jazz喫茶映画館にて朗読



2016年06月20日(月) 「各駅停車」「まがりかどで」

「各駅停車」


忘れ去られるものの声で
 、
呼んだ

空は微動だにしなかった

9つ目の駅で各駅停車は動きをやめ
待ち合わせでもないのにひたすら留まっていた
急行も後続列車もやって来なかった
扉は、ずっと開かれていた

歌は私に通りすがり、またすぐに消えてしまった

空は微動だにしなかった

通りすぎぬように各駅停車を選んだものの
動かないならどうしようもない

目的地が胸にあるからこそ
たどりつけない旅だった
遠足のように先を歩いてくれる先生はなく
場違いに元気な号令の声もない

ちい、と

すずめの声を聞いた気がしたが
すずめの声を聞いたことなど一度も無い気もした

私がこの駅から離れられないように
すずめは空に繋がれている

扉は、ずっと開かれている

仕方が無いのでホームに降り立ち無人売店でごまかしの買い物をした
500円分の菓子を買おうと思ったが
300円で事足りてしまった

あんぱんの袋を破ると射撃のような音がしてすずめが3羽空から落ちた

私は電車に乗り込むと窓越しの3羽を見ながらあんぱんを食べた

鳴き声は無かった

空は微動だにしなかった

各駅停車も動かなかった

私は

忘れ去られるものの声で
 、

呼んだ


目的地だけが息づいていて、
だからこそたどりつけないのだった




「まがりかどで」


目をつぶりました ふたつめのかどで
街が急に知らん顔したので
地図を持たない指のさきが
闇のふちにあたって ひゅうとしました

目をつぶったわたしはひとり
メリーゴーランドの軸になって
こうまたちのめんどうをみます
こうまは勝手に回っているので
わたしも勝手につなを握って
ならない口笛で拍子をとります

遠心力でこうまたちは
ぐんぐん上へと浮かびながら
ひらひらゆれる尾っぽのさきで
見えない果てを描いてゆきます
わたしはわたしで2本の足に
しっかと力を入れるのですが
どこが地面かも忘れてしまって
気づくとやっぱり浮かんでいます

こんなときにはなにかすてきな
うたがあったとわたしは思い
けれどもやっぱり音にはならずに
のどから風はひゅうとこぼれ
それはどうやらなまあたたかく
春が来たかとこうまははしゃぎ
ぶるんぶるんとつなをふるわせ
おかげで風はそれはきれいな
ヴィブラート を帯びてゆき

わたしたちはひとつの楽器になって
空で鳴りつづけるのでした

そうしてはたと気がつくと
わたしはふたつめのまがりかどで
ほんのすこし目を回しながら
ぼんやりひとり立ち尽くしていて
ひとしごとを終えたわたしのことを
街もどうやら許してくれて
わたしも地面を取り戻して
のどをひゅんひゅん言わせながら
また歩きはじめるのでした



2016年6月18日 Jazz喫茶映画館にて朗読



2016年06月19日(日) 「やがて、ひかり」「Ring.」

「やがて、ひかり (2016年6月18日によせて)」


やがて、無数の時計たちは
ながい仕事からときはなたれて
それぞれの時を刻みはじめる
すこしずつ
すこしずつ
ずれだしてゆく隙間に
ずっと忘れ去られていた
たわいのない約束や
のみこまれたままの告白や
記録には残らなかったけれど
たしかにそこに集っていた
あの子やあの子のざわめきが
にじみだして
音楽になる

ながい歴史のなかの
ほんの一日
そのひとはやってきて
決心する
箱をつくり
窓をつくり
とびらをつくり
とびらをあける
光が入り込み
床と壁と天井ができる
椅子が置かれ
テーブルが置かれ
たくさんのしくみが作られて
ようやく
レコードに針が落とされる
鳥がのぞきこむ
蛙が通りすがる
猫がやってくる
ひとがやってくる
たくさんやってくる
においがする
コーヒー、たばこ、お酒
そして
同じ音楽にもたれて
それぞれのスクリーンを見つめる
それは、たった一度だけ封切られる映画
やがてしずかに、
あるいはドラマチックに幕がおりて
拍手のように
時計たちがまた
それぞれの時を刻みだす

そのころ、
べつのだれかは
あたらしい名前を自分につけて
まだだれもしらない
ことばをつづりはじめている
ひとつの時間から
ときはなたれて
やがて
外にでる
どこへたどり着くのかもわからないまま
降り注ぐ光のなかを
やってくる



「Ring.」

凛とベルを鳴らしてわたしは世界を揺り起こす、ちいさ
くちいさく叫んでみる、プハッ、って吐き出したはずが
まるで息継ぎみたいでクロール? 平泳ぎ? バタフラ
イ? 手足の出しかたなんて忘れちゃったよ、自由形の
わたしは自転車ですり抜けてく、空を背負って凛として
起きなよって誰もしらない名前で呼んで吐き出して吐き
出して吐き出して吸って風をちょっとだけ生んでみる、
行き止まりなら踊るだけ、くるくるくるくる進まなくて
も生まれてるんだエネルギー、閉じ込められてなんかな
いだってほら空とつながってる、吐き出して吐き出して
吐き出してプハッ、入ってきたものがほんとうの風だよ。
吹き抜けていくものだよ、上へ。



2016年6月18日 Jazz喫茶映画館にて朗読



2016年06月18日(土) CDと朗読会のおしらせ

小夜です。
さやと読みます。
泥の中に生息して、ときどき飛んだり跳ねたりして、極まれに空をかすめたりします。
そういうときは舞い上がってますので見ないふりをしてください。
断続的に生きています。
長年こころだと思っていましたが、実はからだでした。
書いたり読んだり踊ったりします。

初めて、朗読のCDを出すことになりました。
※これはお知らせの日記です。
CDのタイトルは、「無題」といいます。
無題にしようと思いました。最初だからです。
いろんな場所でゲリラ朗読をして、居合わせた人を巻き込むということもなく、淡々と空間を録音しました。
詩人のカワグチタケシさんがやっていらっしゃる「プリシラレーベル」というレーベルから出していただくことになりました。
録音、編集、デザイン、装丁、カワグチさんにはたくさんお世話になりました。
過去に自分でコピー誌の詩集を作ったことがあります(『みずたまのいきもの/いきもののみずたま』*イシダユーリさんと共著、『ひかりについて』)が、いつも自分の不器用さとセンスのなさ、何より生来のがさつさに唖然としました。何せ線ひとつまっすぐに引けない。。。
今回カワグチさんが作ってくださったジャケットとブックレットは、本当にうつくしくて感動しました。朗読をした場所の風景を撮った写真がたくさん使われています。ぜひお手にとっていただけたら嬉しいです。

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『無題/小夜』

本体価格600円(税込648円)

fukidama/ゆうべ、夜は/放課後のあとの即興詩/Re./さめざらま/いつかひかりの/マチネチカの7編を収録。

通販をご希望の方には発送手数料152円、計800円(税込)で郵送します。rxf13553@nifty.com(カワグチタケシ)まで、お名前、送付先住所をお知らせください。振込口座をご通知いたします。
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きっかけは、おしゃべりでした。
朗読に音楽をつけるのが好きではない(自分でやる場合)という話になって、理由を考えました。
音楽のセンスがないとか、音楽に酔いすぎるとか、理由はいろいろあって。
「朗読が好きな理由は、聴くときも読むときも、静寂が聴こえるからだ」と思い至りました。
集中しているときに、声がなくなるから、背景にある空気を聴くことができる。
そういう背景を閉じ込めるような録音があったら、面白いですね、という話になり、もともと日常で鼻唄のように詩を口ずさむことが多かったので(←病気・・・)録音してみたいなと思うようになりました。
そして、今に至ります。

発売にあわせて、(1ヶ月遅れですが)白山のJazz喫茶映画館さんで、朗読会をすることになりました。
ひたすら、読みます。
よかったら遊びにいらしてください。

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Pricilla Label presents
小夜1stアルバム『無題/小夜』リリースライブ
「やがて、ひかり」

2016年6月18日(土)15:30 open 16:00 start

JAZZ喫茶映画館 〒116-0013 東京都文京区白山5-33-19
03-3811-8932 http://www.jazzeigakan.com/

出演:小夜

入場料500円+1drink order
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今回録音した作品について、少し書きます。
若干に内容に触れていますので、読みたくない方は、どうぞここまでで・・・・


「fukidama」
昔やっていたホームページの「吹き溜まる、自転車の道で。」のトップページに書いていた詩です。
それまで普通のタイトルのあるトップページだったけど、思いたってこれだけを載せたら、いろんな人に心配された思い出があります。

「ゆうべ、夜は。」
下校の時間になることはもうないのだな、と思います。
眠るためのひとつのメソッドのような。

「放課後のあとの即興詩」
タイトルのとおり即興的に書いた詩です。
モチーフの一部は、大好きな作家さん(音楽家さんですが、私にとっては作家さん)である谷山浩子さんの小説「悲しみの時計少女」からいただきました。
大好きな大好きな大好きな小説です。

「Re.」
映画館さんで何人かの詩人さんと共同主催していた「コトバコ」という詩のイベントで、朗読したことがあります。
そのとき、ゲストで出演されていた方が、感想をくださって、それは、今回、これをいれようとおもった大きな理由になりました。

「さめざらま」
タイトルが気に入っています。
これも谷山浩子さんの小説「少年・卵」からモチーフというかインプレッションを頂きました。

「いつかひかりの」
書いたときはこれでしかありえないと思ったのが、歩いていくうちに、いろんなものに対象がすりかわって、そのことに励まされました。
わたしはきっとすぐに目をつぶるけれど、それでも見つめていたいと思った。

「マチネチカ」
自分史上一番しっくり前向きな詩です。
おひめさまと少女漫画で育っただれかの成れの果て。
映画「アカルイミライ」が、書くきっかけでした。目に浮かぶイメージがあります。








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