戯言、もしくは、悪あがき。
散る散るミチル
ミチルは果てた
充電切れたら
今夜も寝逃げ

2004年05月01日(土) ひかりまで

くるぶしからつきだしたしなやかな枝だ
みどりのしずくを先端に飼って
足を出すたび鳴きごえはひかりとともに漏れ出して
ちいさな破裂を繰り返しては低いところで充ちてゆく

春が来て 春は過ぎ
もう夏のはなしをだれかがしている
まっすぐにのびる熱を帯びた銀の針が
きのうとあしたをぴったりと縫い綴じてしまいそうな

地の底からかえるのこえ
目がしらに異国の町

ここではないどこかの
わたしではないわたしが
こちらを見て笑っていた
その笑顔がとても好きだと思う
体中が軽くて
もうすぐあれはひかりにとける
こなごなになってここに降る
夏が来る

ごうごうと水脈の音が
途絶えることなく聞こえたから
わたしのなかの王国を
今夜はしずかに眠らそう
暗がりを抜けるまで
ざわめく肺をさすって
さすって

王さま、
あしたは
いいかおりの焼きたてのパンと
ひかりの化身のオレンジの
マーマレードを食卓に並べて
朝にしましょう
くにじゅうでいちばん高いところから
ぎんいろの鐘を打ち鳴らして
森のはずれのいずみにも
その波紋がとどくように
みずすましがすべってゆく
甲羅の欠けた亀が
傷あとに飾った水滴の
ちいさな無数の球体の中で
空がいくつもひらかれていく

くるぶしがうずいて
走りたいと言った
わっさわっさと揺れる枝から
夏の卵が孵りはじめた

夏か、
じゃあ、
しかたないな

くるぶし 目がしら
貫いて 流れ
はりだしていく入道雲に
はりついた王国の地図を
両腕でたどって わたし
朝のためのパンを焼く
太陽がこぼした
ひかりのジャムで
あしたの食卓が
やさしくあるように

ひかりにとけるまで
笑っていて
その笑顔がとても好きだと思う

くるぶしからすくすくと伸びだした枝が
ささやかな木陰と
木漏れ陽をつくった
ここから

そこまではゆく

走ってゆく


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