戯言、もしくは、悪あがき。
散る散るミチル
ミチルは果てた
充電切れたら
今夜も寝逃げ

2016年06月19日(日) 「やがて、ひかり」「Ring.」

「やがて、ひかり (2016年6月18日によせて)」


やがて、無数の時計たちは
ながい仕事からときはなたれて
それぞれの時を刻みはじめる
すこしずつ
すこしずつ
ずれだしてゆく隙間に
ずっと忘れ去られていた
たわいのない約束や
のみこまれたままの告白や
記録には残らなかったけれど
たしかにそこに集っていた
あの子やあの子のざわめきが
にじみだして
音楽になる

ながい歴史のなかの
ほんの一日
そのひとはやってきて
決心する
箱をつくり
窓をつくり
とびらをつくり
とびらをあける
光が入り込み
床と壁と天井ができる
椅子が置かれ
テーブルが置かれ
たくさんのしくみが作られて
ようやく
レコードに針が落とされる
鳥がのぞきこむ
蛙が通りすがる
猫がやってくる
ひとがやってくる
たくさんやってくる
においがする
コーヒー、たばこ、お酒
そして
同じ音楽にもたれて
それぞれのスクリーンを見つめる
それは、たった一度だけ封切られる映画
やがてしずかに、
あるいはドラマチックに幕がおりて
拍手のように
時計たちがまた
それぞれの時を刻みだす

そのころ、
べつのだれかは
あたらしい名前を自分につけて
まだだれもしらない
ことばをつづりはじめている
ひとつの時間から
ときはなたれて
やがて
外にでる
どこへたどり着くのかもわからないまま
降り注ぐ光のなかを
やってくる



「Ring.」

凛とベルを鳴らしてわたしは世界を揺り起こす、ちいさ
くちいさく叫んでみる、プハッ、って吐き出したはずが
まるで息継ぎみたいでクロール? 平泳ぎ? バタフラ
イ? 手足の出しかたなんて忘れちゃったよ、自由形の
わたしは自転車ですり抜けてく、空を背負って凛として
起きなよって誰もしらない名前で呼んで吐き出して吐き
出して吐き出して吸って風をちょっとだけ生んでみる、
行き止まりなら踊るだけ、くるくるくるくる進まなくて
も生まれてるんだエネルギー、閉じ込められてなんかな
いだってほら空とつながってる、吐き出して吐き出して
吐き出してプハッ、入ってきたものがほんとうの風だよ。
吹き抜けていくものだよ、上へ。



2016年6月18日 Jazz喫茶映画館にて朗読


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