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JIROの独断的日記
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2010年08月14日(土) 【差替】【音楽】ショスタコーヴィッチ 交響曲 第五番←聞き所を加えて差替えました。

◆忘れていた、というか、実は殆どショスタコーヴィッチを知らないのです。

ショスタコーヴィッチ(1906-1975)という人は、旧ソ連の作曲家です(それが面倒なんです)。

音楽史の中では客観的には20世紀最大の作曲家の一人との評価が定まっているのです。

交響曲5番は彼の作品の中で、かつては(多分今でも)最も頻繁に演奏される曲です。

分かり易い。吹奏楽コンクールでも、後でお聴き頂く終楽章(第四楽章)が昔から好んで取りあげられます。

景気が良いんです。終わり方が。


しかし、実をいうと、私は彼の他の作品を殆ど知りません。聴いたことはあるのですが、

あまり、若しくは全然面白くないのです。要するにこの5番以外に殆ど知らないので、

今まで取りあげなかったのですが、これは、比較的聴きやすい。



ショスタコーヴィッチは、旧ソ連の時代に生まれてしまったので、いろいろと政治的な干渉を

受けております。初期は「モーツァルトの再来」とか言われたんですが、どこが気に入らなかったのか、

スターリンに睨まれまして、共産党の機関誌「プラウダ」に、途中から西側の腐敗した資本主義的な

音楽だ、と烙印を押されるのです。

音楽に「資本主義的な音楽」も「共産主義的な音楽」も無いのであります。

音の流れですから、思想とかイデオロギーが表現出来るわけ無いでしょ?

ですから、バカバカしい批判なのですけど、睨まれると怖いですから。

下手すると、精神病院に入れられたり、シベリアの強制収容所送りになりかねないので、

「お上」のウケの良さそうな、この「交響曲第五番」を書いたら、今度は、やたらと褒められて、

何とか命拾いした、という、まあ、ざっとそういうことです。

世の中には熱烈なショスタコーヴィッチ信奉者がいまして、そういう人に言わせると、

何やら、もっとシチメンドクサイ事情があるようですが、私はあまり興味がありません。

なお、今は「差別用語」で使ってはいけないのですが、昔は、「○○マニア」を「キチガイ」といいました。

「バッハキチガイ」、「ベートーヴェンキチガイ」などと平気で言ったものですが、それでいくと、

「ショスタコーヴィッチ・キチガイ」となります。これを略して「タコキチ」といいます(笑)。


◆ムラヴィンスキー=レニングラード・フィルが定番中の定番です。

ショスタコーヴィッチの交響曲全部で15曲ありまして。所謂「クラシック通」は、

交響曲五番が好きだ、というと、「巨人・大鵬・卵焼き」で、嫌であるらしい。

何やらわざわざ(私から見ると)退屈な曲を好きだと言わないと、ダメらしいですけど、

まあ、ショスタコーヴィッチ入門なら、「交響曲第五番」です。


で、ソ連ですから、餅は餅屋で、ソ連の指揮者とオーケストラです。

今は「サンクト・ペテルブルグ・フィル」ですが、旧レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団、

指揮者のムラヴィンスキー(おっかない顔をしたオッサンです)といったら、確かに世界的にも大変レベルが高い。

十八番のチャイコフスキーや、ショスタコーヴィッチのみならず、モーツァルトなど弾いても非常に上手いです。


◆【追加】聴き所(完全に私の独断というか「好み」ですが)。

昨夜は、というより、今日の未明にこの記事をまとめていたら朝の6時になってしまいました。

本来もう少し詳しく書くつもりだったのです。

6時にブログを更新して、それから寝て、起きたのが今日(15日)の14時で、モタモタしていたら、19時です。

今更、なのですが、折角説明用に各楽章のサワリを用意してあったので、少々追加させて頂きます。


聴き所1。第一楽章、冒頭。

まず、曲の冒頭ですが、チェロとコントラバスのこのような音で始まります。


ショスタコーヴィッチ交響曲第五番第一楽章冒頭


Shostakovich SymphonyNo5 First Movement Beginning



これは、生で、特にコントラバス、チェロの近くの座席で聴くとすごい迫力です。

CDで音楽を聴くのと生で聴くことに最大の違いは、生の場合、楽器の音は、床に伝わり、

それが客席の床から椅子に、そして、聴衆の身体に共鳴するのです。

そして、音自体を身体全体で聴くことになる。人間の身体自体が、コンサートホールの

音の反射板のような効果を持っています。耳だけで聴くのと、印象が違うのはこのためです。

ショスタコーヴィッチの5番をその為だけに、他の楽器がが見えにくい、或いは聞きにくい座席で聴くのは、

もったいないかもしれませんが、一度、最前列に近く、舞台に向かって右寄り。チェロ・コントラバス

セクションの近くで聴いて見ると、大変よく分かります。



聴き所2。第一楽章。ホルンの超低音。オーケストラの一楽器としてもピアノ。

第一楽章は演奏時間(このCDの再生時間)が15分ちょっとですが、再生開始後約7分。

スコアでは122小節目からです。ホルンは非常に音域が広い楽器ですが、4本のホルンが

これほどの低音を出すのはあまりお聴きになることが無いので、CDだけ聴いていると、

一瞬何の音か、と思われるのではないでしょうか。更に、同時にピアノの音が聞こえます。

他の作曲家、ストラヴィンスキーや、サン=サーンスもやっていますが、ピアノを

「オーケストラの楽器の一つ」として用いている例です。協奏曲とは本質的に違います。


第一楽章 122小節目から。




Shostakovich SymphonyNo5 First Movement Bar 122



聴き所3。第二楽章、コンサート・マスターのソロ。


第二楽章は、スケルツォ(速い三拍子)で、第一楽章と雰囲気がガラリと異なります。

ここでもホルンの使い方が面白いのですが、ホルンは第一楽章で書きましたので、

中間部「トリオ」と呼ばれる部分で登場するコンサート・マスターのソロをお聴き下さい。


随分昔になりますが、NHKの朝ドラで「チョッちゃん」という番組がありました。

黒柳徹子さんの母上、黒柳朝(くろやなぎ・ちょう)さんの自伝をドラマにしたのです。

黒柳朝さんの旦那さん、即ち、徹子さんの父君は黒柳守綱氏で、昔N響の

コンサート・マスターを務めた方です。この役を朝ドラでは、世良公則氏が演じました。

凡そ、ドラマで恥ずかしいのは楽器演奏シーンで、本当に楽器、ましてや弦楽器が弾ける日本の俳優は皆無に等しいので、

見ていて、非常にいらいらするのですが、「チョッちゃん」の劇中では、世良公則演ずるところの黒柳守綱氏が、

ヴァイオリンをさらうシーンがありました。それが何故かいつもこの

「ショスタコーヴィッチ:交響曲第五番 第二楽章のコンサート・マスター・ソロ」でした。


これは本当におかしいのです。それほど、1年中練習しなければ弾けないような難しいソロではありませんから。

しかし、驚いたのは世良公則氏の「ヴァイオリンを弾く演技」で、左手は忘れましたが、少なくとも右手のボウイングは

ほぼ、完璧で、あれよりも上手い「日本の俳優による、楽器の弾き真似」は見たことが無い。

その記憶が鮮烈です。


ショスタコーヴィッチ:交響曲第五番 第二楽章のコンサート・マスター・ソロ



ショスタコーヴィッチ:交響曲第五番 第二楽章のコンサート・マスター・ソロ



聴き所4。第三楽章のオーボエソロ



聴き所の最後。この交響曲にはオーボエ・ソロが随所にありますが、第三楽章には特に、

「腕の見せ所」のような大ソロがあります。

既に引退した、オーボエ奏者宮本文昭さんが、ケルン放送交響楽団首席オーボエ奏者を辞めて、

日本に帰り、更新の指導にあたる、決心をしたきっかけとなったのが、この「ショスタコ5番」のオーボエ・ソロだそうです。

詳しくは、宮本さんの「疾風怒濤のクラシック案内」という本に書いてあります。


ある、コンサートでショスタコーヴィッチの5番を演奏したあと、ドイツ人の年配のご婦人が楽屋口に立って、

宮本さんを待っていたそうです。3楽章のソロが大変素晴らしかった、と褒めた後、宮本文昭さんが驚いたのは、

その、元・オーボエ吹きでも、音楽の専門家でも、評論家でも無いご婦人が

もしかして、あなたはヴィンシャーマン(引用者注:宮本さんの師匠の名オーボエ奏者)さんのお弟子さんではありませんか?

と宮本さんに訊いたそうです。言葉では表せないほどの驚きを、宮本さんは感じたそうです。

師匠の元を巣立って25年。自分なりの「ミヤモト・トーン」は出来ていたのに、若い頃に影響を受けた、師匠の

音の微かな「香り」を、素人の老婦人に言い当てられた。宮本さんは大いに感動し、
人を教える、とは、こういうことか。

と。そろそろ、自分も自分が西洋で苦労して身につけたことを日本で教えるときではないか、と

考えた、というのです。西洋人は、日本人が想像するほど、皆が皆、クラシック好きではありませんが、

さすがに「西洋音楽」で、ときどき、素人にもこのようにオソロシイ耳をもった、一般の聴衆がいるのですね。

この話がとても好きです。


第三楽章 オーボエ・ソロの部分。


Shostakovich SymphonyNo5 Third Movment Oboe Solo



以上、主な聴き所を勝手に選ばせて頂きました。


◆それでは、第四楽章をお聴き下さい。

この音源は、ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 です。

他にも名演はあるでしょうけど、まず「ムラヴィンスキー=レニングラード」です。

景気よくはじまり、思い切り盛り上がって終わる第四楽章(終楽章)をお聴き下さい。

再生時間は10分50秒ぐらいですが、最後のトランペットの最高音(10分10秒付近)は、

本来のトランペットの最高音を超えていまして、最後の一番疲れた所で、とどめを刺すように、

最も苦しい箇所がきます。プロなら「吹けて当たり前」なんですけど、正直言ったらしんどいと思います。

ティンパニ、カッコイイですよね。これは、きつくはないですから、狡いなあ、とラッパの立場からは思います。

では、曲を。


ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 ニ短調 作品 47より第四楽章。


Shostakovich: Symphony #5 In D Minor, Op. 47 - Allegro Non Troppo



如何でしょうか。これは生で聴くと非常な迫力です。一番最後はティンパニと大太鼓が、

これでもか、とばかりのフォルティッシモですさまじい音を出します。全身にズシンと音がぶつかってきます。

日本のオーケストラでも、もうプロはこの曲は慣れたものですから、

一度生をお聴きになることをお薦めします。

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