外国為替証拠金取引
JIROの独断的日記
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2009年11月26日(木) 「ドル円、86円台。14年4ヶ月ぶり」←まだ、(ドルが)下がるでしょうねえ。

◆記事:ドル離れ、円高一段と 86円台、デフレ進行懸念 (NIKKEI NET)(11/27 00:03)

26日の東京外国為替市場で円相場が1ドル=86円29銭まで急上昇し、14年4カ月ぶりの高値を付けた。

米国の超低金利政策の長期化観測でドルの先安観が広がるなか、ドル売りの受け皿として円に資金が流れ込んだ。

円の対主要通貨での実力を示す実効為替レートも約9カ月ぶりの高水準になり、にわかに円独歩高の様相も見せつつある。

円高は企業収益の悪化や輸入物価の下落を通じ、「緩やかなデフレ局面」に陥った日本経済に深刻な打撃を及ぼしかねない。

円買いの背景にはドルと円の金利が逆転したことがある。

短期金利の代表的な指標であるロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の6カ月物は今月に入り、円金利がドル金利を上回った。

名目金利から物価上昇率を引いた実質金利では、物価がマイナスの円の方がさらに高めになる。


◆コメント:「円高」というよりも「ドル安」である。

26日の東京外国為替市場のうごきは、かなり激しく、ドル/円の最安値(注:以下、ドルを基準に記述する。87円→86円は、

「(ドルが)下がった」と書く。)を付けた瞬間はほんの数秒で約1円下がったらしい。

ドル円ディーラーはさぞや肝を冷やしたであろう。一瞬判断を誤ればあっと言う間に数千万円の損失を出してしまうのである。


それはさておき、何故急にこのような動きが起きたのか?

記事にあるとおり、ドル金利が下がっているからだが、それ以上にアメリカの通貨当局がドル安を気にしていない、

むしろ歓迎している、ということが分かったからである。

アメリカも景気が浮揚したとはとても言えないので、記事にあるとおり、超低金利政策を維持している。

当然、マーケットの資金はドルよりも金利の高い通貨に流れる。それは連邦準備制度理事会(FRB)は百も承知である。

表向きは、見栄を張りたがる国なので「強いドルが望ましい」というが、実はアメリカにとってドル安の方が有り難いのである。


◆アメリカがドル安を容認する理由。

立場を逆にして考えてみると明らかとなる。日本の輸出企業にとっては、ドル安(円高)よりもドル高(円安)が好ましい。

仮に、自動車をアメリカで1台1万ドルで売っていたとすると、1ドル=80円ならば、日本円にして80万円にしかならないが、

ドル高(円安)が進行して、1ドル=100円になったら、100万円の売上げになるからである。


アメリカの輸出産業にとっても、原理は同様である。立場が逆であるから、先方にしてみれば、ドル安・円高もしくは、

他の全ての通貨に対してもドルが下がった方が、ドルに換算した場合に高く売れるのである。


アメリカにとって、ドル安がもたらすデメリットは何か?

ドルがほかの通貨に対して値をさげれば、今述べたように、アメリカにとって輸出にかんしては有利だが、

アメリカとて、他国からモノを輸入している。ドル安はドルの価値が下がっているのだから、輸入するモノは高くなる。

アメリカの輸入業者はそのコストを価格に乗せるので、全体としてものの値段が上昇する状態、即ちインフレの要因になる。


ところが、昨日、11月3日から4日にかけて開かれたFOMC(=Federal Open Market Committee、連邦公開市場委員会)の議事録が公表され、

アメリカの金融当局者達がドル安を容認していることが明らかになったのである。

因みにこれが、FOMC議事録原文である。Minutes of Federal Open Market Committee November 3-4, 2009

そして、時事通信の記事によれば、

◆円、85円台も視野=米当局がドル安容認−NY市場(11月26日11時1分配信 時事通信)

25日のニューヨーク外国為替市場では、円相場が1ドル=87円台前半に急伸し、1995年以来の86円台に迫った。

きっかけは、前日公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録。米当局のドル安容認姿勢が判明し、

一気にドル売りが加速した。市場関係者からは「85円台を目指す」(邦銀)との声もあり、一段高が予想されている。

議事録によると、複数のFOMC委員が「最近のドル安は秩序立った動き」との見解を表明。

ドル安に対する異例の言及を受け、市場参加者の間では「米輸出企業にとってプラスで、当局も歓迎している」との見方が広がった。

という訳で、FRBの連中はドル安はアメリカの輸出企業にとって有利だし、いまのところ、インフレ要因にもなっていない、

と考えているのである(但し、細かいことを書くならば、FRB議長のバーナンキ氏の最近のコメントを読むと、本音は

「一方的なドル売りが続くのは困る」と考えているのが明らかなのだが)。


◆日本にとっては、困るのだが、まだ、ドル安は止まらないであろう。

先に書いたとおり、ドル安・円高になると、日本の輸出企業の業績を圧迫するので、全然嬉しくないのだが、

暫く、ドル安は止まらないだろう。

藤井財務相は26日、「異常な動きには適切な措置をとる」といい、鳩山首相は「急激な為替の動き望ましくない」

と述べ、一応市場を牽制したつもりだったのだろうが、市場は全く意に介していない。

こういう流れができてしまうと、理屈ではなくて、マーケットのディーラー達は、ドル円相場の歴史的安値、79円75銭を

意識し始め、なんとか、この安値を更新したがるのである。これは理屈ではなく、トレーダーというのは、そういう生き物なのである。

また、財務相・首相ともに介入を臭わせてはいるものの、実際にドル安の進行を介入で止めることは非常に難しい上に、

そもそも、鳩山首相の立場では、できないのである。鳩山内閣は内需拡大を国際公約にしている。

◆鳩山首相「内需拡大は国際公約」 亀井金融相と会談(日経 10月7日)

鳩山由紀夫首相は7日午前、首相官邸で亀井静香郵政・金融担当相と会談した。

今後の経済運営について「政府が責任を持って支出で内需を創出する。内需拡大は国際公約だ」と述べ、

日本経済を下支えするため、政府支出による内需拡大に取り組む考えを示した。

中小・零細企業などの債務の返済猶予制度を巡って、金融相は会談後、記者団に「首相は『お任せしている』と言った。

最初からこれをやるということで私を任命した」と強調した。

金融相は秋の臨時国会に返済猶予制度の関連法案を提出する方針を示している。

法案作成を担う大塚耕平金融担当副大臣が今週末にも原案を取りまとめる予定だ。

ということは、介入してドル高・円安にしようとすることは、輸出企業が有利になることであり、

それは、依然として外需に依存するつもりであることを内外に示すことになる。

だから、日銀による市場介入は実際にはできない。若しくはほんの形だけに終わるであろう。


以上に鑑み、結論をのべるならば、ドル安円高の流れはまだ続き、80円、若しくは歴史的安値の更新を

狙うであろう。そしてそれは、輸出関連株を中心とした日本株売りをも引き起こし、一時回復仕掛けた株価が

再度暴落する可能性は否めない。

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