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JIROの独断的日記
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2008年10月25日(土) 「妊婦受け入れ拒否事件」を巡る報道の問題点。

◆記事:7医療機関で拒否、妊婦死亡=脳出血、1時間たらい回し−東京(10月22日12時43分配信 時事通信)

今月上旬、東京都内で出産間近に脳内出血を起こして救急搬送された30歳代妊婦が、7つの医療機関に受け入れを拒否され、

約1時間後に最終的に受け入れた都立墨東病院(墨田区)で出産したものの3日後に死亡していたことが22日、分かった。

墨東病院も最初に受け入れを打診された際、対応できる医師がいないとの理由で断っており、

都は救急搬送体制に問題がなかったかどうか調べている。


◆コメント:何でもかんでも医療機関が悪い、という先入観を与える報道は良くない。

記事で報ぜられている、妊婦死亡事件に関する医学的な所見を書くのは、素人の私には無理だ。

事件の全貌が分からないし、分かったとしても、それに対する医学的な判断は医学・医療の専門家で無ければ難しいだろう。


ただ、読者の方から教えて頂いたのだが、医療機関側にも事情はありそうだ。

「救急患者、何時でも誰でも、どんな状態でも何でも受け入れます」と下手に言えなくなってしまった判例がある。

医療従事者の間では、「加古川心筋梗塞事件」として、有名な事件・判例だそうだ。2007年4月、神戸地裁の判決である。

非常に、大雑把に書くならば、

治療できるかどうか分からない患者を受け入れて死亡させたら、受け入れた病院が悪い。

という判例なのである。

事実の概略を新聞記事から転載すると、
判決によると、男性(当時64)は03年3月30日、

自宅で心筋梗塞の症状が出たため、

午後0時15分ごろ、妻が同病院に連れて行った。

担当医師は同0時40分ごろ、急性心筋梗塞と診断して

点滴を始めたが、症状が変わらないため、

同1時50分ごろ、効果があるとされる

経皮的冠動脈再建術(PCI)が可能な

同県高砂市の病院への転送を要請した。



しかし男性の容体は悪化し、同3時35分ごろに

加古川市民病院で死亡した。

判決は「約70分も転送措置が遅れており、

医師に過失があると言わざるを得ない」とした。(2007年4月 朝日新聞)


神戸地裁の判決をうんと要約すると、
心筋梗塞に有効な治療は経皮冠動脈インターベンション(PCI)で、それが出来る施設がこの病院(加古川市民病院)にはなかった。

そこで当直医は、治療可能な病院に転送しようとしたが、データをそろえたり、必要な手続きをするのに70分かかった。

だから、患者は死亡した。早くPCIが可能な病院に搬送していれば、患者は90パーセントの確率で助かったはずだ。

従って、これは受け入れた、加古川市民病院の医療ミスだ。

というものだが、そりゃ、いくら何でも酷だ。というのが、専門家の言い分である。

「加古川心筋梗塞事件」をGoogleで検索すると、約17,900件の日本語ページをヒットするが、

多分、一番最初に現れる、健康、病気なし、医者いらずというブログを書いているドクターが、

「加古川心筋梗塞事件」について説明している文章は、素人が読んでも理解出来る。


加古川、心筋梗塞事件(心筋梗塞とは何か、から説明しておられる)。

加古川、心筋梗塞事件2(医学的見地から、判決の妥当性に疑問を呈しておられる)。

このドクターの所見は、循環器専門医でない当直医が心筋梗塞と診断するまで、25分。

これは、迅速な診断である、と。その後の時間の経過もやむを得ない。精一杯やっている。この判決は妥当性に欠ける、

というものである。

他のサイト(冷静に書かれたものだけ)も読んだが、大抵の医療従事者のネット上の意見は、その方向である。

客観的に冷静に述べるならば、私には、その医学的見解が正しいのか否か判断する能力が無い。

本当は、もっと時間を費やして色々な人の意見を読まなければならないだろう。

より詳細を知りたい方は、ご自分で調べていただきたい。


但し、私には事件と判例の妥当性を医学的に判断する能力は無いけれども、常識はある。

こういう判例が出たら、「うっかり、患者を受け入れたら大変だぞ」と、医療機関が防御姿勢を取っても無理はない。

それに関して、違う考え方をなさる読者もいらっしゃるだろう。しかし、こういう判例があったこと自体は、広く知られるべきである。


結論。

今回の妊婦受け入れ拒否事件で、新聞・テレビは例の如く、「医療機関が悪い」という印象を大衆に与える方向で、報道しているが、

「加古川心筋梗塞事件」(他にも同様の判決が有るかも知れないが、現時点では私は知らない)のことも

参考情報として提供しなければ、報道の公平性に欠ける。

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