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JIROの独断的日記
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2006年04月24日(月) 「脱線事故 周りの言動で心に傷」←「アンダーグラウンド」(村上春樹)がとっくに指摘している。

◆記事:脱線事故 周りの言動で心に傷 (NHK)

107人が死亡し、555人がけがをしたJR福知山線の脱線事故から、25日で1年になります。

NHKが事故でけがをした乗客にアンケートしたところ、事故で体や心が傷ついただけでなく、事故のあと、周りの人の言動などで心に新たな傷を負ったという人が回答者の半数近くを占め、

心のケアに周りの理解が欠かせないことが明らかになりました。



NHKは、福知山線の脱線事故から1年になるのを前に、事故でけがをした乗客のうち、連絡先のわかったおよそ450人にアンケートへの協力を依頼し、35%にあたる157人から回答を得ました。

この中で、東京都精神医学総合研究所がまとめたPTSDについての設問に基づいて尋ねたところ、回答者の39%にあたる59人が、事故を思い出して眠れなくなったり、神経が過敏になったりするなど、

PTSDになっているおそれが高いことがわかりました。

さらに、事故のあと、周りの人の言動などによって新たに心の傷を負うことが「たびたびあった」という人と、「何度かあった」という人が合わせて66人で、回答者の43%を占めました。

中には、「無理をしているのに、職場で『笑顔が足りない』と注意されて深く傷ついた」という人や、「事故から1週間ほどで、肉親に『もう大丈夫だろう』と言われ、つらかった」という人もいました。

兵庫県こころのケアセンターの加藤寛研究部長は「周りの人が回復が遅いと見ると、被害者はますます孤立してしまう。心の傷があって当然だと、周りが受け入れることが大切だ」と話しています。(04/24 05:37)


◆コメント:福知山線の事故に限ったことではないのです。

本題と全く関係がないが、この記事がどうして敬体(俗にいう「です、ます調」のこと。「である。」「だ」を常体という)かというと、

NHKのニュースサイトに載っている記事であり、ほぼニュースの原稿をそのまま載せているからである。

NHKホームページのニュースは簡潔な文章である。

あるプロのナレーターは、毎日これを初見(練習しないでいきなり通して読むこと。元来音楽用語。初めての曲を楽譜をみてすぐに演奏すること。

この能力が高いと「あの人は初見が利く」と表現する)で早めに音読することを日課にしているという。


さて、本題であるが、この記事に書かれていることは、作家の村上春樹氏が地下鉄サリン事件の被害者を一人ずつ訪ねて、インタビューを行い、

本にまとめた「アンダーグラウンド」(講談社文庫)を読んだことがある人にとっては、少しも意外ではない。

この本には、地下鉄サリン事件が起きたときに聖路加精神科医長で、その後、九段下にメンタルクリニックを開業した中野医師へのインタビューが載っている。

これを読むと、地下鉄サリン事件の被害者の相当数が、我々には到底想像出来ないような精神的、肉体的苦痛を受けていることを知り、愕然とする。

因みに、比較的、悲惨な事故現場になれている救急隊員や、警察官の中にも、あまりの惨状を目撃したことにより、PTSDになるひとが多いのだ。



PTSDはフラッシュバックと云って、事件の場面が何の前触れもなく脳裏に蘇り、パニック状態になるのが最も良く知られた症状だが、それは「精神症状」であるが、肉体的な症状を伴うこともある、という。

中野医師によれば、何人かの患者さんは、地下鉄サリン事件の数週間後から、ひどい頭痛に悩まされるようになり、それが始まると仕事にならない。

ところが、職場の人々から「お前が弱いのだ。だらしがないのだ。根性が無いのだ」と非難され、泣く泣く仕事を辞めた人もいるという。

どれほど、悲しく、悔しいだろう。その無念は察するにあまりある。


◆犯罪・事件の被害者に嫌がらせをする人間の心理

事故・事件の被害者にまわりが辛く当たるのは、一つには、「死」という災いの場にいた人は「汚れた」存在だ、と見なしたがる民族的心理的傾向があること。

もう一つは、約3年前に書いた、犯罪の被害者を非難する人間の心理をご参照頂きたい。

心理学者の説明によれば、人間には「世の中は公平であるべきだ」という信念がある。そして、「自分だけは不幸な目に遭いたくない」という感情がある。

だから、「犯罪の被害者は、何か本人に落ち度があったから、そういう目に遭ったのだ」、という理由付けをしたがるのだそうだ。

そうしないと、「何も悪いことをしていないのに、ある時突然、犯罪に巻き込まれる可能性が、自分にもある」(そのとおりなのだ。)、と云うことになる。

それを認めたくない心理が、犯罪被害者を非難する、という行動に走らせるのだ。


◆世の中知らないことばかりなのだ、という意識を持つ。

先日、東大の小柴名誉教授の講義について書いた。

小柴先生は立派な学者というのは、「分からないことが如何に多いかを痛感している人だ」と仰っていた。

小柴先生は学問に関して述べておられたわけだが、学者ではなくとも、世の中の事象全般に関して同様の意識を持つことは大切である。

つまり、世の中には自分がいくら考えても想像もつかないこと(この場合は、事件や事故の被害者、遺族の精神的・肉体的苦痛)があるのだ、ということを自覚することだ。

それができる人が増えるほど、理不尽な苦痛に苦しむ人が減る筈だ。


2005年04月24日(日) 「日本は謝罪した(Financial Times社説)」世界は分かっているのですよ。
2004年04月24日(土) 「独裁者にとって最も恐ろしい兵器とは、何者かが住民たちに正確な情報を提供してしまうことだ」対北朝鮮情報戦略
2003年04月24日(木) 「<ビタミン>55年ぶりに新種を発見 理研研究班」 そもそも、世界で初めてビタミンを発見したのは日本人なのだ。

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