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JIROの独断的日記
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2006年03月09日(木) 「日銀、量的緩和解除」←福井日銀総裁は、立派だ。

◆記事1:日銀:量的緩和、5年ぶり解除 政策決定会合

日銀は9日開いた政策委員会・金融政策決定会合で、5年間にわたり続けてきた量的緩和政策の解除を7対1の賛成多数で決めた。

消費者物価指数の上昇率が4カ月連続してゼロ%以上になったことを受け、「消費者物価が安定的にゼロ%以上になる」との解除条件を満たしたと判断した。

日銀は、解除後の新たな金融政策運営の目安として「物価の先行き見通し」を打ち出す。

福井総裁は決定会合終了後に会見し、解除に伴って市場の混乱を招かないように、解除後も当面はゼロ金利を続ける方針を説明する。(最終更新時間 3月9日 17時09分)


◆記事2:日本銀行サイト内:「金融政策の透明性の強化について 」より、「量的緩和政策継続のコミットメントの明確化」(2003年10月10日)

日本銀行は、金融政策面から日本経済の持続的な経済成長のための基盤を整備するため、消費者物価指数(全国、除く生鮮食品。以下略)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで、量的緩和政策を継続することを約束している。

日本銀行としては、このコミットメントについては以下のように考えている。


  1. 直近公表の消費者物価指数の前年比上昇率が、単月でゼロ%以上となるだけでなく、基調的な動きとしてゼロ%以上であると判断できることが必要である(具体的には数か月均してみて確認する)。

  2. 消費者物価指数の前年比上昇率が、先行き再びマイナスとなると見込まれないことが必要である。この点は、「展望レポート」における記述や政策委員の見通し等により、明らかにしていくこととする。具体的には、政策委員の多くが、見通し期間において、消費者物価指数の前年比上昇率がゼロ%を超える見通しを有していることが必要である。

  3. こうした条件は必要条件であって、これが満たされたとしても、経済・物価情勢によっては、量的緩和政策を継続することが適当であると判断する場合も考えられる。



◆記事3:金融政策、失敗を恐れてばかりはいられない=日銀総裁(ロイター) - 2月24日

福井日銀総裁は、24日午前の衆院財務金融委員会で、金融政策は失敗を恐れてばかりはいられないと述べた。小沢鋭仁委員(民主)の質問に答えた。

福井総裁は「失敗を恐れてばかりはいられないところがある。政策は、先行きの情勢を読みながら行っていくため、リスクを取って政策行動していく」と述べた。

ただ、総裁は、失敗を恐れず、何でもやるというわけではないとし「日々真剣勝負で、合議制で責任をまっとうする」と述べた。

(後略。こちらに記事全文


◆コメント:日銀総裁ほど責任の重い仕事も珍しい。

作家・評論家などがたまに、「たかがカネの話ではないか」と分かったようなことを書いているのを目にする。確かに、人間は「カネの為に」生きているのではない。
が、現実に貨幣経済を採用している以上、通貨の流通を監視し、金融システムの安定を図り、物価を安定させるように金融政策を立案・実行する高度に専門的な知識を持つスペシャリストが、絶対に必要である。


◆福井総裁は首尾一貫しているのである。

福井総裁は紛れもなくプロである。

日銀総裁に就任したのは2003年3月だったが、就任当時に日銀が既に採用していた、量的緩和策を一層推し進めた。

量的緩和策とは何か、については、昨年11月25日の記事や、

今年1月5日の記事、「日経平均終値、1万6400円台回復…5年3か月ぶり」←ヤバいですねー。を読んでいただくと、概ねお分かりいただけると思う。

日銀は2001年から量的緩和策を実施していたのだが、どういう条件が続く限り量的緩和策を続けるのか、はっきりさせている。

それは、2003年、日銀の展望レポート金融政策の透明性の強化について に書いてある。その部分を抜粋したのが、記事2である。

日本銀行は毎月、2回、金融政策決定会合を開く。その構成員は、総裁、副総裁2名、審議委員6名の計9名からなる。

ここに、全員の氏名とプロフィールが掲載されている。

その議事内容も全て日本銀行のサイトに掲載される。
また、総裁、副総裁、各審議委員は、日本各地に招かれて経済に係る講演を行うが、それらも同サイト上で公表される。

特に日銀総裁の会見(金融政策決定会合の後に毎回行われる)では、福井総裁の就任当時からの全会見要旨を読むことが出来る。

毎回、大変長いものだが、これは、記者の質問に、福井総裁が大変、丁寧に、なるべく一般国民にも分かるように答えているからだ。

非常に明晰で、毎回経済学の講義を読んでいるような気になる。


◆今日の「量的緩和の解除」は2003年10月の約束を守ったのだ。

全て読む人はいないだろうが、過去からの福井総裁の発言をウォッチしている人々にとって、今日、日銀が「量的緩和策」を解除したことは、意外でも何でもない。



それは、記事2に載っている「量的緩和を続ける条件」が、ここ数ヶ月の消費者物価指数の上昇など(それは条件1を満たすだけだが)により、実態経済に当てはまらなくなってきたからである。

さらに、「量的緩和策」の目的はデフレ脱却だけではなく、「金融システムの安定」を図るためであった。

デフレ不況下では大量の不良債権を抱えた銀行の経営が不安定で、システミック・リスクがあったからだ。



システミックリスクとは、各金融機関は全体として巨大な決済システムになっていて、A銀行のお金が足りなくなると、その日、A銀行から振り込まれる資金を見込んでいたB銀行のお金が足りなくなり、B銀行のC銀行に対する支払ができなくなり・・・と言う具合にドミノ倒し状に連鎖的に金融機関が資金不足となり、正常な業務を営めなくなるリスクである。

そうなったら、大変だ。一般国民は、公共料金の自動引落し、クレジットカードの決済が出来なくなる。大パニックになってしまう。

これを回避するために、福井総裁は、日銀に各金融機関がお金を預けている「日銀当座預金」の残高を、普通なら、全体で6兆円ぐらいだが、30〜35兆円というものすごい量に保った。

このおかげで「日本でシステミックリスクの心配は有りません。」ということを内外の金融機関及びその利用者が認識した。

同時に、これは、市中に出回る通貨供給量を増やし、デフレの進行を徐々に食い止めた(その理屈も、昨年11月25日の記事に書いたのでご覧下さい)。


◆今は、それほどの流動性資金を日銀当座預金に常時確保する必要が無いのだ。

現在では、金融機関は安定しているので、これほど大量の日銀当座預金残高を置いておく必要がない。

また、あまり大量のおカネが市中に出回っていると、「通貨供給量が物価変動要因だ」とするマネタリズムの立場で考えると、何かの拍子にすごいインフレになりかねない。

インフレになってから手を打っても遅い。福井総裁が述べているように、金融政策は一歩先を読まなければならない

福井総裁を初めとする「金融決定会合」のメンバーは、これ以上、量的緩和を続けると危ない、と考えたのだろう。


◆金融政策担当者が抱えるものすごいプレッシャー。

日銀は、何年も前から「量的緩和の解除=金融引き締め、ではない」と云っているのだ。

しかし、バカな政治家どもは何かと日本銀行及び福井総裁にプレッシャー(殆ど、「脅迫」)をかけて、「量的緩和策の解除はまだ早い」と言い続けた。

特に与党。甚だしいのは、こんな調子だ。自民党、中川政調会長。

◆記事:<中川政調会長>量的緩和解除目指す日銀の動きをけん制(毎日新聞) 2005年11月13日

自民党の中川政調会長は13日、日銀による金融量的緩和政策の解除について「日銀は政策目標での独立性はなく、政権と合致させる責任がある」と指摘。

そのうえで「どうしたらデフレを脱却できるかを考えて量的緩和の議論をすべきだ」と述べ、量的緩和解除を目指す動きをけん制した。

よく言うよ。量的緩和策を解除しないでインフレになったら、どうせ日銀の所為にするのだ。

ろくに経済指標の分析も出来ない素人が、何を言うか。

また、中央銀行の独立性を認めない先進国がどこにあるか。金融政策までも「政争の具」にしようとする愚かさ。問題外のバカ。

福井総裁はこんな雑魚(ざこ)は気にかけていないだろうが、そんなこととは無関係に、現在、上昇基調にある消費者物価指数が、また下落を始めることが「絶対にない」とは、言い切れない。

そのときは、たとえそれが、日銀の金融政策とは無関係であっても、自分の所為にされてしまうし、東京株式市場が大暴落でもしようものなら、連鎖的に世界中の株が暴落する可能性も高いのである。

そうしたら世界中の非難を浴びる。想像を絶する責任の重さだ。それを、百も承知で本日の決定を下したのである。

記事3を見て下さい。並大抵の覚悟ではない。

極めて高度な金融と金融政策に係る知識と見識と経験に基づく信念によるものである。政治家でここまで思い責任を取る覚悟をしている者は居ない。

福井日銀総裁は立派だ。

因みに2004年2月、英国の経済誌"The Economist"が、「世界一優秀な中央銀行総裁」と福井総裁を評価している。


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