外国為替証拠金取引
JIROの独断的日記
DiaryINDEXpastwill


2005年10月04日(火) カネボウ粉飾:起訴の公認会計士ら、売却先分散などを指導 会計士も辛いよなあ。

◆記事:カネボウ粉飾:起訴の公認会計士ら、売却先分散などを指導

 

 カネボウの粉飾決算事件で、証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)で起訴された中央青山監査法人の公認会計士らが、03年3月期の決算で、旧経営陣から架空売り上げについて相談された際、架空の売却先を分散させるなどの指導をしたことが分かった。粉飾決算の後で返品を受ける際にも、その時期をずらすことで不正が発覚しないよう指南しており、会計士の指導による粉飾の詳細な手口が判明した。(毎日新聞 2005年10月3日 23時30分)


◆コメント:勿論、いけないことなのですが、構造上こういうことが起きるのは目に見えている。

 

 うーん。と考え込んでしまう。はっきり言って、他にもこういうことは起きていると思う。

 「証券取引法」という法律では、証券取引所に上場している会社(この上場にも厳しい基準があるのです。東京証券取引所でYahoo!で検索して、上場基準、というところを読んでみて下さい)は、公認会計士の会計監査を受けて監査証明書を添付した有価証券報告書を、毎年決算が済んだら、内閣総理大臣に提出しなければいけない、と、定めている。

 赤字が続くと、今度は東京証券取引所が定める上場廃止基準という基準に抵触する。

 今まで、上場していた会社が上場廃止になったら、引導を渡されたようなもので、その会社の株は紙くず同然となり、株主は損害を被るわけですね。

 だから、何とか今は決算書に嘘を書いて誤魔化して、来年までに本当に黒字にして、とにかく上場廃止基準に触れないように、立て直したい。

 会計監査を行う監査法人は、当然、全てを知っている。 本当のことを発表したら、上場廃止になるのが確実だ、ということも分かっている。


◆ところが、監査を行う監査法人(公認会計士を一杯雇っている会社)にとって、監査対象は「お客さん」なのです。

 

 監査法人は、カネボウのような事業法人の帳簿に不正が無いか確かめ、監査証明書を発行し、手数料をもらって、食っている。

 監査法人は、一般企業が決算で嘘の報告をしていないか、チェックするのが仕事なのですが、問題は、監査法人は、それによって、その被監査対象の企業から受け取る監査手数料が収益源です。

 特にカネボウとかの大企業をお客として確保することは、大きな監査法人にとっては、絶対必要です。数千万円の手数料になるわけですから。

 カネボウに「赤字のこと隠して、嘘の決算書つくるけど、見なかったことにしてくれ」といわれると、社会正義上はそんなことは勿論許されないのだけど、

 監査法人も大きいお客さんを失いたくないので、つい、会社の粉飾決算を黙認してしまう。勿論いけないんですけどね。監査法人も商売だということね。

 監査法人の担当者はすごく嫌だと思うのですね。公認会計士としての使命感と、自分の現実の生活を守らねばならない、という意識の板挟みになって苦しむ。


◆りそな銀行が国有化されたときは、自殺した公認会計士が居たくらい、板挟みになるんです。

 

 話が、しばらく、逸れます。

 りそな銀行が国有化されたとき、国内業務だけを営む銀行は、自己資本比率という財務上の数字が4%以上無ければいけない(BIS規制、といいます。BISというのは、国際決済銀行という世界の銀行の総元締めみたいな組織で、そのバーゼル銀行監督委員会が、4%という基準を決め、日本もこれに従うことになっているのです)のに、足りなかったわけです。

 監査法人のりそな担当者は非常に苦しんだ。

 銀行が国有化されたら、経営陣は引責辞任しなければいけないし、従業員もうんとリストラされる。

 客観的に、問答無用で割り切れるものなら良いんです。しかし、実際には、裁量の余地があるんです。それが会計士に苦悩をもたらします。

 4%を満たしているかどうかも、絶対的判断じゃないからです。

 銀行は、不良債権を処理するために貸倒引当金をが積むと、税金を払いますが、既に支払った税金のうち、払いすぎた部分が将来戻ってくる場合があるのです。

 これを「繰り延べ税金資産」というのですが、日本では、繰り延べ税金資産自己資本に含めることが認められている。

 ただ、どれぐらい戻るか、が何とも言えないわけです。



 この部分をどの程度見積もるか。多めに見積もれば、りそなは自己資本比率4%を満たしていた。

 しかし、金融庁の監督の目が非常に厳しい。嘘をつくと、自分たち監査法人も罰せられる。

 というわけで、りそな銀行が契約している新日本監査法人という監査法人は「やっぱり。だめ。自己資本、足りない」という結論を出しました。

 監査法人としては正しいことをしているけれど、実際に銀行の担当者と日々接する公認会計士にとっては地獄です。

 銀行は、繰り延べ税金資産の参入をこれだけみとめろ、という。 勤め先の監査法人の上司は、厳密にやれ、という。

 もう、どうしたらよいか分からなくなり、会計士が1人自殺したのです。それぐらい、プレッシャーの極致みたいな仕事なのですね。


◆監査法人は、大口顧客をできるだけ、獲得しておく必要がありますね。 

 

 カネボウの監査法人、中央青山というのは、日本有数の大監査法人です。

 カネボウ以外にも当然大きなクライアント(顧客=監査させてもらう会社)がいるわけで、カネボウの逆鱗に触れて、「もう、おたくに監査は頼みません」と言われても、すぐに経営に支障を来すとは思えないのです。

 これは、大事なことです。


◆何が問題なのか?長年同じ監査法人が同じ会社の監査をするからです。

 カネボウを失っても、食うにはこまらないはずなのに、どうして粉飾決算に加担したのかといえば、お互いに長年の知り合いで、監査法人といえども情が企業の担当者に移るからだと思います。

 すると、つい、何とかしてやりたい、と考えてしまう。これが、落とし穴でした。

 だから、監査法人がインチキ決算の片棒を担がないようにするには、ある監査法人が同じ会社を長期間監査することを法律で禁じればいい。

 今日、そう言う話が確か、日経にのっていました。


◆突然、思いつきましたが、選挙も毎回選挙区を変えましょう。

 

 企業と監査法人の癒着について書いていて、思いつきました。

 国会議員は国民全体への奉仕者なのに、失礼ながら、地方ほど、「地元に利益をもたらして下さる○○先生」という基準で投票する。

 今回の落下傘はその点では違っていたけど。まあ、公明党のおかげで当選した人も多いでしょう。

 これを応用して、衆議院小選挙区は毎回くじ引きで選挙区が決まる、というやり方はどうか。

 例えば、スズキムネオ氏は今度は沖縄から立候補する。 小泉純一郎氏は横須賀だと絶対当選するから、東京18区あたりの候補者となる。

 こうすれば、皆、「国会議員は地元に貢献する人」という意識が薄れるでしょう。

 その候補者の国政に対する思想を純粋に国益に照らして、妥当かどうか判断して投票する。これこそ、利権構造をぶっ壊す、「名案」にならないかね。


2004年10月04日(月) 「米軍がファルージャ「テロ拠点」空爆、11人死亡」 女性3人、子供4人が含まれている。
2003年10月04日(土) 絶対に仕事でミスをしない唯一の方法は「何もしないこと」だ。減点法の弊害

JIRO |HomePage

My追加