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JIROの独断的日記
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2004年02月21日(土) 海老一染太郎・染之助さんとベルリン・フィル

◆芸人の厳しさ

太神楽(だいかぐら)の海老一染太郎さんが亡くなったのが、2年前の2月2日である。

染太郎・染之助さんを初めてテレビでみたときは、例の「おめでとうございます〜!」という叫び声が気になって、何と騒がしい人々かと思った。が、何度も目にするうちに、これはただものではないことがわかった。芸をするのは弟の染之助さんであるが、この人がすごいところは、本番でまず絶対に失敗しない、ということである。ああ、ベルリンフィルと同じだ、と、思った。

勿論、私は、両者について過去から現在にいたるまで、全てのステージを見たり聴いたりしたわけではない。厳密に言えば、失敗した事があるだろう。しかし、その確率は驚くほど低いはずだ。パフォーマンスにおけるミス、というのは意外に強く印象に残るもので、仮に10回に1回失敗したとしたら、観客の印象としては、「あの連中は、失敗ばかりしている」ということになり、その芸人(太神楽であれ、シンフォニー・オーケストラであれ)は、次第に客を失うであろう。

だから、客観的なデータは別として、客に「あの人(たち)は、本番で絶対に失敗しない」という印象を抱かせるのは、日頃の厳しい研鑚を無くしては、ありえない。

染太郎さんの葬儀に来ていたビートたけしが、インタビューに答えて「毎日練習をしなければ決して出来ない芸を、50年も続けている、ということを尊敬している」と謙虚に語っていた。同感である。


◆毎朝、音階練習を学生と続けた、ベルリンフィル首席トランペット奏者

ベルリンフィルの首席トランペット奏者で、ベルリン・ムジーク・ホッホ・シューレ(ベルリン高等音楽学院)の教授だった人は、毎朝、自分の弟子を集めて、全てのスケール(音階)をロングトーンで吹く、という地道な練習を欠かさなかった。

ロングトーンというのは、要するに一つの音を長く吹くことである。どんな管楽器を習っても、管楽器の練習はロングトーンに始まり、ロングトーンに終わると言っても過言ではない。

それは、そうなのだが、完全に技術が出来上がって、ベルリンフィルハーモニー首席トランペット奏者、という世界最高の地位に付いても、なお、毎朝ロングローンでスケールを吹くというのは、大変な事である。へとへとになるのだ。

しかし、このような基礎練習を継続する事が、楽器の演奏技術を維持するためには必要不可欠であることを、この先生は誰よりも良く分かっていたのであろう。いうまでもなく、この人がコンサートでミスをしたのを聴いたことが無い(トランペットの音は目立つので、ミスをするとあっという間に話が広まるのである)。


◆ここ一番、で、ミスをしない立派さ。

海老一染太郎・染之助さんも、ベルリンフィルのトランペット奏者も、要するに、「ここ一番」という大事なところで、絶対間違えない。そして、それは、強靭な精神力に支えられた、毎日の練習の成果である。当たり前のようだが、なかなかできることではない。それを実行しているのだから、立派だ。


2003年02月21日(金) 自己暗示は実際に役に立つ。

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