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JIROの独断的日記
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2004年01月24日(土) 「医療機関の立ち入り検査へ 名義貸し問題で厚労省 」←問題の根源は厚労省が定める「標準医師数」という官僚的形式主義だ。

◆記事:医療機関の立ち入り検査へ 名義貸し問題で厚労省

医学部を置く国公私立大の3分の2で、医師の「名義貸し」があったことが文部科学省の調査で分かったのを受けて、坂口力厚生労働相は23日、閣議後会見で「今後は名義を借りた方、一般の病院に対しての指導を徹底しなければならない」と述べ、厚労省として立ち入り検査の実施など、対策に乗り出すことを明らかにした。

文科省の調査は医療機関側を対象にしていないため、厚労省は地方厚生局を通して大学側に名義を借りた病院名や医師名の提出を要請する。医療法に基づく立ち入り検査の実施主体である都道府県と連携しながら、実態調査に着手し、不正が明らかになれば指導監督する。

「名義貸し」問題では2002年12月以降、緑仁会病院(岩見沢)など、北海道の5医療機関が指定取り消し処分になっている。(共同通信)[1月23日12時34分更新]


◆コメント:厚労省の医療行政上の失策を現場に押し付けるのは、汚いぞ。

始めに断っておくが、私は医療従事者ではない。反対側の患者である。医師がこの問題について指摘しても自己弁護と受け取られるだろうから、患者の私が書く。この問題は医師の倫理の問題ではない。医療行政の構造的失敗である。

「名義貸し」とは、マスコミっぽく書けば、「民間の病院が大学病院から医師の名義だけを借りて、医師数を水増しして診療報酬を請求し、不正に受給する行為」ということになろう。

では、どうして医師数を水増ししなければならないか?医療法で病院の「標準医師数」が決められているからだ。問題はそれが入院患者数と外来患者数から機械的に定められている事。しかも、医師が大勢いる都会にも、医師が不足している地方にも一律に適用されていることだ。

たとえでいえば、東京の方なら分かるだろうが、広い道路でも、さほど広くない道路でも40km制限という場所が多いでしょう?個別の事情を勘案しないでなんでも、「40km」。こういうのを官僚的形式主義というが、「標準医師数」もそんなものだ。

実際には、3人医師で十分な病院でも、医療法の計算では標準医師数が8人、というような場合があるのだ。標準医師数の半数に満たないと、診療報酬の15%を減額しなければならなくなる。それが続けば赤字になる。常勤医師を雇うと、1人当たり、1年で1500万円〜2000万円かかる。5人雇ったら、1億だ。赤字では済まない。倒産する。名義貸しだと1人あたり年間180万で済む。

名義を貸す側の大学病院は、何故、貸すのか。病院から医師を派遣してくれ、と頼まれても、地方では慢性的に医局員が不足している。医師の多くは症例数が多くて様々な経験が出来る大都会の病院勤務を希望するからだ。だから、簡単に、医局員を出せない。それに大学院生は生活保障がないから、カネはほしい。そこで、名義だけ貸して、報酬を得て、院生の生活費に充てる。

それに加えて、追い討ちをかけるようなことがある。今まで、医師の臨床研修は任意だったのが、平成16年度からは必須になる。さらに、病床数に応じて研修医の受け入れ数が制限される(どうして、そういうことをするかなあ・・・)。ということは、これまで多くの研修医を抱えていた大学病院は、その数を減らさねばならない。すると、大学病院の人手が足りなくなる。従って、民間病院に出していた医局員を引き上げざるを得なくなる。、民間病院の「標準医師数」と実際に確保できる医師数の乖離は一層広がるだろう。

厚労省は、そのような事情はずっと前から知っていたに決まっている。要約すると、


  • 厚労省が定める法律が、非現実的、確保不可能な医師数を地方の病院に要求して、今まで見直さなかったこと。
  • 医学部の大学院生の生活保障をする方策が真剣に検討されなかったこと。
  • これらの理由により、民間病院が名義を借りるメリット、と大学病院が名義を貸すメリットが合致したこと。

マスコミはやたらと医師を叩きたがり、大衆はステータスが高い職業の代表格である医師に対して潜在的に嫉妬心があるから、ここぞとばかりに医者や病院を責めたがるのだろうが、それは間違っている。問題の本質をよく見極めるべきだ。


2003年01月24日(金) 公徳心と我慢

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