与太郎文庫
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2005年11月13日(日)  にごりゑ 〜 怪しい来客 〜

 
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20051113
 
 テレビ《たけしの日本教育白書》を見ながら、まどろむ。
 黒っぽい服を着た中年男性が、親しげにたずねて来た。
「よぅよぅ」「やぁ、なつかしいなぁ」二人は親しく抱きあった。
 
 さっぱりと風呂を浴びて、むかし通ったフランス割烹の店に案内する。
 女将が、すこし老けていたが、むかしのように愛想よく迎えてくれた。
「どうぞ存分に食ってくださいよ、彼女とは夫婦以上の仲なんだから」
 
 ステーキの焦げる匂いに、われわれの胃袋も待ちこがれている。
「ところで」ふと思いついて立ちあがり、財布をたしかめようとした。
「おや?」いつも左胸の内ポケットに入れているのに、これがない。
 
「おかみ、困ったことに財布を忘れてきちゃったよ」と告げる。
 すると女将は、たちまち不機嫌になって、横を向いてしまった。
「よわったな、それじゃ今から財布を取りに走ってくらぁ」
 
「それじゃ、そうしてくださいね」こんなに無愛想な女だったかな? 
 ふとみると、多羅緒さんが、うつむいたまま呑んでいる。
「ねぇ多羅緒さん、この店の勘定だけ立替えてくれませんか?」
 
 ところが、かつてあれほど心を許しあった友人が、返事をしない。
「わかったよ、文無しの二人で、遠慮しながら食うわけにはいかない、
財布を持って出なおそう」
 
 多羅緒さんと連れだって店を出る。女将の態度も不愉快だ。
 焼きあがったステーキを、冷えたころに戻って食うのもバカらしい。
 おなじ店に戻る義務はないんじゃないか、と腹をくくった。
 
 多羅緒さんは、この事態になってから、一言も口を利かなくなった。
 あんなにざっくばらんな仲だったのに、とても意外だ。
 途中で、多羅緒さんは一軒の家をのぞきこんで、こう伝えた。
 
「こんばんは、おそくなっても帰ってくるからね」
「おや、そうかい。わかったよ」老人らしい声が返ってきた。
 多羅緒さんは、ホテルをとらずに、知りあいの家に泊まるらしい。
 
 さらに連れだって歩きながら、考えをめぐらす。
 多羅緒さんは、遠方からたずねてきたのに、宿賃もないほと落ちぶれ
ていたのだ。しかも、そんなそぶりを見せなかった。
 
 一人前の男には、さまざまの事情があるはずだ。まして落剥すれば、
語るに語れないこともあるだろう。ましてや面子もあるだろう。
 多羅緒さんは、一宿一飯をたよって、帰りの電車賃を借りにきたのだ。
 
 そうと分れば、これ以上つきあっても話すことはなさそうだ。
 多羅緒さんも気まずくて、早く別れたいはずだ。
 ならば、帰りの汽車賃をわたして、別れたほうがよさそうだ。
 
「ねぇ、多羅緒さん。あなたには事情があるんでしょう。ぼくには相談
に乗れるような力はないんだよ。だから、ほんの心づけをあげるから、
それで我慢してくれませんか」
 
 多羅緒さんは、それでも答えずに、ただただ歩いている。
 待てよ。多羅緒さんが、ここまで顔がつぶれても逃げださないのは、
よほどの覚悟があるのだ。はした金じゃ帰れない、とでも云うのかな。
 
 家に帰ったら財布はある。中に一ヶ月くらい暮せる金が入っている。
 多羅緒さんは、それを全部よこせと云うかもしれない。それは無理だ。
 女房や幼い子供の不安そうな表情と、台所の包丁が思いうかぶ。
 
 もし、多羅緒さんが豹変して、凶器を手にしたら、大変なことになる。
 二人の前を、二人の警官が歩いていたので、とっさに大声をあげた。
「おまわりさん、たすけて!」
 
 多羅緒さんの両腕を抱えこむようにしながら、助けをもとめた。
 警官がふりむく前に、みずからの声におどろいて夢がさめた。
 かつての仲間を売ろうとした自分が、われにかえったのだ。
 
 多羅緒さんという仮名は、実在しない思いつきで、数人のイメージが
混在・合成されている。実害こそなかったが、二三の実例が思いあたる。
 下記の二作品は、いまだ読んでいない。(20051112 23:30-25:30)
 
── 樋口 一葉《にごりえ 18950900 文芸倶楽部 20230825 パンローリング》
http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/B0CFYBG1K3
 
── 色川 武大《怪しい来客簿 1977 19891007 文春文庫》第5回泉鏡花文学賞
http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4167296047
 
 なぜか、ちょうど一年前にも一葉に言及している。
 ↓ 秋の一葉 〜 言及日記 〜
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20041113
 
── 《学問の秋スペシャルたけしの日本教育白書 〜 楽しくマジメに
語るこの国の大切な未来 〜 20051112(土)21:00〜23:54 フジテレビ》
◇教育をテーマに送る「学問の秋スペシャル」の第3弾。学校は本当に
必要なのか、頭がいい人とはどんな人なのか、どんな先生がいい先生な
のか。3つの疑問を軸に、教育について考える。
 米国の大学で物理・統計学を学ぶ14歳の少女を平山あやがリポート。
保田圭と丸山和也弁護士は、学校に通わず家庭でホームスクーリングを
行っている一家を訪ねる。また世間から"頭がいい"と思われている代表、
ライブドアの堀江貴文社長の頭の中をIQテストと磁気共鳴画像装置
(MRI)で徹底解剖する。ほかに司会のビートたけしと石原慎太郎東京
都知事の教育対談などを送る。/ビート・たけし/爆笑問題
/石原 慎太郎/大泉 洋/中島 知子/原 日出子/三田 寛子/横峯 良郎
/ガダルカナル・タカ/三田 紀房/尾木 直樹/西田 ひかる
/丸山 和也/保田 圭/平山 あや/西山 喜久恵/佐々木 恭子
 
作成日: 2005/11/13


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