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■ エッセイ 人生波茶滅茶
第三章 宿命の出会い 【私の恋愛&セックス論】 母が亡くなってから一年が過ぎた。 でもいつまで経っても私の胸にはポッカリと穴が開いたままだった。生きていた時は、口うるさく、毒舌な母の存在を重く煩わしく感じたりした事も有ったのだが、いざ母が居なくなって見ると、こんなにもひ弱で心細く、何も出来ぬ自分が居た。 やはり私に取って母の存在は必要不可欠だったのかも知れない。 子育ての悩みや店での悩み、日々の支払いの苦労や日常の出来事と、問題課題は山ほど抱えているのに、一緒に考えてくれる肉親も知恵を貸してくれる身内も居ず、私は松本にたった一人取り残され、天涯孤独になってしまったような、そんな孤独感を感じて居た。 私には母と言う、常に口やかましく小言を言ってくれる羅針盤が居てくれたからこそ、母親まがいの事も経営者まがいの事もかろうじて出来ていたのかも知れない。 お義父さんは母が亡くなってからは偶に電話で話す程度の存在となり、それもいつしか遠のき、この頃にはもう全くの他人だった。 何かで悩んでいても相談出来るような存在ではなかった。 やはり彼は私のお義父さんではなく、母の愛人に過ぎなかったのかも知れない・・・。 幸い、私には気の良い友人達や、店の常連客や、アルバイトの子達と言う親しい仲間が居てくれた。でもやはり、言える事には限度がある。ジョーク交じりのボヤキや愚痴は言えても、相手の気持ちが重くなるような深刻な相談まではとても言い辛い。 私は父の性質を多く受け継いだらしく、周りとは楽しい時間のみを持ちたい方だった。 当時は生きる苦痛を分かち合える恋人も居なかった。 そう言えば、いつも大抵は年下の甘えん坊からしか言い寄られた事の無い私が、この頃、一人だけ権力者と呼べる大人の男に言い寄られた事が有ったっけ・・・・・・。 彼は会社役員で、かなりの遊び人だった。 遊び人と言ってもガキの下らぬ夜遊び等ではなく、芸者遊びや料亭遊びや、本格的な料理を求め贅沢な旅行を楽しむと言うような、ハイレベルの遊び人だ。 誕生日には強請っても居ないのに必ずプレゼントをくれ、顔を見れば旅行に行こうと誘って来る。これは完全な口説きである。 顔はともかく、悪い人間ではなかったし、ユーモラスな駄々っ子だし(私は万年少年のような駄々っ子男が好きなのだ)会話や味覚的なセンスも合い、決して嫌いなタイプではなかった。 私達はジョークでこき下ろし合えるような気楽な関係で、何度か食事は共にはしたが、旅行の申し出をされた時、私は彼をアッサリと振ってしまった。 私は男に甘えられるような可愛気のある女ではないし、友情は感じられても愛情は無理だった。私は友情だけでは男とは寝られない。 例え瞬間でも愛情や情熱で心が重ならない限り、身体も又、重ねられないのだ。 後は感性、感覚、時に一種の寂しさや哀しさや、労わりなど・・・、色々な叙情が伴って、初めて男とのセックに至れる。 元々スキンシップは好きだが、セックス自体私は大して好きではない。セックスは恋に伴うオマケみたいな物だと解釈している。 私は恋愛中、その人の持つ独特な感性に強く惹かれる訳で、セックスは二の次で良い。 無論お金のための割り切った付き合いなど私に出来るはずもなく、又、その人を何れは愛せたとしても、妻やその人が築いて来た物を裏切る形になるのは後ろめたい。 なので女の武器を使い、男を手玉に取り、お金を強請ったり物を買って貰ったりしている甘え上手な女性が居ると言う事は、私には別世界の話だった。 付き合っている人が、例えお金持ちだとしても、その人を愛していれば愛している程、お金で付き合っているとは思われたくない為、三回に一回のデート費は無い袖を振りながらも私が出してしまうくらい、私は男に甘える事が下手だし、男に対し負けず嫌いなのだ。 私も恋をしている状態は大好きなので、夫だけに一筋だった訳ではない。勿論浮気はしなかった。二股を掛けるとかそんな器用な真似も出来ない。しかしこれでも、夫と知り合う前や、夫との離婚が成立してからは、幾人かの男を渡り歩いた経験もある。 ただ男に溺れる事は無く、どこか冷静だった。 私は恋をしても、子宮と心は直結しないみたいだ。 私は男に大した期待も持てない。きっとそれは手ひどい離婚もトラウマになって居たからだろう。どこかでブレーキが掛かるのだ。 男の中には本当の意味で人生に成功しており、金持ちで人間性も素晴らしく、人望も厚く、女にお金を使いながらも全く女に負担を感じさせないような完成された男も居るかも知れない。でも、そんな人間は稀であり、又、そんな男が私の事などを相手にしてくれる訳もない。 ならば付き合う男とは常に同等で居たいのだ。男女の関係に上下関係を作るのが嫌なのだ。 なまじ面倒を見て貰い、物を買って貰い、恩に着せられ、事由を縛られるのが一番嫌だ。 【誰が面倒を見てやってると思ってるんだ】などと言われたひにゃ、百年の恋も一変で冷めてしまう。 そんな男が世の中八割だろう・・・。 釣った魚に餌はやらぬタイプの男が圧倒的に多いと思う。 最初から貧乏だと解っていても、何処かに魅力的な感性を備え、威張りたがらぬ人間に、私は強く惹かれてしまうのだ。 それ故、いつも経済的に頼れぬ男ばかりを選んでしまうようだ・・・・・・。
続く
2006年12月11日(月)
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