マキュキュのからくり日記
マキュキュ


 【愛猫エッセイ】又もう一つの死


つい先日、仕事に出ようと車を走らせたら、前方の車たちが何かをよけている。

車道の隅に猫の屍が転がっていたのだ。
車を停めて見て見ると、ノラのブチである。
そう・・・、この秋生まれた2匹の赤ちゃん猫の母親だ。
2匹の仔猫を連れ、よく家の庭で遊んでいた、あの臆病者のブチ・・・・・・。
物陰からそっと、我が子がじゃれる姿を見守っていた、あのブチ・・・・・・。
最後まで人には懐かず、私が近寄ると威嚇して逃げてしまうのだが、私は時折、ミュウーの餌を小皿に移しては、母子の放浪猫たちに内所で与えていたのである。

病死だろうか・・・交通事故死だろうか・・・・・・。
外傷は見当たらず、綺麗な屍では有ったが、私は物凄く胸が痛んだ。
本当ならば今の内に何処かに埋めてやりたい所だが、時間が無い・・・・・・。
仕方なく市役所に電話を掛け、処分してもらう事にしたのだ。

「どうか、あのままでは車に引かれてしまいます。あまりにも可愛そうなので早く処理してやってください・・・」

それだけを言うと、私は後ろ髪を引かれる思いで、車を走らせた。
仕事中もしきりにその事が頭を離れなかった。
泣き出しそうになるのを必死に堪えながら、仕事をした。

恐る恐る仕事の帰りに見てみたら、ちゃんと処理が施されてあった。
何の跡形も無かったのは、少し私を安心させた。
きっと病で倒れたのだ。
綺麗なままで、葬られたのだ。
せめてそう思うことにした。

それから暫くの間、母親を探しながら狂ったように泣き叫ぶ、仔猫の声だけが聞こえていたが、その度に心が痛み、飛び出してはみるのだが仔猫の姿は見当たらなかった。
最近ではその声もしなくなってしまった・・・・・・。

2匹の仔猫たちはどうしているのだろう・・・・・・。
あの子達は母親の死を知っているのだろうか・・・・・。
ちゃんと何処かで餌を確保し、生きているのだろうか・・・・・・。
ミュウーやタロウチャンが怖いのか、家の庭には現れなくなってしまったのだ。

まだまだ小さな仔猫達。
そんな幼い仔猫を残して逝った母猫は、さぞや無念だったろう・・・・・・・。

これからの松本は、とても寒くなる。
2匹の仔猫が仲良く、何処かで無事に生きている事を願わざるを得ない。

何か、とても辛い・・・・・・。


今日の一首

寒空に 虚しく倒る 屍よ
我が子を残し さぞ辛かろに




2003年10月29日(水)

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