長渕剛 桜島ライブに行こう!



くやしさ、はね返しましたか? (桜島ライブ41)

2004年10月14日(木)

『くやしさ、はね返しましたか?』−桜島ライブ(41)

                 text  桜島”オール”内藤





2週間かけて、東京から鹿児島まで、
ママチャリでたどり着いた、山内さんの記事。


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M-28 巡恋歌  −アルバム『風は南から』(1979)−



『Myself』が終わり、
剛は再びギターとハーモニカをセット。

「さっきはこっち向いたから・・・
 今度はこっち!」


僕のところからは見えませんが、
どうやら、剛は、センターステージで、
一曲ごとに向きを変えて歌っているようでした。
剛が顔を向けた方向と思われる観客が、
ワーワーと歓声を上げているのが、
マイクを通して聞こえました。

「この歌はデビュー以来、
 ずっと歌いつづけてきた。
 今日、歌わずして、どうする?
 という歌だな。」


そんな剛の前口上に該当する歌といったら、
思い当たる歌は、あれしかない!

ハーモニカを吹き鳴らしながら、
即興で「最高の夜だねーっ!」
と歌った剛が、かき鳴らしたのは・・・

来たぞ! 来たぞ!
お待ちかね、『巡恋歌』!

何回聴いても、
何回聴いても、
そのぶっといアコギのストロークと、
憂いを帯びたハープのメロディには、
鳥肌、鳥肌、鳥肌だ!


好きです 好きです 心から
愛していますよと
甘い言葉の裏には 
ひとり暮らしの寂しさがあった



瞬時に、瞬時に、大合唱!
『Myself』を上回る、その合唱率のものスゴさ。
デビュー以来、歌い続けてきたこの曲を演奏したことは、
センターステージに近い後方ブロックへの最高のプレゼント。


だから私の恋はいつも・・・ヘイ! 


そう、ここは長年、僕らのパート。
僕らが歌わずして、誰が歌う!


巡り、巡って、振り出しよ!
いつまで、たっても、恋の矢は、
あなたの胸には刺さらないーっ!



特に剛のファンになったころのライブでは、
『巡恋歌』はほんとうに楽しみでした。
それを剛もわかっていて、

「お待ちかね、行くぞ、お待ちかね。」

と言ってから、演奏することが多かったなあ。
そんな大好きな曲、『巡恋歌』。

僕が『巡恋歌』が好きだと言うと、
ちょっと音楽をたくさん聴いている友人の中には何人か、

「え〜、あんな女々しい歌があ?」

と言う人がいたんだよ・・・。

そういう友人には、
『LIVE'98』に収録されている『巡恋歌』を聴かせたり、
「夜のヒットスタジオ」で演奏した『巡恋歌』を見せてやりました。

僕はそんなことを思い出しながら、
いつも以上に気持ちよく、大声で『巡恋歌』を歌いまくりました。

思えば、この『巡恋歌』は、
1979年篠島で行われた吉田拓郎のオールナイトライブに、
ゲストで出演した剛が最後に歌った曲でした。

このときの模様は、剛の自伝『俺らの旅はハイウェイ』で、
詳しく紹介されていますが、絶版の本ということもあるので、
要点だけ紹介します。

まずは、当時の吉田拓郎のライブの雰囲気ですが、
かなり「硬派」だったそうです。

ちょうど、今、剛のライブの客層が、
浜崎あゆみやミスチルのライブの客層に比べて、
硬派な感じで恐い、と言われているように、
当時の拓郎のライブは、時代もあってか、
バリバリに硬派なファンが相当数いたようです。
軟派な歌でも歌おうものなら、かなりきつい野次が飛んだとのこと。

そんな拓郎のライブの中でも極めつけのオールナイトライブに、
な、なんと、剛はデビュー直後に出演。
なかなか立ち直れないほどの、手痛い洗礼を浴びたのは有名な話。

まあ、これも運命といいますか、
時を越えての桜島ライブの伏線といいますか、
よりによって、剛の出番は、拓郎の弾き語りのあと!
これ以上ない、きつい順番でした。
まさに桜島ライブのときの剛のごとく、
脂の乗り切った拓郎の弾き語りで、観客は興奮のるつぼ。

その興奮冷めやらない中、剛はあえて裸足で登場。
本の中で、足はガクガクだった、と告白しています。

サラサラヘアーで、きれいな声、きゃしゃな体の剛が、
そんな野太い声の男たちの群集の前に出ていったのですから、
それこそ、ひとたまりもありません。

帰れコールを浴び、野次が飛び交い、
騒然としたムードで剛は理性を失い、

「俺のファンだって来てるんだ、バカヤロー!」

「帰れって言うんなら、テメエが帰れ!」


と逆上・・・。
それでも、なんとか最後の『巡恋歌』まで歌ったのでした。

トラウマになるほどの試練と、本人が後に語っていたように、
ボロボロの心理状態で歌った『巡恋歌』が、
それから25年の時を経て再び、
オールナイトライブの観客の前で歌われていました。

場所は、篠島と同じ「島」。桜島だ。
見守る観衆は、篠島の2万人を遥かに越える7万5千。

かつては野次の中、くやしさを噛み締めて歌われた『巡恋歌』。
時代は巡り巡って、とてつもない大合唱に包まれている。

かつては足がふるえた剛も、
『巡恋歌』のラストを飾る、超高速ストロークによって、
大観衆を興奮の渦に叩き込む!
圧巻、まさしく圧巻!
僕の心臓をガリガリ掻きむしるコードストローク!

はたして剛の脳裏には、
あの、野次に我を失った篠島の記憶は残っているのでしょうか。
ひょっとしたら、もう忘れてしまっているかもしれません。
そんなものは、とっくの昔に越えてきたはずですから。

でも、あのときの記憶は、
きっと深い意識の底で、剛を導いていたのだと思います。
この、桜島へと・・・・

この『巡恋歌』の日記の最後に、
剛の本、『俺らの旅はハイウェイ』から、
桜島ライブの源流と思われる部分を引用したいと思います。


それからしばらくの間、
篠島のことばかり考えていた。
考えるたびに落ち込んで、
そのうち吉田拓郎という男に対する
強烈な嫉妬心を覚えはじめた。

自分一人のために、
あんな不便な所にまでやってきてくれる
二万人ものファンをもっている男を、
俺は本気で嫉妬していた。


(長渕剛著 『俺らの旅はハイウェイ』より)


離島という、不便な場所でのライブに2万人を動員した、
スーパースター吉田拓郎に本気で嫉妬していたという、
長渕剛というフォークシンガーが、

もしも、

自分一人のために、
あんなところにまで日本中から集まってくる、
7万5千人のファンを持つ男がいると聞いたら、
いったいどれほど激しく嫉妬するんだろうか?

ねえ、剛、どう思う?



続く



<次回予告>
歌わなければならない歌の最後は、
桜島の上空に向けて歌われました。
天国で微笑む、大切な人に向けて・・・。
静かに見守る7万5千人と共に、
桜島のコオロギも聴いていたのかも・・・。

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