長渕剛 桜島ライブに行こう!



無数の手のひらを見ましたか? (桜島ライブ40)

2004年10月12日(火)

『無数の手のひらを見ましたか?』−桜島ライブ(40)

                 text  桜島”オール”内藤





あの時期、日本一熱かった新聞、南日本新聞。
まずは急ピッチで進む会場設営の模様を報じた紙面。
僕のいたブロックは2000人いたようだけど、中には500人のブロックも。


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M-27 Myself  −アルバム『JEEP』(1990)−



胸に迫る『気張いやんせ』で、
僕の気分は第2部の最高潮を迎えていました。
ほとんどすべての歌が素晴らしい。
何度も押し寄せてくる感動の波に、溺れそうな僕でした。

「どうしても歌いたい歌があるんだ。
 一緒に、歌ってくれる?」


と剛。

言われるまでもない!もちろん歌う!
これまでだって、ずっと歌いっぱなし!

どうしても歌いたいと剛が言うように、
第2部、センターステージで演奏されたのは、
そんな、大切な歌ばっかりでした。
桜島に捨て曲なんて、あるはずがない。
それでも、中には、
腐れ縁とも言える、切っても切れない歌があります。

「声があ、かれるまでえ、
歌ってくれるう!?」


苦しそうな表情を作り、
無理矢理ガラガラの声を作って、
剛はそう言って、再び観客に激を飛ばしました。

そして珍しく、剛は歌う前に、
曲名を紹介しました。

「Myselfって歌、知ってる?
 Myself、歌います!」


剛のその声がスピーカーを通して、
僕のいるAブロックにも届きました。

「うわーっ!
 こっちで聴きたかったなあ!」


誰かがいかにも残念そうに、
そう声を上げました。

ほんと、もっともだ!
とばかりに、笑い声が起きました。

そうです。
これまた、剛ファンなら誰もが愛する歌。

孤独へのレクイエム、『Myself』!

あの優しいイントロ。
剛の歌の中でも、屈指の美しさと優しさの、
『Myself』のメロディが、
真夜中のけだるさを洗い流すように、
僕らの上から降り注いでいました。


人ごみに紛れると なおさら涙が出るから
やっぱりひとりに なろうとした
それでも寂しくて 涙が出たから
俺ははじめて ほんとうの友を探した



いったい何度、この歌をつぶやきながら、
家路についたことだろう。
一日を終え、夜道をとぼとぼ歩くとき、
ふと思いがけず、この歌をつぶやいてしまうのです。


やりたいことと やりたくねえこととが
思いどおりに 行かなくて
夢はなんですかと 聞かれることが
この世でいちばん 恐く思えた



剛が歌い始めると同時に、
Aブロックからも歌声が沸き起こりました。
もちろん僕も、他のブロックもそうだったでしょう。
会場にいる、全員が歌っているような気さえしました。


だから まっすぐ まっすぐ
もっと まっすぐ 生きてえ
恥ずかしそうにしてる おまえが好きだ
だから まっすぐ まっすぐ
もっと まっすぐ 生きてえ
寂しさに涙するのは おまえだけじゃねえ



間奏で、拍手が沸き起こっていました。
僕も力いっぱい、拍手をしました。
ライブで『Myself』を聴くと、
なぜか、いつも、拍手をしてしまうのです。

剛ファンなら、
誰もが孤独を持っている。
誰もが挫折を持っている。
僕はそう思っています。

都会の雑踏の中で、孤独を感じたことはありませんか?

集団に溶け込めずに、悩んだことはありませんか?

一番欲しいものは、ほんとうの友達ではありませんか?

かなえる以前に、夢を見つけたいのではありませんか?

もしも、そんな問いかけにいくつか、
思い当たることがあるのなら、
『Myself』は、
そうだよね。そうなんだよね。
でも寂しいのはキミだけじゃない、俺もそうなんだ。
と歌ってくれるのだと思います。

この歌は、まるで剛のようだ。
意思が強く、潔くて、熱い男。
そんな強い剛の背中に張りついている、もうひとりの剛。
女々しくて、暗くて、辛気臭い男。
むしろ、それこそが、ほんとうの剛なのでしょう。
だからこの歌は、自分自身、”Myself”なのでしょう。


だから まっすぐ まっすぐ
もっと まっすぐ 生きてえ
恥ずかしそうにしてる おまえが好きだ
だから まっすぐ まっすぐ
もっと まっすぐ 生きてえ
寂しさに涙するのは おまえだけじゃねえ



何度も繰り返し歌いながら、
僕たちは、高く差し上げた両手を、
左右にゆっくりと振りました。
15万本の手のひらが、桜島の大地を埋め尽くしていました。

ぱっと開いた手のひらは、
無防備に、すべてをさらけ出して、
きれいに、きれいに、揺れていました。

演奏を終えた剛自身も、満足げに拍手を送っていました。
合唱して、笑顔で拍手をする。
『Myself』のあとは、いつもこうなるのはなぜだろう。

僕もいつまでも、いつまでも拍手を送りました。
それは、剛に向けての拍手でもあり、
歌に向けての拍手でもあり、
観客たちに向けての拍手でもありました。

そして、もうひとつ、
自分自身へ向けての、祈りの拍手でした。

寂しくても、思うどおりにいかなくても、
どうか、まっすぐ、生きられますようにと・・・




続く



<次回予告>
もしも、もしも、これをやらなかったら、
「おい、剛、一曲、忘れてるよ!」
と文句をつけたくなるような、歌がある。
最強のデビュー曲、センターステージに光臨だ!

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