長渕剛 桜島ライブに行こう!



雨どいの雫を見つめたことがありますか? (桜島ライブ38)

2004年10月10日(日)

『雨どいの雫を見つめたことがありますか?』 −桜島ライブ(38)

                 text  桜島”オール”内藤





日刊スポーツも二日に渡って掲載。これは22日掲載分。
開演前の会場の様子。
ヘリはこういう写真も撮ってマスコミに送っていたのですね。


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M-25 いつかの少年 −アルバム『昭和』(1989)−



思えば、どんなに声を張り上げようと、
桜島の大地と空にやんわりと吸収されてしまい、
剛に届くような気はまったくしませんでした。
それはライブが始まったときから感じていたことです。

ひとつだけ、桜島ライブで予想を下回ることがあったとしたら、
それは、観客の声援の爆発力でした。
ほんの一ヶ月前にZEPP TOKYOで、
暴力的とも言えるパワーを感じていただけに、
物足りないなんてことはない、と言ったら嘘になります。

しかし、それは密閉されたライブハウスの小さな空間と、
桜島のオープンエアーの差なのだと自分に言い聞かせていました。
けして、観客がおとなしいわけではないのだと。
第2部のこの瞬間まで、そう思っていたのです。

それが、剛の言葉で揺らぎました。

剛と言えば、百戦錬磨のライブアーチスト。
25年に渡り、無数の公演をこなしてきました。
その剛が物足りなさを感じたとしたら、
そこには、空間のドでかさといった問題じゃなくて、
確かな熱量の物足りなさがあるのだと思います。

剛の激を聞いた瞬間、僕が凍てつき立ちすくんだのは、
予想していたような熱い声援が起こらないことから、
剛が気を悪くするのではないかと恐れたからでした。

剛には、この桜島ライブの間中、
ずっとハッピーでいて欲しいと思いました。
どんなに肉体的に追い込まれようと。
気持ちだけはハッピーでいて欲しい。

剛がハッピーなら、僕らもハッピーになれる。
桜島ライブは、最高のエンディングを迎えられる・・・
一方、剛が観客に落胆し、その剛を見て観客も落胆する・・・
これは、考えたくもない、最悪のシナリオです。

けして、ありえない話ではないのです。
僕は観客を前にして我を失ない、
錯乱状態になったアーチストを何人も見ているからです。
もともと、激情型の剛だけに、
第2部のいいムードに水を差すような事態を恐れました。

僕を立ちすくませた激に続いて、
剛が観客をあおる声が、
スピーカー越しに聞こえてきました。
それに応えるように、A−5ブロックでも、
ツヨシコールが沸き起こりました。

ぜったいに届かないとわかっていても、
剛、心配するな!俺たちは、いつも応援しているぜ!
という気持ちがコールを叫ばせていたのだと思います。

サブステージはどうだったのか・・・
それは残念ながら、
あまりにも遠すぎてうかがい知ることはできません。、
少なくとも、スピーカーが拾った音からは、
はっきりとしたコールは聞こえてきませんでした。

僕の胸の中で、ますます不安が大きくなりました。
そうかと言って、何をすることもできません。

ふたたび静寂の時間が流れていました。
僕は振り返り、スクリーンで剛の様子を確かめました。
スクリーンの中の剛は、観客をあおるのをやめて、
ハーモニカをセットし、ギターの音を確かめていました。

自らの思い描く観客の熱量と現実のあいだに、
もしも本当にギャップがあったとしたら、
そのど真ん中、7万5千人のど真ん中、
センターステージに立ちはだかり、
剛ができることはたったひとつ。
歌うことだ。


俺に とって 鹿児島は いつも
泣いてた・・・



避けては通れぬ、『いつかの少年』!

剛ファンなら誰もが一目おく、代表曲の登場に、
「うぉーーっ!」
と、ひときわ大きな感嘆の声!


ひ弱で 不親切で 邪険な街だった
親父とお袋は泥にまみれ 銭をうらやみ
そのど真ん中で 俺は うち震えていた



遠い昔、ここ、鹿児島での暮らし。
そのど真ん中で打ち震えていた少年は、
東京でのた打ち回りながら成長し、巨大になって、
出会った友人たちを連れて故郷の地に戻ってきた。
その数、7万5千人。
そのど真ん中で歌う『いつかの少年』。
愛憎交じり合う、悲壮な歌詞。
故郷の喉笛に刃物のきっさきを突きつける。


ごうごうと不安が立ち昇る 棲み家を
凍える風が 暮らしをすり抜けていった
雨どいを伝う雫を見るのが たまらなく嫌だった
逃げ出したくて 思いをかきむしるだけだった



どうだろう、この漆黒の歌詞とメロディ。
思わず目をそらしたくなるような人間のリアル。
そんな、モノクロフィルムのような歌なのに、
なんだ、この求心力は!

遥か彼方、スポットライトが集まる、センターステージに、
僕の意識はグイグイと惹き込まれて行きました。
遠いサブステージ。
僕の視界の右上、暗闇の中に桜島はそびえ立っていました。
桜島も『いつかの少年』に聞き耳を立てているような気がしました。
みじろぎもせず、悠然とその大きな体をたたえて・・・


俺の人生は どこから始まり
いったいどこで 終わってしまうんだろう
突き動かされる あのときのまま
そう いつかの少年みたいに



ふたたび桜島に静寂が訪れる中、
『いつかの少年』を歌いきった剛を目の前にして、
ようやく実感が沸いてきたのでしょうか。

剛のマイクが拾い、スピーカーを通じて、
僕の耳にも届いてきました。

センターステージ周辺の、
ツヨシコールの声援が・・・




続く



<次回予告>
桜島ライブの降り返し地点、センターステージは、
歌わなければならない歌の、オンパレードか?
一度どま、け死ん限い、気張るなら、
剛!それは、今、今、今しかないぞ!

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