長渕剛 桜島ライブに行こう!



勇気の花になりましたか? (桜島ライブ12)

2004年09月06日(月)

『勇気の花になりましたか?』−桜島ライブ(12)

                 text  桜島”オール”内藤




ツアーグッズのバスタオル。
タオルとして使う気にはなかなかならない立派な作り。


★長渕剛 桜島ライブに行こう!バックナンバー ←クリック

=====================================================


M-1 勇気の花 −アルバム『空 SORA』(2001)−



桜島の一曲目は何か?
その話題で何度、話をしたことでしょう。

あるときは
「やっぱり『巡恋歌』かなあ・・・

またあるときは
「『桜島』で、ドカーンと始めるかも・・・」

そのまたあるときは
「無難に『とんぼ』もありかな・・・」

ZEPP後には
「順当に考えれば『勇気の花』だよね・・・」

逡巡すること限りなく、
20日の夜にもホテルでさんざん議論しました。
そして、その一曲目のイントロのリズムを刻む、
ドラムソロが鳴り響く中、
まさしく一曲目直前、僕が抱いていた予想。

『明日に向かって』

やっぱり、なんといっても、明日に向かうわけだから。
オールナイトライブだし。、
ドカーンと盛り上がること間違いなし、
我ながら、なかなかの予想と思っていました。

ちなみに友人の予想は、

『情熱』

その理由は、
「新しい曲で始めることで、
 古い曲に頼る必要がない、
 俺は今の力で桜島ライブの口火を切る!
 ということをアピールするためだよ。」
とのこと。

負けた方が、22日夜、
しゃぶしゃぶ食べ放題おごり!
ということになっていました。
(両者ハズレで実現せず)

そんな何ヶ月にも渡る謎が解ける瞬間が迫っていました。
目の前には、ギターをぶら下げ、
マイクスタンドの前に立った剛がいるのです。
ドラムは8ビートのリズムを刻み続けていました。

それにしても、なんと素直にノレること。
自分で自分が不思議でした。
普通のツアーのときには、
こんなにはじけることはありません。
やっぱり、「場」というのは重要なポイント。

ほとんど異国という感じの、桜島という場所、
苦労してやってきたという特別性、
右を向いても、左を向いても、
前も後ろも、どこだって非日常。
なんどもくどいけど、ここは「島」だ。
この雄大な南の島を、この日は剛と僕らで貸しきって、
朝まで歌うというんだから、
もう、これが夢だったとしても、
納得するしかない、ってくらいの夢のような状況。

ちょっと極端かもしれないけれど、
被っていた人間の皮を引き裂いて、
自分が野生動物になったような、
そんな気さえするほど、興奮していました。

「ヘイ!ヘイ!ヘイ!ヘイ!」

一晩中続くんだぞ、
セーブしなくていいのか、自分!
隣の友人が、
オイオイ・・・
という表情でチラッと僕を見る。
ほっといてくれ!
ていうか、お前も来い!
もう、準備オッケー、いつでもこい状態。
さあ、さあ、何を出す?剛!

しかし、そんなもんじゃ足りないぜとばかりに、
剛が叫びました。

「もっと、
 来やがれええーーっ!」


その声を合図に、一段階、声援のボリュームが上がりました。
そして、一曲目の主旋律が、
特効の爆音と共に流れ始めました。

『勇気の花』

曲名が明らかになり、ますます盛り上がる客席。
まさしく最高潮の観客席の中で・・・


正直に告白します。


わずかながら、僕は、

落胆の気持ちを抱いていました。


『勇気の花』・・・
アルバム『空−SORA−』の中で、飛びぬけて素晴らしい曲。
はっきり言って、大好きな曲です。
それにも関わらず、あのとき、
待ちに待った桜島ライブの一曲目だというのに、
僕の中に確かに存在していた小さな落胆。

その理由は、この一点でした。

ZEPPのライブと同じ一曲目だった、
ということ。


いろいろあった予想の中で、
前夜祭であるZEPPと同じ一曲目、との予想は、
一番つまらない予想に思えました。

そりゃあ、普通に考えれば、
事実上の公開リハーサルである、
ZEPPの一曲目、
それが桜島の一曲目である可能性はすこぶる高い。

だけど、だけど・・・
記念すべき、という言葉では足りないくらい、
特別な、二度とないライブだからこそ、
ZEPPに来たファンでも、オーッ、そう来たか!
と思わせて欲しいと思いました。
あれはあれで、ひとつのライブ。
桜島では、さらにひねったものを見せて欲しいと思いました。

ああ、だからZEPPのライブはやらなければよかったんだ。
もし、あのライブがなかったら、
この『勇気の花』でどんなにか感動したことだろう・・・。

拳を振り上げ、ヘイ!ヘイ!と叫びながらも、
頭の中では、そんなことを考えていたのです。

やがて、剛がマイクに向かって歌い出しました。

嘘くせえ 理不尽 
ごたくたれっぱなしの人の世で
ちぎれた 絆を食い散らかした 
青春 たちよ


どうしてだろう・・・
剛はどうして、この曲を選んだのか。
僕はこのとき、うつろな頭で、その理由を探していました。

でっかい 勇気の花は 
きみの 過去の栄光なのか
たとえ すっぱい 雨風に打たれても 
咲かせてきたのに


『勇気の花』の歌詞の中でもサビと並んで特に印象的な、
勇気の花は過去の栄光なのか・・・
の部分を剛が歌っていました。
コーラスの「Wooo・・・」が、
美しいハーモニーを奏でていました。

そして、この歌は、
この過去の栄光になりつつある勇気の花を、
もういちどでっかく咲かせてやれと歌うのです。

でっかい勇気の花
もう一度 咲かせてやれ
でっかい勇気の花
今こそ 咲かせてやれ


サビの部分を剛に合わせて歌いながら、
僕はこの歌を初めて聞いた頃のことを思い出していました。
(剛の曲をライブで聴くときの、僕の癖のひとつ)

2001年の夏。発売してしばらくしてから、
アルバムを手にして、一曲目でこの歌を聞きました。
暑い、暑い、夏でした。
まるで、今年の夏の暑さのように・・・

それから、「空−SORA−」ツアーがあって、
翌年、桜島ライブをやるって、剛が言ったんだよなあ・・・

そのとき、はっ、と思いました。

2002年に発表したってことは、最短でも、その半年以上前に、
桜島ライブの案が出ていたはず。
と、いうことは、おそらく、
アルバム『空−SORA−』の製作中、あるいはリリース後に、
桜島ライブというアイデアが生まれた可能性が高い。

思いつきと言えば、単なる思いつきに過ぎません。
しかし、僕はこのとき、
間奏で早くも汗を飛び散らせながら、
ハーモニカを吹き鳴らす剛の姿を追いながら、
かなり強い確信と共に、思いました。

もう一度咲かせてやれ、と歌った、
剛の勇気の花・・・
それは、この桜島ライブじゃないか?


剛は、そのとき考えていることを、そのまま歌にする。
剛は「きみの過去の栄光なのか」と歌っているけど、
あれは自分に向けての言葉だと僕は思っています。
だから、『勇気の花』を作ったとき、
剛は、こう考えていたと思うのです。

勇気をふりしぼって、栄光をつかんできた。
でも、それは過去の栄光に過ぎないのだろうか。
俺はもう一度、咲かせることができるだろうか?
でっかい勇気の花を咲かせることができるだろうか?

そう、自分に向かって、咲かせてやれ!と歌った歌。
それが『勇気の花』。
そして、一年後、桜島ライブを発表。

剛が2番の歌詞を歌い出した頃、
僕は勝手に確信していました。

剛の勇気の花、
今、僕も
その花になっているんじゃないか?

ここが、ここ、そのものが、
剛の勇気の花じゃないか?

でっかい、剛の勇気の花が、まさに今、
ここ桜島に、咲いているんじゃないか?


確かに、ついに始まったライブの最中、
いささかドラマチックに考え過ぎだったかもしれません。
でも、もし、こんな考えもあながち間違っていないとしたら、
これほど桜島ライブの一曲目にふさわしい曲が、
他にあるでしょうか。

落胆の感触は、落胆の感触として、
はっきり残っていましたが、
僕は十分納得していました。
「これしかない」と思っていました。
今でも、『勇気の花』以上にふさわしい、
一曲目が思いつきません。
あれが一番良かったのではないかと、
自分の落胆を棚に上げて思っているのです。

こうして長々と書いていますが、
そんなことを考えていたのは、ほんのわずかの時間でした。
『勇気の花』の後半では、
オールナイトライブの一曲目だというのに、
滝のような汗をほとばしらせて歌う剛の姿に、
僕はただただ感動していました。

剛・・・オールナイトライブの一曲目から、
剛みたいに歌うアーチストなんて、
世界中どこを探したっていやしないよ・・・

そんな僕の心のツッコミが、
剛に届くはずはありません。
滝のように吹き出る塩っ辛い汗を拭くことなく、
剛は記念すべき一曲目を歌い切りました。

でっかい勇気の花 もう一度咲かせてやれ
でっかい勇気の花 今こそ咲かせてやれ
花びらの色は 白か黒かのどっちかだ
花びらの色は 白か黒かの・・・


どおーっちかだーっ!

力いっぱい、叫びましたとも。
桜島の夜空高く。


続く


<次回予告>
サングラスを取った剛。2曲目にして時間オーバー?
興奮のあまり(?)15分に及んだ、史上最長の定番曲。

★次の日記 ←クリック

 < 過去  INDEX  未来 >


桜島 [MAIL]

My追加