長渕剛 桜島ライブに行こう!



足止めの理由を知っていますか? (桜島ライブ6)

2004年08月30日(月)

『足止めの理由を知っていますか?』−桜島ライブ(6)

                 text  桜島”オール”内藤




悪夢のグラウンドでの1時間半。
暑い、息苦しい、動かない、状況が見えない。
日が落ちて行くとともに、ライブまでの時間が迫ってくる・・・。


★長渕剛 桜島ライブに行こう!バックナンバー ←クリック

=====================================================



世の中一寸先は闇とはよくいったものです。
まさかあんなことになるとは夢にも思わず、
汗だくではありましたが、
ライブへの期待で足取りは重くない。
前日も訪れたグッズ売り場のあたりまで、
歩道は混雑しているものの、
快調なペースで会場に向けて歩いて行きました。

グッズ売り場、今日は混んでいるんだろうな・・・
と思っていると、その直前で道路が封鎖されており、
右側の方に誘導されました。
その方向の突き当たりには、リハーサルの音を聞いた、
行き止まりがある、その方向への誘導です。

きっと、入場待ちの列を作っていたグラウンドを経由して、
会場に向かうんだろう・・・

そう思って坂を登っていくと、
そのグラウンドの手前にあるグラウンドに誘導されました。
グラウンドの一角に人が密集していました。
わけがわからないのですが、とにかくその辺りに行って、
ただ立っていました。

今でもわけがわからないのですが、
いったいぜんたい、なぜ僕らはあのグラウンドに、
いなければならなかったのでしょう?

僕らのまわりにいた人たちは、全員、
会場に向かう人たちでした。
僕らと同じく、何がどうなっているのか、
まったくわかっていないようでした。

うしろを振り返ると、
どんどんと人がグラウンドに入ってきており、
やがてまったく見とおしがきかなくなりました。
要するに、フェリーから降りてきた人たちが、
グラウンドにどんどんと入ってきて、
あっという間にグラウンドを埋め尽くしたのです。

徐々に密集の度合いが高くなり、
暑い上に、人の体温でますます息苦しくなっていました。
まったく身動きが取れないほどに密集度が高まってから、
ほんとうに、嘘のような、信じられないことですが、

それからの30分間に、
僕らが進んだ距離は、
ほんの1メートルほどだったのです。


つまり、3歩しか歩いていない。
すでに時間は7時近く。
人の頭しか見えないので、
僕たちがおそらく進んでいくと思われる、
多くの人が体を向けている方向の先のほうが、
いったいどうなっているのか、
まったくわかりませんでした。

その先もずっと人が詰まっていて進まないのか、
それともなんらかの理由で、
道路が封鎖されているだけなのか、
そうだとしたら、いったい何を待っているのか、
なんの情報もないため、
なおさら、あせりの色が濃くなってきました。

まだ2キロほどの道のりが会場まではあるのです。
30分で3歩では、とうていたどりつくはずがありません。
予定では、7時から郷土芸能が始まっていると思われました。
会場には余裕でつくはずだった7時に、
僕らはなぜかグラウンドで1時間以上、立っているだけでした。

苛立ちを鎮めるために、持って行ったラジオを取り出し、
地元のFM局で7時から1時間放送していた、
剛のスペシャル番組を聴きました。
「さよなら列車」などの剛の懐かしい曲が、
僕らの置かれた状況とはまったく関係のない、
桜島周辺の道路情報などのニュースを挟みながら放送されていました。
近くの人が、

「8時になっても、このままだったら、
 全員で暴動を起こしてでも、
 突破するしかねえ」


と話していました。
確かに、8時がタイムリミットだと思いました。
そうなったら、やるしかない、と覚悟を決めました。
これだけガッチリ列が動かないということは、
流れが悪くなっているのではなく、
封鎖されているためであることは明白でした。
いったいどの辺りで止めているのか、
この時点ではまったくわかりませんでしたが、
9時のライブ開始に遅れるくらいなら、
どんな理由があろうとも、突破するしかないのです。

ようやく人のかたまりが先に進み出したのは、
7時半を過ぎてからでした。
幸いにも、すんでのところで、僕らは暴力に訴えることなく、
グラウンドを出ることができました。

状況的にはギリギリだったと思います。
本当に解放される直前、僕らはグッズ売り場前のあたりで、
最後の封鎖に会いました。
このとき、最初にグラウンドに誘導されたときに
封鎖されていた大きな道路を、
観客と思われる人たちがすり抜けているところが、
何度も見えました。

これを見て、何人かの観客は、怒声を飛ばしました。

「なんであいつら通ってんねん!
 ルールを守れ!
 お前ら(スタッフ)どうして止めねえんだよ!」

さんざん待たされたあげくに、
スタッフTシャツもなにも着ていない人たちが、
自分たちが通されなかったところを、
足早にすりぬけていくのが目の前で見えるのですから、
キレるのも無理はありません。

ひょっとしたらスタッフパスをつけていないだけ・・・
という可能性もあると思い、僕はこらえましたが、
もし、グッズのバッグを抱えて通って行くような、
明らかな観客が通り抜けていったとしたら、
ゼッタイに我慢できなかったと思います。
ルールを無視したやつらが、
ライブのほんの1時間前にやってきて、
明るいうちから身動きできずに耐えていた僕らより、
先に通って行くなんて、到底許すことはできませんから。

このような艱難辛苦に耐え、満員電車のような状態で、
足を何度も何度も踏まれ、
固いクーラーバッグを押しつけられ、
昨日買ったばかりのTシャツに泥をこすりつけられながら、
押し合いへし合い、僕らはグラウンドを出たのです。

もう、へとへとでした。
いろいろと対策を練って体力を温存してきたのに・・・
いや、温存してきてよかったのかもしれません。
そうでなければもっと疲弊していたに違いないから。

ぎっしり詰まった会場までの道を、
詰まっているだけに駆け足で進むわけにはいきませんが、
僕らは足早に会場に向かいました。
まだ1時間ある、と楽観する気分にはなりませんでした。
まだ、チケットを見せるポイントがあり、
そこでも場合によっては混雑があるかもしれないのです。
それに、横浜赤レンガでのライブのときのように、
開演ちょっと前に、剛登場の演出のために、
入場が止められるという苦い過去の経験もありました。
それに会場に入ってからも、ブロックに入るまでは、
なかなか容易ではないと予想されました。
東京ドーム3個分の敷地なのです。
僕らの入るAブロックは、入場口から一番遠い場所にあるのです。

おまけに、あれだけ長時間グラウンドで待たされ、
あまりにも暑くて水をずいぶん飲みました。
ライブの前にトイレにもゼッタイ行きたいし・・・
もう、開始前から幾多の困難が立ちふさがっているような気分です。

それにしても、なぜ、僕らはグラウンドにあれほどの長時間、
待たされつづけたのか?
その先にはグッズ売り場があるけれど、
グッズ売り場への入場を制限したいなら、
グッズを買わない観客は通してくれていいはず。
ちょっと止めるならまだ理解できるけど、
1時間半も止めたというのがなんとも不可解で・・・

いずれにしても、
リラックスした気分はまったく消し飛び、
抜き差しならない、ライブ当日の桜島。

「剛が待ってるぞー。
 泣くな、泣くな、
 たかだかそんなことで!」


ホテルを出るときにかかっていた曲名をもじって、
自分に言い聞かせるように、
友人がつぶやきました・・


続く


<次回予告>
ついに会場に到着!
かつて見たステージセットのすべてがオモチャに見える、
巨大な要塞が、桜島の暗闇の中に浮かび上がっていました。

★次の日記 ←クリック

 < 過去  INDEX  未来 >


桜島 [MAIL]

My追加