進撃が終わって

※エレンさんの肩を持つけど作者の肩は持たない方向性です。

最終話が公開されて、今までファンだった人が掌返してる印象。
私は連載中に、えっ?どういう意味かわからんな?これが面白い展開なのか?と不思議に思うことが度々あったけれど、私が知る限りの界隈の反応は「今月も地獄で参ったわーあの伏線がーあの場面の暗示がーやばいわ来月もワクワクドキドキ!」って楽しんでたじゃん。楽しんでたじゃん。
それが最終話を読んだら、ジェノサイドダメ!ポリコレがなされてない!とか言ってるの大丈夫??

私は漫画が虐殺を肯定したとしても抵抗ない。
この世の全ての芸術が平和や普遍的な幸せをモチーフにしてるわけじゃないし。
人が巨人にさせられる世界で、自分の倫理観や死生観が通用するわけないし。
自分の好きな漫画が虐殺を肯定したみたいになって終わったのがショック!という気持ちはわかる。
でもそのショックを与えるのが作者の趣味なのでは…。

人の死は報われなければならないという発想を捨てるべき漫画でしょ。
報われる道が欲しいなら、読む側が必死に探して見つけるしかない。
正直、名のある死んだキャラほぼ全員の死に方について私は「後のストーリー展開に繋げる為に事務的に殺したんだな」と思ってた。
(サシャがもろにそう。だから最終話で満足そうな笑顔だったのが個人的に気味悪い。)
場面を貰ってかっこよく死んだ!ってことが無い。少年漫画のキャラなのに。でもなんかじわじわ死んだ意味が付いてくる。
(ハンジさんのことはちょっと置いといてな!)
今となっては全てエレンが介入してた…でエレンのせいにできるけれど、作者の手法というか趣味でしょう。

私はエレミカの結末はすごくグロくて、悪趣味な愛情表現しかできないカップリングだったと思ってる。好きだけど。
始祖ユミルがエレンに求めたことも、ミカサに求めたことも、地ならしも、他民族に注射打って巨人にするのも、子供を訓練して喜んで巨人という兵器になるよう仕組むのも、巨人がもともと自分らと同じ人間だったことを知らずに戦闘して生きてたのも、全部作者の趣味。
この手のネタが非人道的な内容であっても、作中でこういう設定を否定したら、この世界には付いていけないでしょう。
付いてきた人たちがどうしてこんなに不満があるのかわからない。
みんな受け入れろよ!とは言わないけれど、嫌悪感を示されるとなぜ今までは平気だったのかが不思議。

8割殺した=虐殺とみなし、その虐殺に抵抗がある人が多いことも意外。
そもそも今まで大勢のエルディア人がわけのわからないまま無垢の巨人にされたり巨人と戦って死んできたことが根底にあるのに、そこだけそんな引っかかるの…。

地ならしという展開になって、これで人類8割死ぬんだ!劇的だろう!って楽しんだのはエレンでなく作者だと思うのよなぁ…。
私の解釈では、エレンは死にたくなかったけど始祖ユミルの為に地ならしやるって決めたからにはやり遂げたいし(←本人にもよくわからない衝動?)そんなことしたら自分は生き残る資格はないって考えてたんだろうけれど、行動してる最中の心理が描かれていなかったから思慮が浅いように見えてエレンの脳味噌で考えたことと作者がやりたかったことがちゃんとマッチしないまま地ならしして完結したような気がしている。

地ならしというネーミングが、巨人による人類殲滅(巨大な足で踏み潰すこと)をそのままを表現してるのってキャッチャーだなと今頃気付いた。
そして気付いたけれど、主人公が追い込まれた経緯とかストーリーが読者にちゃんと受け止められていないのって漫画として致命的ではないか。
最終話にして掌返されたのはここが原因なのかな。

私だけかもしれないけれど、あの世界の国や人種の多様性やら総人口がまったくわからないので人類8割っていうのがただの数字過ぎて感情が湧かない。作中で8割って言ったら8割が死ぬの雑じゃない?
8割の重みが、私には伝わらなかった。
だから8割を思いやって憤怒してる人の想像力はすごいと煽りでなく思う。

自分の感想が「作者の表現力不足」みたいなところで落ち着こうとしている?
多少何かが不足していたとしても、それ込みでもう完結した作品なのだからいいじゃない。
でも正直、漫画家として成熟してなさが今頃指摘されるのは納得かつ今まで楽しんでおいて最後に上から言うのずるくね?と思う。
すみません連載追ってたの2年間ぐらいなので、あの、若輩者がと思われたら無視してください。

もうちょっと世間のことを書きますが。
真面目に批判されたり現実と混同して考える人が現れるのも作者の狙い通りかもしれないし、この大ヒット作品が起こした現象のひとつよなーと思ってる。
そしたら、「様々な意見があってよいという短絡的な考え方はよくない。批判してる人は深刻に考えている」とか言ってる人がいてファーーーー。
虐殺を肯定する漫画だとは言える。そうでないとも言える。
それでよい。どっちでもいい。読むたびに感じ方が変わるのでもいい。もう終わったんだから。


ここからはすごく個人的な感想ですが。

地ならし=虐殺、無差別な大量殺人という点に目が向けられがち。
でもエレンの目的は、エルディア人を巨人化能力から解放することだった。
それを実現させる為にエレンは動いて、暴走しつつも最後の進撃として解放(自由)を求めた。
その結果が虐殺なのよって言うと、仕方なければ虐殺しても許されるのか!って反論されるんだろうな。
でもこれがこの漫画で起こったことの事実ではないか。身も蓋もないけど。
それを許す許さないはあなたの感想であって、どちらかが正しいわけではない。

この通り、私は地ならしは「巨人化能力からの解放の為に始祖ユミルを成仏まで導こうとした」ことの結果だと思っているの。
ただの虐殺と言い張る人には、じゃあ巨人化能力からの解放は不要だったのか?って聞いてみたい。聞かないけど。
安楽死していればよかったとか言われるのかな?

エレンが独断で地ならしに踏み切ったのは、問題と言われてもしょうがない。
本人の性格も問題あるけど、他の8人の巨人もなんらかのアプローチが出来てもよかったのでは?
ただの戦う敵キャラや仲間キャラで終わったよね。
進撃と始祖が特別なのかもしれないけれど、始祖ユミルに上手に取り入れてちゃんと向き合ったのが進撃というかエレンだけって。
そら偏るだろうよ?
普通の漫画なら、主人公だからOKってなるのかも。

アルミンの言い方も問題らしいけれど。
あの場まできてエレンの気持ちを汲まないアルミンや、話し合いじゃなきゃ嫌!って粘るアルミン団長はちょっと想像できない…。
根負けというか、アルミンはあそこでエレンを見放して自分が責任者として生きることを決めちゃって、ミカサを自分らと引き離して隠棲させたじゃん。
3人の中で出された答えがこれなのかぁと単純に飲み込んだよ。
あの描写はエレンは自ら死を選ぶ、親友アルミンにはそれを利用して陽の当たる道を行ってもらおうという悲しい決別なのではないかと。
それが受け入れられない人がいるのはわかるなぁ。
でもじゃあ、アルミンは地ならしさせたことをいつまでも後悔してエレンを恨んで死んだ人たちに申し訳なく思いながら出家でもすればよかったのか?
単行本にするときに台詞修正すれば解決?

ここまで書くのすごくしんどかったけれど、書いてみてすごく落ち着いたしすっきりした。
一話から読みたいな。私はエレンさんに対して負の感情がないからそうポジティブでいられるんだろうな。すみませんね。

だって巨人化能力から解放されたのはハッピーエンドだし。
8割殺したのはしそゆみのお導きだし。
満足な死に方したキャラはいないし。
もう終わった漫画だし。
いろんな感想があるのは当然であってどれも正解ではないし。
来月号の作者インタビューで読者全員黙らせるような締め方してくれないかなぁ。
もしくは9月号ぐらいからまた大型連載始めたらいいのに。

言うべきでないと承知の上で言いますが。
8割が最後にドラゴンボールで生き返っていれば、みんな納得したのかな?
でもたぶんもやもやするとか言ってる人は、ドラゴンボールで生き返らせればOK理論も受け入れられなさそう。

2021年04月13日(火)

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