冒険記録日誌
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2022年06月08日(水) バカゲー・オブ・ザ・オレ 第7位

たけたろう「バカゲー7位は、西東社のシュミレーション・ブックスシリーズ第4作目です。」
山口プリン「黒表紙の本だね。あのシリーズは、雑誌ウォーロックでも一度は紹介されたこともあるし、8〜10位のバカゲーに比べれば、そこまでマイナーじゃないかな。」
たけたろう「そうですか?あまり聞かないですけど。」
山口プリン「ファンタジー作品とかほとんどなかったし、高めの年齢向けの装丁だったから、創元・社会思想社・双葉あたりの読者層と違っていたのだろうな。そう感じるのは無理ないかもしれないね。」


バカゲー第8位 【完全犯罪ゲーム】

ジャンル  犯人視点のサスペンスドラマ
発売元   西東社
執筆者   桜井一(作画は桑田次郎で、全パラグラフがイラスト付き)
発売日  1985年12月25日
パラグラフ数  146ページ
ゲームの構造  1方向システム。単純な分岐小説タイプだが、簡単な迷路を使った成否判定あり。
過去の冒険記録日誌  2013年9月23・24日に感想あり。

ポイント
 杜撰な犯人

物語の概要
 君は殺人を犯した!トリックを駆使して、警察や名探偵の目から逃れ、完全犯罪を達成するのだ!

完全犯罪成立時のナレーション集
 グッドエンディング1:これからのキミは、犯した罪におびえ、毎夜眠れぬ日々が続き、悪夢に悩まされるのだ。それも、よかったといっておこう。
 グッドエンディング2:キミは自分の犯した殺人という罪に、日夜おびえ続けることだろう。とどのつまりは、みじめな一生をおくるにちがいないことは保証しておこう。いやあ、オメデトウ、キミ!
 グッドエンディング3:これからは、犯した罪にみずからさいなまれ、眠れない日々が続くことだろう、たぶん一生。君の暗い、心安まらぬ一生にカンパイ!
 グッドエンディング4:そしてこれから、たぶん一生、犯した罪にみずからさいなまれ、眠れない日々が続くことだろう。キミの、悪夢にうなされて眠れぬ長い夜のためにカンパイ!

主な登場人物
 風間吾郎:主人公。遊び惚けて親の遺産を使い果たしたうえ、借金の返済を迫られ、貸主の金田を殺そうと考える。ゲームブックの主人公としてはNo1のクズ人間。
 金田金太:暴力団による取り立ても行う、強欲な金貸し。彼を絞殺したところから、ゲームが始まる。
 陳田一珍助:主人公の友人で、見かけは冴えないが名探偵。どうでもいいが、ひどい名前である。
 
バカ要素
 本作をバカゲーとする最大の原因は、主人公の企てたアリバイ作りのトリックである。トリックの内容は過去の冒険記録日誌にすでに書いているので説明は省くが、要するにこのトリックが穴だらけで、名探偵や警察はおろか普通の人でも、「お前が犯人じゃね?」と思われそうな内容なのである。
 このトリック自体はプロローグ時点で説明され、プレイヤーにはどうしようもない部分なので、この杜撰な計画がばれないようにヒヤヒヤするのがゲームの内容になってしまっている。
 ゲーム中にもおかしな箇所がいくつかあり、例えば、警察の現場検証中なのに、庭に出て「竹ボウキで証拠になりそうな足跡を消す」という常識ならありえない選択肢が出てくるし、死体がまだ暖かいのを気づかれては厄介という事で警察が死体の体温を測らないかの運試しもある。警察を舐めすぎである。
 この完璧な犯罪は警察以外にも挑戦させたい、とわざわざ名探偵を自ら呼び寄せる展開まであり、その自信はどこからくるのか、と苦笑いしか出ない。

総評
 犯人視点のサスペンスというアイデアは、他のゲームブックでは見られないものであり、新鮮な感覚で遊ぶことができる。手軽にプレイでき、江戸川乱歩の小説みたいな雰囲気もあるので、バカゲーとしてでなくても、トリックの杜撰さに目をつぶれるのなら、一度プレイしてみるのも悪くない作品である。
 ただ、そうは言っても、主人公の浅知恵はどうしようもなく目につく。主人公は事件のほとぼりが醒めたら金田の死体から奪った小切手を換金しようと計画しているが、犯罪がバレなくても、結局それで警察に疑われるのではないだろうか、と思っていると実際にそれがキッカケで捕まるバッドエンドが存在した。アホな主人公にカンパイ!である。
 作者も自覚はあったようで、ルール説明の最後に「これはあくまでもフィクションであるから、なかには机上の空論や実際にはありえない記述もあるが、それは勘弁してほしい。」との記述があり、予防線を張っているのが微笑ましい。でも勘弁してあげない。


ちょっとリプレイ(ネタバレ注意)
たけたろう「金田を自分の家で殺して、死体は金田の自宅に運びこみます。ここで、自分が金田宅を訪ねたら金田が死んでいたと、警察に連絡する手はずですが、県警に電話するか、近くの派出所に電話するかの2択ですね。ふむふむ、派出所なら早く警官が来て時間稼ぎができない、県警なら詳しく現場検証されるかもしれない、と。今回は県警に電話してみるか。」
山口プリン「110番以外の電話番号にかけるなんて冷静な事をしていたら、逆に疑われそうな気もするけどなぁ。」
たけたろう「警察がきました。ここで簡単な迷路ゲームによって、ランダムに結果が変わります。えっと、トリックの肝である庭の主人公の足跡を、警察官がズカズカと踏みしめながら、現場に到着した。これで君の計画は無茶苦茶に壊された。で逮捕されて、バッドエンド。なんてもろいトリックなんだ。」
山口プリン「結局、アリバイの証拠には気づいて欲しい、トリックがバレそうな箇所は見落として欲しい、と都合の良い事を願うばかりで相手まかせな計画なんだよな。これで完全犯罪を名乗る主人公のメンタルには感心するよ。」
たけたろう「2回目は派出所に電話したけど、同じく警官に足跡を壊されてバッドエンド。3回目は自分から、足跡に気をつけて、とさりげなく警察に忠告してやっと危機を乗り越えました。後で、お前が犯人だと知っているぞと脅迫して金を要求する奴が登場しましたが、ハッタリと判断して逆にそいつを警察に通報して切り抜けます。これでグッドエンドになったのにナレーションが酷い。」
山口プリン「おめでとう。でも短いから、もう一回別のグッドエンドを目指して欲しいな。」
たけたろう「4回目は、主人公を作った足跡のトリックを警官が見破ってバッドエンド。まあ、現実にこの計画でやったら、こんな風にあっさり逮捕でしょうねぇ。5回目は、警察の連れてきた参考人に“お前の家の窓越しに死体を見たぞ”と言われて、カッとなって“死体は毛布で隠したからそんなはずはない”と反論して、バッドエンド。」
山口プリン「間抜けすぎるな。今まで主人公の人生がうまく行かなかったのも無理はない。」
たけたろう「6回目は警察の目をごまかせた主人公が、友人の名探偵である陳田一を自ら呼び出します。バレない程度に調査に協力するフリをしていましたが、トリックを見破られてしまいました!“この事件は密室殺人のように見えるが、遺体は運ばれてきたと考えると、君の犯行が可能なのだよ。僕はこの事を警察には話さなかった。どうしてかは自分でもわからない。一つ言えることは、君との友情は終わりだね。“と言い残し、陳田一さんは立ち去って終わりました。」
山口プリン「ビター気味のグッドエンドだね。まあ、陳田一は、普通に誰でも気づく事しか言っていない気もするけどなぁ。」


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