冒険記録日誌
DiaryINDEX|past|will
2021年05月04日(火) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その3 |
月明かりがやさしく独房を明るく照らした。巡回する衛兵の足跡が遠ざかっていき、あたりは静かになった。 「……アルテウス。アルテウス」 窓の外からかすかに声が聞こえる。見上げるとローブを来た人影が見えた。 「あなた、本当にテセウスさんの弟なの」 ローブがはねのけられると、美しい若い女の姿が現れる。その美しさに女神アフロディテ殿の助言を思い出した。アリアドネ姫!そなたはアリアドネ姫でござるな。 「アリアドネ姫。拙者、エリデュロス殿からそなたに伝言を預かってきた」 彼女は最初は警戒しているようだったが、アテネでエリデュロスを救った話しをすると、次第に打ちとけてきた。彼女の話によるとエリデュロスは彼女の昔の恋人で、それを快く思わないミノス王が彼を追放したそうだ。 彼女は小さな丸い玉のようなものを牢に投げ込んだ。石の床に転がったそれを拾い上げるとそれは毛糸の玉だった。 「たぶん、あなたは私の兄(ミノタウロス)のいる迷宮に投げ込まれことになるの。そのときこの毛玉を使えば迷宮から迷わずに脱出できるわ」 アドリアネ姫がそう説明する。なるほど、拙者も14人のアテネの生贄と同じ運命というわけか。それにしても毛玉とはそれらしくなってきたではないか。(本物のギリシャ神話にも、テセウスが毛玉を携えて迷宮に入るエピソードがある) 「かたじけない。それにしてもなぜ見ず知らずの拙者にこのように親切にしてくれるのじゃ?」 「私はこのクレタ島から出て行きたいの。お願い。あなたが無事に迷宮から出てこれたら、あなた達の船に私を乗せて」 拙者がうなずくと、彼女は手をふってから立ち去って行った。
次の日になって衛兵がパンと肉と水をもってきた。夢中で水を飲んで一息つくと、パンと肉をガツガツと食べはじめる。なにげない雰囲気で拙者は衛兵に尋ねる。 「囚人に肉とは気前がよいな。王の機嫌が直ったのか?」 「いいや、どうやらお前の命もあとわずからしいんだ。お前は14人のアテネ人に先駆けて、迷宮に放り込まれる運命に決まったのさ。おっと」 スキをついて衛兵に飛び掛ろうとしたが、衛兵はすばやく牢の扉を閉めて鍵をかけた。衛兵は笑いながらさっていった。扉を叩いてみるがびくともせず、守り神に祈って見るが反応はない。 しかたなく座り込んでもう一日をすごす。 さらに翌日の朝になると衛兵隊長のポリクラテスが部下たちと一緒に、拙者を連れ出しにやってきた。 独房の長い廊下を歩いていくと他の牢の前を通り過ぎていく。 「ここには14人のアテネ人達がいる」 ポリクラテスが笑った。 「もう二度とお前は彼らには会えないな」 「嬉しそうだな。ポリクラテス」 「なに、王の命令に忠実なだけさ」 そのとき声を聞きつけたのか牢の中のアテネ人たちが一斉に歌い始めた。女神アテナを称える故郷の歌だ。 ポリクラテスは腹ただしげに歌を止めさせようとしたが、兵士達が牢に入って鞭打ちをするまでアテネ人達は歌いつづけた。 彼らは彼らなりにミノス王と戦っているのだ。拙者も負けるわけにはいかない。(名誉点を3増やす) 拙者は神殿の中に連行された。神官が豊作の女神デメテルに祈りを捧げたあと、拙者を迷宮につながる穴に放り込む。 こうして拙者は最終目的地であるミノタウロス住む迷宮にたどりついたのだった。
by 銀斎
|