冒険記録日誌
DiaryINDEXpastwill


2021年05月03日(月) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その2

 宮殿の奥にある玉座の間には大柄の男が立派な椅子に堂々と腰掛けていた。
 むっ、こやつ…できる!
 誰の説明も聞かずとも本能で彼がミノス王だとわかる。その体格と風格は、王が戦士としても一流の技量をもつと感じさせた。ミノス王は大声で拙者に話し掛けてくる。
 「遠方よりはるばるよくお越しなさった。アイゲウスのご子息とは、なるほどこう見てもなかなか品位がある。礼を失するなよ。ポリクラテス」
 ポリクラテスとは、衛兵隊長の名前らしい。衛兵隊長は肩をすくめて退席し、ミノス王は拙者の手を握って「わしがミノスだ」と名乗る。
 「丁寧なご挨拶、いたみいる。改めて紹介を。拙者は冒険者のアルテウルスでござる」
 「ほう、冒険者とは。それではここには何の冒険にいらしたかな?」
 ここで「親書を手渡すか」という選択肢が発生!ひきつった笑顔を出してこれを回避。
 「長旅で疲れたろうから、用件は後でゆっくりと話すことにしよう。おい、タイジア!客人の身なりを整えてやれ。旅の汗を流させてから宴席の場にお連れするのだ」
 ミノス王の言葉にほっとすると、タイジアと呼ばれた若い娘について部屋を出て行った。

 拙者は部屋に案内され、宴席に出席するため身支度を整えることになった。情報を得るために身支度を手伝ってくれているタイジアと世間話しをしてみる。タイジアは明るくて親しみやすい性格らしく、喜んで話し相手になってくれた。
 「わたしの名はタイジア。よろしくね。アルテウルスさんは何のためにここへ来たの?」
 「貢物をやめてもうらうようにミノス王を説得にだ。これ以上、アテネの若者の命を奪う事はできないのじゃよ」
 「でも、戦争になったらもっと大勢のアテネの人々が死ぬわ」
 「問題はなぜ死ぬのかなのだ。仮にそれが為に戦争になってもアテネの民衆は父上を指示するだろう」

 タイジアの顔がパッと輝いた。
 「あなたアイゲウス王の息子なの?するとテセウスさんの弟ね!」
 「知っているでござるか。兄者のことを」
 「ええ、でもテセウスさんはあなたのことは何も言わなかったわ」
 「……無理もない。我ら兄弟は別々の場所で育ったからな」
 そう答えては見たものの、少しばかり心が傷つくのぅ。拙者の立場はギリシャ神話の中では席がないからな。
 拙者は旅の汚れを落とし、仕上げに赤い上着を着せられると、再びタイジアの案内で玉座の間へ歩いていった。

 「おお、客人が戻ってきたぞ。みなの者、これがアイゲウスの息子、冒険者のアルテウスだ。そしてテセウスの弟でもある。みなもテセウスのことは覚えているであろう」
 玉座の間は、豪勢な食卓がセットされ、大勢の貴族たちが居並んでいた。
 ミノス王が拙者を紹介した後は、ワインが杯に次々に注がれ、拙者の健康を祝って皆が乾杯をしてくれた。拙者もお返しにクノッソスの王宮の繁栄と、そこの人々の幸福を祈って乾杯をすると拍手喝采が鳴り響いて、歓談が始まった。
 テセウスのことは全員が知っているらしい。兄のテセウスがこの宮殿でどう思われていたか知りたかったが、残念ながらそれ以上、兄に関する情報はなかった。
 やがてミノス王が宮殿の主だった、人間を拙者に紹介してくれた。高僧のパングリオン、先ほども見た衛兵隊長のポリクラテス、まだ年若い廷臣のオプリスとラクトリスなどなど。
 「わしの宮殿にはまだまだいるぞ。ボロリス!ボロリスはどこにいる?」
 ミノス王が上機嫌で喋っていると、広間の外から騒がしい音が聞こえてきた。ん、何事じゃ?
 タイジアが止めるのも聞かずに扉の方に近づくと、二人の男が王座の間に転がり込んできて倒れこんだ。
 「おい、大丈夫か。どうなすったのじゃ」
 拙者が二人に近づくと、その内の1人が拙者の上着にしがみついて立ち上がった。どうやらひどく酒に酔っ払ているらしい。酒臭い息がマトモに顔にあたる。濁った眼が拙者に向いてから男はわめいた。
 「おい、奴隷。ぼっとするな。さっさと酒を持って来い!」
 なにお!
 侮辱的な言葉に拙者は、そいつの顔面に怒りの鉄拳パンチを食らわせた。男はもんどりうって石の床に倒れたが、すぐに起き上がって拙者に掴みかかってきた。
 「そこまでだ!」
 ミノス王の一喝でその場が凍りついた。拙者は兵士達の手で男から引き離された。酔っ払いの二人もよろよろしながら逃げるように去って行く。
 「今のはわしの息子クレムトン。もう1人はその友人のミトクロスだ。客人が息子と殴りあうとは、穏やかなことではないが、クレムトンにはいい薬だろう」
 ミノス王は低い声でつぶやくように言うと、拙者に席につくように言った。玉座の間の空気が静まり返る。
 「ミノス、あなたは自分の息子さえコントロールできないでいる」
 ふいにローブをきた老人が、ミノス王に宣告をした。一瞬、ぎょっとした空気が流れるが、ミノス王は笑い出す。
 「アルテウス、この男の紹介をしていなかったな。この老人は皮肉屋のディプティスだ。こいつは今のように、よく私を楽しませてくれる。さあ、今度はお前が楽しませてくれ。お前がここにきた用件はなんだ?」
 うーむ。登場人物が一気に増えて混乱してきたぞ。などと言っている場合ではない。ここでの選択肢は4つだ。

・(持っていれば)父の親書を手渡す。
・ここに来たわけを説明する。
・エリデュロスの名を持ち出す
・親書をなくしたという。

 当然、親書は持っていないので最初の選択はない。エリデュロスとは、アテネでリンチに遭っていたのを拙者が救ってやった男の名だな。奴はミノス王と縁があるのか?
 とりあえず人間の貢物をやめてもうよう、父上から頼まれたことを説明することにした。
 ミノス王は聞き終わるとちょっと考え込んでから、言った。
 「アイゲウスはお前にわしへの親書を託したはずだが。お前が本物の王の息子なら、まずはそれを見せてくれ」
 「そ、それは……オリンポスの神々のいたずらか、数々の冒険の最中に行方不明になったでござる」

***

 しばらくすると、拙者は身ぐるみを剥がされ、独房の中で寝転がっていた。
 牢の外では衛兵が何度も巡回していて、脱出は難しそうだ。
 残念ながら交渉は不成立だな。釈明の機会も与えぬとは、噂に違わぬ非情な王だな。
 なんとか牢を脱出して迷宮に潜り込み、ミノタウロスを倒すしかあるまい。
 それにしてもヘパイストスから与えられた武具を没収されたのは痛いのぉ。この後、取り返すことはできるのじゃろうか。

by 銀斎


山口プリン |HomePage

My追加