冒険記録日誌
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2021年04月10日(土) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム1 アルテウスの復讐(P.パーカー他/社会思想社) その9

 父上の宮殿で罪人扱いとは屈辱ではあるが、捕まってしまったものはしかたあるまい。牢獄の床に腰をドッカリとおろして座禅を組み瞑想にふけることにした。
 そのまま何時間かが経過すると、召使いがパンと水のはいった壷をもってきた。
 ガツガツと飲み食いして口をぬぐう。そろそろ尋問くらいあってもいい頃じゃがなと思うが、何の気配もない。釈放されるように守り神に祈りを捧げてみる。(名誉点3を失う)
 「まあまあ、アルテウス。なんて格好だこと」
 いきなり、光輝く女神アフロディテ殿が拙者の膝の上に登場した。あわてて抱きかかえて女神の体を支えると、女神は拙者の首にしどけなく手を回して微笑む。熱い吐息が拙者の首筋にかかる。
 ああ、女神殿…。またもや、鼻血が出そうでござる。
 「ここから脱出したいのね。なんとかやってみるわ」
 女神が立ち上がって手を一振りすると、たちまち拙者は小綺麗なギリシャの貴族のような姿に変わった。品がよく、それでいて英雄らしく動きやすい服装だ。
 「これでよし、と。一つ忠告をしておくわ。ワインを飲んではいけないよ。効果を損なうから」
 女神は満足そうに笑うと姿を消した。
 やがて見回りにやってきた衛兵が、別人のような拙者の姿を見て仰天して去っていく。隊長のような人間をつれてきたり、しばらく対処に混乱しているようだったが、王の宴席に賓客として招待されることになった。

 大広間に行くと、王の賓客やアテネの貴族たちがテーブルに着席している。町の守り神のアテナに食物をとりわけたのちに、大宴会が始まった。
 前回の冒険では給仕として料理を眺めるだけだったが、今回はカモやイノシシの肉をしっかりと堪能する。
 「さあ、ワインを注いであげますわ」
 王、アイゲウスの後妻メディアが、葡萄のワインを拙者の酒盃を満たす。女神の忠告を忘れなかった拙者は、彼女がなにかの粉末をワインと一緒に注いだのを見逃さなかった。
 「かたじけない。…おおっと」
 わざと手を滑らせて酒盃を落とす。こぼれたワインは隣のお客の服を汚してしまい、拙者は不手際を謝罪する。(恥辱点を1増やす)
 このちょっとした騒ぎは王の目に止まったようだ。王は拙者の顔をまじまじと見つめる。
 「お前がわしの息子だと名乗った者か。わしの館に潜り込んでどうしようというのだ。素性を言ってみよ」
 拙者は正直に今までのことを打ち明けた。王は半信半疑ながらも心を動かされたようだ。
 「わたしの気高い息子、あの愛すべきアルテウスだというのか。だが、私は長いことお前に会っていなかった。今は信じて良いものか判断がつかぬ。…だが、証明する方法はあるぞ。マラトンの町に凶悪な牡牛が出没して、住民がふるえあがっているのだ。牡牛を殺してこい。それができる勇者であれば、お前はこのアイゲウスの息子に間違いないであろう」
 この父上の言葉で、拙者は胸をはって大広間を出ることができた。こんどこそあの牡牛を倒すことができるのだ。武者震いをしながらマラトンの町へ向かいだす。起伏のゆるやかな高地地帯を歩いて夕方になるころ、前方にマラトンの町の影が見えてきた。不意打ちを警戒して牡牛を向かい撃つべく、町の手前で静かに腰を降ろして待ち受ける。

 やがてのっそりを姿をあらわした小山のような牡牛に向かって、拙者は不適な笑みを投げかけた。
 「来たか。盲亀の浮木、優曇華の花待ちたること久し、此処で逢うたが百年目!知らぬかもしれぬが、お主は拙者のカタキ。いわば仇討ちござる。いざ尋常に勝負せよ!」
 攻撃力の下がるキュロンの盾を投げ捨て、槍を構える。牡牛は攻撃力、防御力ともに高い強敵だ。ダメージ覚悟の肉を斬らせて骨を断つ作戦、攻撃に名誉点を注ぎ込んで倒すことにする。
 牡牛は剣のように鋭い角をきらめかせて突進してきた。拙者も槍を構えて気合とともに突進する。鋭い槍の一撃は牡牛の肩に当たるが、牡牛の突進をマトモに喰らってしまう。次の勝負も同じ、共に重傷状態におちいる。次のラウンド、不覚にも拙者はトドメの一撃を外してしまった。すかさず牡牛の角が拙者の胸をつらぬく! ゼウス様!
 「お前の傷を治してやろう。だが、勝負からは逃げられない。必ず牡牛を討ち取るのだ」
 ゼウスの荘厳な声と共に拙者の傷は、たちまち癒える。だが、復活するということは名誉点1、恥辱点0の状態に戻るルール。つまり名誉点を利用した戦闘はできなくなるわけだ。
 必死で牡牛の足を槍で薙ぎ払らおうとしたが、踏みつけられてしまう。
 またしてもか…無念。



by 銀斎


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