冒険記録日誌
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2021年04月09日(金) ギリシャ神話アドベンチャーゲーム1 アルテウスの復讐(P.パーカー他/社会思想社) その8

 それ以降はなにごともなく、メガラの町からエレウシスの町へと旅を続ける。エレウシスでは今、女神デメテルの神殿で収穫祭の儀式が行われていると聞く。ちょっとした好奇心から見物してみようと思ったのじゃが、これがいけなかった。
 拙者が神殿にたどりついたときは、群集が固唾を飲んで見守る神殿の白い階段の上で、女祭司がなにやら儀式を執り行っているところであった。そのうち、女祭司が階段をおり群集の中を動きまわリ始めた。あちらの人の手をさわり、こちらの人の手をさわりするところを見ると、なにかの代表者を捜して
いるらしい。嫌な予感がしたが、その予感どおり女祭司は最後には拙者の手を取ると階段を登りはじめるではないか。
 なにがなんだがわからぬうちに祭壇の前に立たされた拙者は、呆然と女祭司の言葉と群集の期待のこもった歓声を聞いた。
「エレシウスの市民よ。これから一般人の1人に再生の象徴たる穀物と水と炎の儀式を執り行ってもらいます。さあ、始めましょう」
 目の前には水の入った壷と穀物の入った鉢、そして燃え盛る炎の入った火鉢がある。始めましょう、といっても、これらをどうすればいいのじゃろう?女祭司は拙者に何の助言もしてくれない。
 しかたなく先に穀物の入った鉢を手にとると、群集のかすかなどよめきが聞こえる。
 これで正しいのか不安になる。この穀物をどうするべきか。群集に振り掛けるか、水瓶の中に入れるか、火にくべるか、いっそ食べるべきか。
 そのときパラグラフに<>がついているのに気が付いた。今回の冒険はヒントをなるべく使わないつもりじゃったが、このときばかりは文字通り、神にすがる思いでヒントを見てみる。

───君は守り神への祈りをつぶやく。すると、かすかな囁きが聞こえる。「わからない。それはこのわたしにも謎なのさ!」(名誉点を1失う)

 アフロディテ殿も案外とあてにならぬ……。
 悩んだ挙句、鉢の中身を水瓶の中にあけてみた。チラリと群集の反応を見るとこの行為に対して仰天して尻込みさえしているではないか。しまった、失敗じゃ。
 「みなさん、この男は余所者。われわれの儀式の手順を知らなくて当然です」
 女祭司が口を開いて群集をなだめ、拙者にむかって微笑んだ。
 「異国の人よ。もう行くがよい」
 女祭司が新たな代表を選んでいる間に拙者は、恥ずかしさで顔を紅潮させながら退席した。恥辱点が増えなかっただけましと思わねばなるまい。

 エレウシスの町を出て、オリーブの並木道をひたすら真っ直ぐに歩き続ける。道はこれまでと違って手入れが行き届いており、耕地が広がり農民たちが働いているのが見えた。次はいよいよ父の都、アテネだ。
 そしてアテネの町に入ったはいいが、宮殿への道がわからぬ。そういえば前は老人に道を尋ねて豚小屋に案内されたのだったな。
 通りすがりの若い貴族に道を尋ねることにするが、自分も町の人間ではないのでわからないという。
 しょうがないので、ぶらぶらと通りを歩き続けた。
 道端で住民達が集団で2人の旅人を折檻している光景にでくわした。む。理由はわからぬが同じ旅人として見過ごせぬな。
 「友よ!これがアテネの人々のすることか?アテナの市民は自由で誇り高く、寛容ではなかったのか。この町をこのようないまわしい行いで汚してはならんぞ」
 拙者がそういいながら割って入ると、住民達は恥ずかしそうに解散していった。
 助けた旅人達と話しをすると、彼らは拙者の最終目的地のクレタからきたという。「ミノス王の娘アリアドネに会ったら、われわれに会ったと伝えてくれ。私の名はエリデュロスだ」旅人の1人はそういい残してさっていった。
 それから噛み付いてきた犬をけっとばし、旅芸人が芸で我が兄テセウスが迷宮で倒れる様子を模した芝居を見た(その正体は通信の神ヘルメスだった)後、アテナ神があらわれて宮殿への道を教えてくれる。
 さらにテクテクと道を歩くと葬式をあげる一団の傍を通りかかった途端、そいつらに襲われて命からがら逃げ出した。下司なごろつき相手に逃げ出す(恥辱点を2増やす)のは苦々しいが、相手は5人ががかりだから戦っても勝ち目は薄かったろう。それにしても一見平和に見えてもひとたび裏通りに入れば貧困に満ちた恐ろしい町でござる。
 やっとの思いで宮殿にたどり着いた。衛兵が入り口で拙者を呼び止めてくる。
 「お前は何者だ」
 前回の冒険では偽名を使って宮廷に潜りこんだが、今回は堂々と名乗ってみよう。
 「拙者はアルテウス。王の息子だ」
 衛兵はびっくりしたようだが、拙者を案内してくれるといってきた。
 言葉に甘えて衛兵の跡をついて、狭い廊下を歩いていくとやがて小部屋の前にたどり着いた。
 「こちらで今しばらくお待ちください。アルテウス殿」
 衛兵はうやうやしく拙者につげ、拙者はうなづいて部屋に入った。家具一つなく殺風景な部屋だ。
 その途端、扉が閉められ鍵のかかる音が聞こえた。
 「ばかめ。王の息子などと、もっとマシな嘘を言ったらどうなんだ!」
 どうやら拙者は牢獄に入れられてしまったらしい。父上の宮殿で罪人扱いをされるとは、なんたることだ!

by 銀斎


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