冒険記録日誌
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2016年10月22日(土) キング・ソロモンの秘宝(若桜木虔/ピラミッド文庫)

 インディジョーンズ系と言うか、エンタメ冒険小説の王道をつっぱしるストーリーのゲームブックです。
 冒険家の主人公が仲間達とともにアフリカの秘境に旅立ち、厳しい自然の中でサバイバルをしたり、邪悪な巫女や王に率いられた原住民らとやりあったり、ヒロインや宝の地図が登場するなど、ベタな要素が満載で実にわかりやすいです。
 若桜木さんによる後書きによると、本作には原作があり、創元推理文庫から「ソロモン王の洞窟」というタイトルで出版され、ゲームブックの出版と同じ年に映画も日本公開されたそうです。私は知らなかったのですが、知る人ぞ知る的な傑作のようですね。
 つまりゲームブック版は映画化の人気に、タイアップして出版されたわけです。タイトルこそ映画と同名ですが、内容は小説版をベースにしているようで、後書きでは小説とゲームブック版の設定の違いを解説しています。

 さて、そんなストーリー面の話しは、どうでもいいです。問題は本作が若桜木虔さんのゲームブックだということです。
 過去、私がみた若桜木虔作品のほとんどは、やたら迷路が多く、時には迷路全体が無限ループという事も珍しくないという凶悪な罠となっています。(2016年2月14日や2016年3月19日の冒険記録日誌を参照)
 本作も本の帯に「魔王ツワールを倒し、ソロモンの秘宝を手にできるか!正解の171手に挑戦しよう!」と、若桜木虔作品お馴染みの最短クリアを推奨する文句が出ていました。
 そんなわけでプレイ前の期待値は高くなかったのですが、ルールは特にない単純な分岐小説というのもいつも通りなので、原作つきならストーリーも安心できるし、とりあえず遊べるかなと挑戦することにしました。
 それがまさか、さらに悪い方に予想が裏切られるとは。若桜木虔先生の作品は一筋縄ではいかないぜ。

 まずゲームを始めてみると、ヘンリー・カーティス卿とジョン・グッド大佐なる2人の人物に主人公が会うところから始まります。
 ちなみに主人公の名前はアラン・クォーターメンですが、原作のことを紹介しているサイトによると主人公は55歳だそうです。結構なベテラン冒険家ですね。
 ヘンリー卿は冒険家で弟が消息不明になっていると言い、捜索に行く手助けをしてほしいと依頼してきます。
 ここで依頼を断るか、受けるか、考えさせてくれ、の3択が発生。選んだ先では「この文章の番号を記憶して、あるいはメモして、2へ進め。」という文章が登場して、次の行き先でヘンリー卿が主人公の雇用条件を提示されるシーンがあって、そこでは「前の文章番号に25を足した番号の文へ進め」と指示されました。
 わかりにくいですが、3択を選んでどの返事をしても、そのあと雇用条件を説明する同じパラグラフへ移動しますが、そこからまた3択の内容によって行き先が変わるという事です。
 いきなり面倒なパラグラフジャンプで少々戸惑いましたが、パラグラフ数か原稿量の節約でもしたかったのでしょうか。
 さらに話しを進め、ウンボパと名乗る、訳ありそうだが屈強な現地人を雇うと、冒険の旅が始まります。
 まだ序盤なんですが、先ほどの「この文章の番号を記憶して、あるいはメモして、○○へ進め。」「前の文章番号に○○を足した番号の文へ進め」と言った指示がここまでに何度もありました。イチイチ計算を求められるのは面倒くさいな。
 長丁場となる砂漠の旅が始まると、飲料水が尽きそうとの事で水を探し回るシーンになります。
 このあたりで砂漠を右に行くか、左に行くか?と尋ねられる選択肢が多発。これは迷路なのかな?
 なんとか沼を発見した一行は、泥水を啜って事なきを得ます。すると今度は食料が乏しいと、また食料探しに右に行くか、左に行くか?の迷路が発生。
 冒険のプロなのに、準備が乏しい主人公だなぁ。一応、原作にも水を探し求めるエピソードはあるらしいですが。
 彷徨っている間も先ほどのパラグラフジャンプは、頻繁に求められるので、ゲームを進めるのが面倒なことこの上なし。
 なんとか山脈の麓までたどり着いて、洞窟で野営した一行は、洞窟の奥にソロモン王の坑道らしきものを発見。ここで本格的な迷路に突入しました。普段なら迷路は苦手ですが、頻繁なパラグラフジャンプがここで登場しなくなったので、やっと普通に遊べる感じになってきました。
 鉱山は入り組んでいて、距離感も方角も描写がはっきりしないのでマッピングは不可能っぽいです。無理に書いても地図ではなく、フローチャートみたいになるでしょう。とりあえず滅多やたらと進みましたが、一向に出口が見えません。
 パラグラフジャンプ地獄を抜けたと思ったら、無限ループ地獄にはまっていたのでした。



 
 とにかく計算が必要なパラグラフジャンプが多すぎ!
 2・3パラグラフ進行するたびに例の文章が出て、常に計算を求められるのですが、本当に面倒くさい!
 中には選択肢もない一本道でも登場するのですが、これ、本当に必要なの?
 物語が盛り上がっていても、読者は全然集中できません。通信環境が悪いせいで、頻繁に再生が一時中断するネット動画を見ているかのようなストレスでした。
 おまけにうっかり指示を忘れ、番号を覚えずに次のパラグラフに進もうものなら、「前の文章番号に100を足した数字へ」とか言われて詰まってしまいます。
 ゲームを中断するにも、適当にしおりを挟んでいると、やはり進めなくなります。
 最近、忙しくてゲームブックも5・10分の合間合間に遊んでいる状況だったので、慌てて中断するときなど、こういった失敗をしでかして、やたら再開地点探しに時間を取られてしまいました。ゲームブックの楽しみ方の一つである拾い読みも全然できません。
 これほどストレスの溜まる読者虐めなゲームブックも滅多にないですが、凄いのはこれが手抜きではなくて、逆に手間をかけないと作れない作品であることです。驚いたことにこれだけパラグラフジャンンプが多いのに、遊んだ限りではバグはないんですよ。
 原作があるだけあってストーリーは別に悪くないので、無限ループとパラグラフジャンプがなければ、普通の分岐小説として、そこそこ楽しめる作品になっただろうに。作るのも大変な仕掛けを施し、それが読者には負担がかかるだけというのも珍しい。
 作者の考えがまったく読めないので、後書きにこの仕掛けを思いついた理由についてコメントを書いてほしかったところです。
 誰得?なシステムを実現したという点で、おそらく唯一無二のゲームブックではないでしょうか。

 なお最も一番盛り上がるのは、ラスボス的なツワール王と主人公の一騎打ちのシーンと思いますが、これはパンチで顔面を殴るか、頭突きをかませるか、両手で首を絞めるか?と言った、2・3択が続く戦闘となっています。これがまた、殴り合ったり槍を奪い合ったり落馬させたりの展開が延々と続く無限ループっぽいので、たちが悪いです。果たして勝敗がつく手順が存在するのだろうか?気になる人は本書を差し上げますので連絡ください。私のかわりにクリア報告をお願いします。


山口プリン |HomePage

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