冒険記録日誌
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2016年10月08日(土) ゼルダの伝説 神々のトライフォース(富沢義彦/双葉文庫)

 双葉でゼルダの伝説のゲームブックと言うと、この日記を読むような方なら樋口明雄さんの書かれた分(2005年6月03日の冒険記録日誌参照、以下樋口ゼルダとでも書きます)を思い浮かべると思うのですが、あれば名作です。
 ファミコン版をベースとしつつも思いっきり内容がアレンジされていた作品ですが、ゼルダ姫とリンクの2人が呪いにより、互いに傍にいるに関わらず、すれ違って会えないというオリジナル設定は、今ヒット中のアニメ映画「君の名は」に匹敵する切なさですよ。

 しかし、今回紹介するのはそんな樋口ゼルダではなく、スーパーファミコン版のゼルダの伝説を原作とした作品です。
 1991年と市場からゲームブック自体がほぼ消滅した時期に出ており、あの大量の双葉ゲームブックの中でも、終盤中の終盤、ほぼラストに出された作品なので、例え双葉ゲームブックのファンであったとしても、遊んだことはおろか存在すら知らなかった人も多いのではないでしょうか。
 本作の特徴は残念なことにバグの多さ。中盤あたりから容赦なく、選択肢の行き先が一致しない現象が多発します。バグのあるゲームブックは時々見かけますが、出版社を問わずに、ここまでバグが多いのは初めてです。テストプレイをしていなかったのは間違いないでしょう。
 ゲームブックも店じまいムードで双葉編集部もやる気がなくなっていたのかなぁ。巻末の編集部からのコメントには、他の双葉ゲームブックと同じく「今後もゲームを素材にしたゲームブックを次々に発表するからおたより待ってます」的な事を書いているのですがね。
同作者で同時期に出されたルパン三世のゲームブック(2008年0月14日の冒険記録日誌参照)がとても好きだったので、プレイ前は結構期待していただけに残念。
 とりあえず、現在判明しているバグというか正誤表を書き出してみます。まだありそうな雰囲気ではありますが。

パラグラフ117  マジカルミラーを使う × 275へ  ○ 410へ
パラグラフ208  選択肢なし      × 138へ  ○ 正解不明
パラグラフ222  選択肢なし      × 206へ  ○ 正解不明
パラグラフ223  選択肢なし      × 169へ  ○ 40へ
パラグラフ306  東へ         × 233へ  ○ 正解不明
パラグラフ384  選択肢なし      × 47へ   ○ 447へ
パラグラフ340  南へ         × 340へ  ○ 正解不明
パラグラフ390  マスターソードを使う × 463へ  ○ 175へ
           ペガサスの靴を使う  × 390へ  ○ 463へ
パラグラフ470  そんなものはない   × 38へ   ○ 378へ

 私は本作でバク探しでも難易度に違いがあることを始めて実感しました。
 レベル1……47の正解が447、245の正解が254というような、間違いと正解のパラグラフ番号に、ある程度関連があるもの。推測で正解を発見できると気持ち良い。
 レベル2……間違いと正解のパラグラフ番号に関連はないので、全パラグラフを総当たりで探す。戦闘中のシーンなどアクションの最中なら、文脈がつながるパラグラフを探しやすい。
 レベル3……次の部屋に移動するなど切りの良い場面で行き先がバグ。どんな展開につながっているのか予想できないので、総当たりで調べても正解がわかりにくい。全体のフローチャートを解析して調べないとなかなか発見できない。

 特にたちの悪いのが、パラグラフ208のレベル3バグで、展開がちょっと不自然だなと思いつつも、最初はバグと思わずに先を進めていたので、いくつかのダンションをすっ飛ばしてゲームを進めてしまいました。
 おかげで後半は、ハンマーやフットショットがないよ。ちぇ、取り逃したか。えっ、ファイヤーロッド?アイスロッド?何それ?な状態で大苦戦しているうちにゲームオーバー。
 どうもこのバクを修正しない限り、まともなクリアができないようです。またバグ探しをする気力が沸いたら再挑戦してみます。


 と、このようにいつの間にか虫探しゲームと化してしまった本作ですが、バグの存在以外の感想も少し書いてみましょう。
 ストーリーは原作が有名ゲームですから、説明の必要もないでしょうが、リンク少年が魔王ガノンを倒す王道もの。樋口ゼルダと違って、割と原作遵守な感じに進んでいきます。
 システムは割とシンプルで、ハート数、アイテム、アルファベットのフラグチェックの3つのルールしか必要ありません。
 ハートは基本的に原作ゲームと同じく0になったら死亡するものですが、ダメージを受けるだけでなく、魔法を使っても、買い物をしても消耗してしまいます。
ヒットポイントだけでなく、マジックポイントやルピー(所持金)の役割も兼ねているのは、読者の負担を軽くする工夫と思います。買い物で命を削る羽目になるのは、普通の店でも悪魔と取引しているみたいだけど。
 なお、本作はマルチエンディングで、トライフォースの力によりゲーム中の犠牲者まで蘇ってみんな幸福になるAエンド、世界は救われたが代わりにゼルダ姫は亡くなってしまう後味の悪いBエンド、世界が救われゼルダ姫も元気だが死んだ人や木になってしまった人はそのままのCエンドの3種類があります。一番のハッピーエンドはAでしょうが、少ししんみりするシーンもあるCエンドが物語としてベストエンドな気がするな。
 個人的には原作をなぞるだけでなく、鈴木直人ゲームブック並みに凝ったダンションで原作ゼルダのパズル的な楽しさを再現するとか、樋口ゼルダのような設定で魅せるとかの、特徴がある方が好きなのですが、バグさえなければテンポ良く進むし、バグさえなければゲームバランスも良く手堅く作られた印象は受けます。
 双葉ゲームブックの中でもかなり出来の良い部類でしょう。バグさえなければね。
 ああ、勿体ない!


山口プリン |HomePage

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