冒険記録日誌
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2016年08月13日(土) 謎の村雨城 不思議時代の旅(三原 治&塩田信之/双葉文庫) ふたたび

 2002年5月31日の冒険記録日誌にも取り上げていますが、山口プリンが初めてクリアしたゲームブックということで、非常に思い入れが強い作品なので、今回はまともに感想を書いてみたいと思います。
 原作はファミコン(ディスクシステム)初期のアクションゲームです。
 ゲームとしては珍しく和風ティストの世界観で、主人公の鷹丸という侍が忍者や般若の攻撃をかいくぐり、道中をつき進み、城の奥にいるボスを退治する内容です。任天堂ゲームなのに、ゼルダの伝説という名作と同時期に発売されたせいか、そこそこ出来は良いのにマイナー作品扱いをされ、続編も出ていない不遇の作品です。
 私はディスクシステムがないので、プレイできなかったのですが、攻略本だけは持っていました。ゲームブックと出会う前の私は、ゲームソフトが買うことができなかったので、欲しいゲームがあるとよく攻略本を買って読んで、疑似体験気分を味わっていたのです。そんな当時の私が、ゲームブックに夢中になったのは当然の流れといえるでしょう。

 本題ですが、このゲームブックでは、主人公は現代にすむ17歳の高校生となっています。主人公が江戸時代にタイムスリップして、謎の村雨城をめぐる冒険に巻き込まれて旅立つことになるのです。鷹丸は真面目な性格の侍として登場し、主人公のサポートをする役どころです。
 原作は当時のアクションゲームの例に漏れず、たいしたストーリーはない作品で、ゲームブックの題材としては向いてないはずなので、このような味付けは良い工夫と思います。純粋な時代小説風にしなかったのは、ゲームの読者層を意識したのと、敵の黒幕が宇宙人というSF設定に合わせたのではないかと思います。
 他の双葉ゲームブックに多い、ただ単にゲーム少年がゲームの世界に吸い込まれたというご都合主義的なものではなく、本作ではなぜ主人公がこの冒険に巻き込まれたのか、ちゃんと最後には説明してくれます。また、主人公のあこがれる謎のヒロイン、由美子を相手にボーイ・ミーツ・ガール風のサイドストーリーがこれに絡んでいて、爽やかな読後感のあるエピローグが印象的です。
 
 ゲーム本編の内容そのものは、基本的に一本道ストーリーで、青雨城、赤雨城、緑雨城ステージこそ省略されていますが、他は原作ゲームの要素をかなり忠実に再現しており、桃雨城と村雨城の城内のみ簡単な双方向システムとなっています。登場するアイテムの大半は原作パワーアップアイテムと同じ名前と効能で、敵も原作に登場するキャラそのものが多く登場します。
 タイムスリップ直後に木に登って東京(江戸)から富士山が見えることに驚くシーンとか、城下町に入って町人と会話したり風呂に入ったりするオリジナルシーンがある一方、原作に忠実すぎるあまり、小説的に読むと変なシーンも結構あり。
 例えば四方向に手裏剣を同時に飛ばすという人間離れした技(飛車の術)を主人公が難なく使ったり、城内のある部屋で忍者の大軍が登場しても次の部屋に移動すれば静かになることとか、街道で派手な赤い忍び服を着た忍者が登場することとか。特に体全体がピカピカ点灯する忍者って何者なんだよ。原作通りと言えばそうなのですが、それでいいのか?
 原作再現以外でも、前の冒険記録日誌でネタにした、野球のバットやエアガンを持ってホコテンに行く主人公とか、他にも突っ込みどころは多いです。

 でも今回は感想を書くだけではなく、昨日実に30年ぶりくらいに、まともに本作を遊んでみました。
 当時は気にしていなかったのですが、今読むと地の文章がかたい感じがします。エンディング等を別とすれば、描写も少なめ、状況説明だけで済ませているシーンが結構あります。中ボスとなる桃雨城の女城主も、決戦では一言もしゃべってくれないですし。ただ、本書の挿絵のイラストは結構、雰囲気と合っていて、描写の説明不足を程よく補完してくれていたみたいです。
 他に中盤の展開ですが、城下町で敵の目をくらます為に、芸人に扮したヒロインを先頭に、町中の人が阿波踊りをしながら街を練り歩くシーンはやっぱり好きだな。エンディングへの伏線となっていて、うまい演出です。
 ゲーム難易度的はそこそこでした。すっかり細かい記憶が抜けていたので、序盤で3・4回ゲームオーバーになりましたが、サイコロやバトルポイント表のようなランダム要素はないので、中盤まで上手く進行できると後は楽にクリアできました。
 もっとも昔のプレイで、強力なアイテムを入手しようと城内で粘るあまり、同じ罠に何度も引っかかり、体力が減ってラスボス戦でゲームオーバー、となった記憶もあるので、最後まで油断は禁物です。
 ゲームクリアまでの所要時間は他の双葉ゲームブックと比べてもそう長くない方で、サクサク遊べました。ゲームブックブーム当時は、次のゲームブックをすぐに買う余裕がなかったので、この作品を何度も遊んでいたのですが、この作品自体のテンポの良さと適度な難易度も、繰り返し遊んだ理由にあったのだと思います。

 原作ゲームと同じく、決して名作とは呼ばれないマイナー作品ではあります。しかし、私にとっては素晴らしい作品です。結局のところ、私のゲームブック好きの下地は、こういった作品達に支えられているのかもしれません。


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