冒険記録日誌
DiaryINDEXpastwill


2016年06月30日(木) 眠れる竜ラヴァンス( 滝日省三/創元推理文庫) その11

(ネタバレ注意!プレイ予定の人は読まないでください。)

 暗い通路を静かに歩いていたが、豪華な衣装を身にまとったスケルトンが剣を振り上げてやってきた。この衣装は寺院の司教が着ていたものだ。これが正体か!
 カンパネラから教えてもらった魔法を使うと、護符は見事に作用して、スケルトンはシューシュー音をたてて消滅した。あっさりボス撃破だぜ。

 通路の最奥に到着してそこに書かれた謎のメッセージを読み上げると、突然、異次元空間に飲み込まれた。
 次のパラグラフは書かれていない。オルセンの塔で手に入れた羊皮紙の謎を解いてそのパラグラフに行かなければ、ここで詰みとなるのだ。
 困った。この手の謎解きは苦手なんだよな。
 羊皮紙の内容はイラストで描かれている。一見すると迷路のような模様が中心に書かれており、その周囲に月や太陽や怪物などの絵がいくつも描かれている図柄だ。
 この本の前の所有者も迷路と思ったらしく、エンピツで道をたどったような書き込みがあるが、特に数字が浮かび上がるわけでもないようだ。そもそも迷路ならスタートやゴールの表示がないのがおかしい。謎のメッセージ「月の神が怒れる陽の神とともに頂へのぼり……」がスタート地点の暗示かもしれないが。
 悩みつつ、ヒントはないか作者あとがきを読んでみると、この謎は老師オルセンに鍵があるらしい。オルセン、おるせん、折る線……。なるほど。
 近くのコンビニでイラストをコピーして、メッセージの意味に合わせて折っていくと、952の数字が浮かび上がった。
 んー、パラグラフ952はないなぁ、と思いながら、ひっくり返すと答えがわかった。

 気が付くとまた階段の途中にいた。
 永遠に続くかと思われる階段を下り続けると、円柱に支えられた大広間に到着する。
 いよいよドラゴンの間に続く、最後の試練がやってきた。
 剣の試練「ザロスの間」か、魔法の試練「ヘイムダムの間」のどちらかを選ばないと行けないらしい。
 迷ったときは最初の選択肢──とばかりにザロスの間に向かう。
 その部屋には古代戦士を模した青銅の巨人像があった。慎重に調べていると、唐突に像が動き出して、巨大な剣の一撃が振り下ろされる。
 とっさに魔法の盾を出現させてこれを受け止めると、戦闘を開始した。
 巨人像は本来かなり手ごわい敵だが、刀鍛冶の爺さんからもらったザロスの剣が像から生気を吸い取っているらしい。
 わずかにふらついた動きをする像を、難なく倒すことに成功した。

 ドラゴンにつながる黄金の扉の前に、下半身は蛇、上半身は美しい女の姿をした生き物があらわれた。
 「ドラゴンの封室へようこそ。わたしはナーガ神のソニア」
 彼女は善竜ラヴァンスに会った次にすることは、ラヴァンスにかけられた力の封印を解く為に、ミルデルムントの高峰にある神殿に向かう必要があると助言してくれる。
 さらにはザロスを倒した勇者として、戦闘での敵に与えるダメージを毎回1/2の確率で、3にアップする祝福を授けてくれた。

 女神に礼を言い、黄金の扉を潜り抜けると、そこには求め続けたもの。赤銅色に全身を光らせた巨大なドラゴンが座してこちらを見ていた。
 何も言葉を発しないが、その眼には明らかに知性が感じられる。
 ラヴァンスの背中の鞍に乗ると、竜は翼を2・3回力強く羽ばたかせ、大轟音と共に井戸のような縦穴を舞い上がった。
 縦穴から外界に飛び出すと、夕空に星がまたたく光景が視界全面に広がった。久しぶりに味わう新鮮で冷たい空気を吸うと、竜に北へ向かうよう指示を出す。
 さあ行こう!ラヴァンスの封印を解くため、ミルデルムントの高峰へ。
 
 冥王モーレグとの戦いはこれからだ!


完 (ご愛読ありがとうございました。山口プリンの次回リプレイにご期待ください。)


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 最後の2つの試練は、今回のリプレイではどちらにも対処できる状態で挑んでいましたが、ヘイムダムの試練の方は対抗する呪文を使うタイミングがわかりにくく、そちらを選んだら恐らくゲームオーバーになっていたと思います。ちゃんとヒントはあったので自分が鈍いだけですが、クリア後に関連パラグラフを一々確認して、やっと意味がわかった感じでした。
 解法さえわかっていれば、こちらのルートはMANORAのコントロールの能力(ファイヤーボールがサイコロを振らなくても必中になる)を授かるので、もし2巻以降が出ていれば、ここはザロスの試練とどちらを選ぶか、悩ましい選択だったことでしょう。
 また、衛兵と追いかけっこになる迷宮地帯は、ヒントのおかげでアッサリ抜けてしまいましたが、迷宮にはいろんな罠が仕掛けられ、個人的に気になっていたBEURIOの呪文の唯一の見せ場があるとか楽しいシーンがあるので、リプレイのネタ的にはスルーはちょっと勿体なかったかも。それに唯一の双方向部分として衛兵と何度も戦うこともできるので、体力さえもつなら、わざと迷ってここで経験値を稼ぐ手もあるかもしれません。(もっとも、経験値による成長は1巻の最後なので、現状では無意味ですが。)

 さて、全体的な感想ですが、ソーサリーとの類似の多さは確かに感じますが、もちろん良い点も共通しているわけで、本作単体で考えれば文句なしの良作です。
 1巻クリアに必須なのはカンパネラから教えてもらう呪文と護府だけで、これさえ確保できれば他は好きにルートを選んでも、知らない内にゲームオーバー確定になる心配はなく、情報不足やアイテム不足でかなり不利にはなることはあっても、一応クリアは目指せるゲームバランスは、実に私好み。
 また、その気になればルート選択や敵との遭遇でも魔法や交渉や行動次第で、剣を使った戦闘の大半は避けることが出来ます。クリアまでにどうしても剣を抜くことを避けられないのは、ソーサリーの1巻(魔法使いでのプレイ時)と同じく1回だけでした。
 さらに、和製ゲームブックの中で比較すると、TVゲームを意識した作品が多い中、ラヴァンスはイラストも含めて、洋物ゲームブックに近い雰囲気で製作されている貴重な作品です。また、この後の主人公はドラゴンと一緒に冒険するという、類のないとまでは言わないまでも(※)珍しい展開ですから、もし完結まで発売されていれば、シリーズ全体としてはソーサリーとの差別化はそれなりに出来ていたのではないでしょうか。

 今回は、ラヴァンスで味わう久しぶりの王道ファンタジー冒険に、これこそゲームブックだよ!という気分に浸りながら気持ちよく遊べました。パンタクル3よりも可能性は低いことはわかっていますが、滝日省三さんに続編を是非書いてください!とお願いしたいものです。
 最後に余談ですが、作者あとがきによると、シリーズの重要キャラとなる老師オルセンは本巻にすでに仮の姿で登場していて、オルセンの置き手紙があった塔内のイラストにそのヒントがあるそうです。該当のイラストをみると、冒頭で出会った老人が着ていた服に同じ模様があったので、やはりあの老人がオルセンで正解なんだろうな。



※ 巨大ドラゴンが仲間になるゲームブックは他に双葉文庫の「未来神話ジャーヴァス 救世主の章―新世紀を救え!」があり。あとがきで作者が「次回はゲームブック史上初の空中戦が用意されている」と書いていましたが、実はそれもジャーヴァスでお互いがドラゴンに騎乗してドラゴンブレスを吐きながらの空中戦を先にやっています。


山口プリン |HomePage

My追加