冒険記録日誌
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2016年06月04日(土) ゲームブックはどんな人たちが書いたのか

 今週は10年以上ぶりに「青函トンネル大迷宮」を遊んでいました。
 作品の感想は2005年6月1日の冒険記録日誌に書いたとおりですが、今回の再読では作者の雅孝司さんの後書きが興味深く感じました。
 1984年に朝日ソノラマが日本初のゲームブックを出版、続いて社会思想社から翻訳もののゲームブックを出して、ゲームブックブームが本格化して多数の出版社がゲームブックの出版に追随・参入。しかし、ゲームブックはまったく新しいジャンル。瞬く間に百数点も出版されたゲームブックは、いったいどんな人たちが書いたのか?ということを書かれているわけです。(本書の発売は1986年2月)
 雅孝司さんによると翻訳ものを除くと、ゲームブック作家には二つの流れがあるそうで、一つはパソコンゲームソフトのプログラマー、もう一つはクイズ作家だそうです。
 ちなみに雅孝司さん自身は、自分はどちらでもない、パズル作家と主張しています。クイズ作家との違いが判らないな。その違いは説明すると長くなるので割愛と書いていますが、やっぱり同じ括りでいいんじゃないかと思いますね。
 いずれにせよ、1985年まではいわゆるプロの著述家(作家・エッセイスト)によるゲームブックは存在しなかった。ところが江戸川乱歩賞作家の鳥井架南子さんの「悪夢の妖怪村」、ついでに講談社からも乱歩賞作家によるゲームブックが出た(「ツァラトゥストラの翼」のこと)ことになり状況が変わった。これによりゲームブックが書籍、作品として認められるかどうか、非常に注目されると書かれていました。

 なるほど。これを読んだあと現在までのブームのその後を考えますと、残念ながら、現状でゲームブックが世の中で一般的な一ジャンルとまでは認められていないですね。
 自分の想像で思うに、当時はまだゲームは子どものものという風潮が強かったので、最初のブームが落ち着いて淘汰が始まると、ゲームブックは必然的に子どもをターゲットしたものだけが生き残った。つまり小説よりファミコンと同じゲームカテゴリ扱いで落ち着いたというところではないでしょうか。
 ここで先ほどのゲームブック作家の分類に基づき、私から見た感想を分類別に一言書いてみます。

1.プログラマータイプ
 間違いなく鈴木直人氏が最高峰です。(鈴井氏を知る某人から以前聞いた内容からも鈴木直人氏は実際にゲーム開発をしていたようです。)
 ゲームブックのある意味頂点なのですが、ルールやシステムが複雑化なものが多いので、マニア向けとされ、とっつきの悪さが難点です。
 現在ではこのタイプの作家の作品の新作は少ないと思われますが、私はパンタクル3の発売を今でも待っています。

2.パズル作家タイプ
 フーゴハル氏や脱出ゲームブックを出しているSCRAPを思うと、現在人の好みにも対応する作品を出せる貴重なタイプな気がします。
 ただ、私はパズル系は苦手なんだよね。例外的に林友彦さん作品に出てくるような論理パズルは好きなのですが。でも、林友彦さん自体はプログラマータイプかな。

3.作家タイプ
 例としては森山安雄さんの「展覧会の絵」が代表といえます。
 乱暴に言えば、ルールやパラグラフ構造のシンプルなゲームブックを書く人は、全部これじゃないかともいえるので、実際はこのタイプが一番多いと私は思っています。
 作品の出来栄えの方も一番ピンからキリまで幅広く生み出すタイプです。
 雅孝司さんの後書きでは大物作家を引っ張り出していましたが、それは例外的なケースで実際には、ゲームブックブームにのって尚且つ子どもをターゲットということで、安く書いてもらえる作家の卵みたいな方に書かせていたのが大半じゃないでしょうか。中には名作もありましたが、双葉文庫みたいな玉石混合状態でしょう。
 現代では、出版社がわざわざ作家の卵にゲームブックの執筆を依頼するのは稀でしょう。はやみねかおるさんや津村記久子さんみたいなプロ作家が、意表をついてゲームブックを出してくるイメージです。

4.純粋なゲームブック作家
 後書きには書かれていない、もしくは後書きを書いていた当時には存在しなかったタイプです。いわゆる初めからゲームブックを書きたくて書いた人です。
 かつての創元推理文庫のゲームブックコンテストに投稿した人は大抵このタイプでしょう。現在でも同人を中心に活発に活動されている方が沢山いらっしゃいます。
 ブーム当時の作家の卵作品に近いので、玉石混合状態になっている印象です。
 ただし、ゲームブック愛によって、営利を超えたとんでもない作品が生まれることもあるのが特徴。例えば「永劫選択」というゲームブックは、そのあまりもの大容量と独特な内容に、個人的にはアウトサイダーアートの域だと思っていますから。(良い意味で)

 以上のように思うままに書きました。
 他に雅孝司さんの後書きでは、ゲームブック歴もしくは年齢があがるほど、ストーリー重視のゲームブックが好まれる傾向にあると書かれていましたが、実際のブーム当時は次第に複雑化の方に進化してしまいましたね。これがストーリー重視にシフトしていたら、ゲームブックブームはまた違う展開になっていたのだろうか。私はパズル系とアニメや特撮タイアップものがやや苦手なくらい(クリアできなからと、原作を知らないと楽しめないから)で、ゲームブックのストライクゾーンが広いので、両方のタイプとも新作は歓迎しますがね。
 どちらのタイプにしても、ブーム当時と違って、営利的にはゲームブックを書くことは、普通の小説やエッセイに比べてまったく割に合いません。4以外のタイプでも現代でもゲームブックを書いている人の動機は、ゲームブックファンだからじゃないでしょうかね。
 というわけで、現在のゲームブック作家を支えるキーワードは、ゲームブック・ラブだ!ということで〆ておきましょう。


山口プリン |HomePage

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