冒険記録日誌
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2016年04月17日(日) 愛の矢は誰に?(雅 考司/朝日ソノラマ) その1

 朝日ソノラマのハローチャレンジャーシリーズの第11作目。
 このレーベルは幅広いジャンルのゲームブックが揃っているのが特徴ですが、なんと本作の主人公は恋のキューピット!!これは新しい!いや、30年前の出版なんだけども!
 巻末の作者コメントによると、「ファンタジーといえば、剣と魔法でモンスターを倒すという、ワンパターンからは脱却したかった」とのことですが、この発想はなかったです。どちらかと言うと女の子向けゲームブックという印象ですね。
 ストーリーは見習いキューピットが正式なキューピットへの昇格テストに挑戦するという内容で、主人公は人間に化けて人間界へ潜り込み、素敵なカップルを成立させていきます。
 登場人物の中にはまれに腹黒い奴もいますが、主人公の性格がノー天気でポジティブなこともあり、全体的にほんわかした世界観でして、藤浪智之(わきあかつぐみ)さんのゲームブック(「バニラのお菓子配達便!」とか「銀河宅急便」とか)みたいな気持ちの優しくなる世界観です。表紙と挿絵もこの世界にぴったりあった雰囲気の絵柄になっていて、いい感じです。
 ただ、それだけに恋人になった2人の描写がない点がとても残念。カップル成立すると「このカップルの相性は7点です。」のような無機質なナレーションが出るのみなんですよね。男女6人ずつの恋人候補の中からカップルを成立させるので、全ての組み合わせの結果を書くのは大変とは思いますが、雰囲気重視の作品だけに、一番達成感があるはずのこの場面は手を抜かないでほしかったなぁ。
 あと、80年代の東京が舞台だけに、今読むと時代を感じさせる描写が多いのですが、さすがに仕方ないか。
 具体的なゲームの流れも書こうかと思いましたが、雰囲気がわかりやすいリプレイ形式の方で紹介しようかと思います。
 以前遊んだときは、主人公が人間の男の子とカップルになるという、比較的簡単に到達できる恋愛エンドで、まだあまりやり込んでいない状態です。今回はベストエンドであり難易度が最も高い大天使エンドを目指しますよ。

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 私のキューピット見習いのルピア。普段は天界に住んでいるんだけど、人間でいうとティーンエイジでなかなかの美少女……と自分では思ってる。
 今日はキューピットの実施試験なの。雲の宮殿の奥に通されると、そこには長い衣を身にまとった女神フィラリス様がいらっしゃった。
「あなたもそろそろ正式キューピットになる年頃です。地上に降りてカップル作りの実習をするよう命じます。」
 フィラリス様は試験(ゲームルール)の説明を始めた。カップルが成立すると、ニ人の相性によって10点満点でテレパシーであなたに教えます。あなたが天界に戻ったときに点数は1点につき1枚のラブラブカードなります。カップルは最大3組までです。枚数次第で下級・中級・上級天使もしくは不合格の結果になりますよ。

 ラブラブカードなんて商店街のバレンタインイベントみたいね。
 そんな私の心のつっこみもフィラリス様にはしっかりテレパシーで伝わったようだ。フィラリス様はちょっとだけ話しを止め、にっこりとほほ笑んで説明を再開した。まずいまずい。

 キューピット自身の恋愛はルール違反で、あなたはただの人間になってしまいます。それがあなたの望む幸せなのかよく考えなさい。
 同じところへ何度も行き来していると、タイムマシン効果で前と同じことを経験することもあります。(ゲームブックのフラグ問題をタイムマシン効果の一言であっさり片づける女神さま)
 あなたには愛の矢、エリア移動エネルギー、好きと嫌いの魔法という3つの力が使えます。全部で10回分になるよう、あなたの好きなように使える回数を決めなさい。

「あのー、愛の矢はキューピットの力として当然わかりますが、好きと嫌いの魔法はどう違うのですか?それにエリア移動エネルギーの意味がわかりません。狙った男の子・女の子を誘拐してくるのですか?」
 私が思わず質問すると、フィラリス様はまたほほ笑んだ。なんだか、少し馬鹿にされているような気がしないでもない。被害妄想かなぁ。
「愛の矢はお互いを両想いにしますが、好きと嫌いの魔法は、今の状態を反対にします。うまくいかなかったカップルを成立させるだけでなく、カップルを別れさせる力もあるのです。ただし、好きと嫌いの魔法は片方の相手にだけ有効です。またエリア移動エネルギーを使われた人間は、移動しなければならない用事が発生するのです。つまりカップル候補がお互い離れていても、偶然のように相手に出会うようになるのです。」
 ふーん、相性点の低いカップルが出来てしまったら、別れさせてやり直してもいいわけか。当人たちはキューピットに振り回されて、ちょっと可愛そうな気もするなぁ。

 フィラリス様の前から退席した私は、使える力を愛の矢を3回、エリア移動エネルギーを4回、好きと嫌いの魔法を3回に決めた。
 そして霞ほのかという人間の女の子として、人間界の東京に舞い降りたのでありました。


続く


山口プリン |HomePage

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