冒険記録日誌
DiaryINDEXpastwill


2016年04月02日(土) 魍魎戦記マダラ─聖なる反逆者─(高木成一、犬飼わたる/双葉文庫)

 ファミコンゲームRPG「魍魎戦記MADARA」を原作としたゲームブックです。
 原作といってもファミコン版「魍魎戦記MADARA」自体、「マル勝ファミコン」というゲーム雑誌に連載されていた同名少年漫画を原作としたもので、これはコテコテのバトル系少年漫画です。世界観の設定にどことなく仏教的なものがあるファンタジー世界が舞台になっています。
 主人公のマダラは手足等がなく、ギミックという超文明のテクノロジーでできた義体で補っている存在で、チャクラというものを所有している魔物を退治すると、本当の体の一部が戻ってくるという設定があって、手塚治虫の漫画「どろろ」の舞台設定を変えた作品と思うとわかりやすいです。
(マダラはシリーズものとして、外伝的な別ストーリーやら、魂が転生して舞台が現代社会になった話しなど、いろいろ複雑に展開していたようですが、ここでは無関係。)
 私は漫画もゲームも知らなかったのですが、ファミコン版の制作者が私の好きな「クロちゃんのRPG千夜一夜」を書かれた黒田幸弘さんなんですよね。
 黒田さんが「RPG製作ノート Making of MADARA」という本でこのゲームの製作模様を語っているのを読んでいたので、(私の愛読書。しかもこの本のイラストは千夜一夜と同じ中野豪さん!)前々から原作の大まかな内容はわかっていました。

 さて、ここからはゲームブック版の感想です。
 最初はリプレイ仕立てで紹介しようかとも思ったのですが、この世界の敵は禍耳幽羅(カジューラ)だの妖焔候戊倭主(ヨウエンコウボイス)だの、仰々しい名前がついていて、いちいち書くのがめんどくさいのでやめて普通に書くことにしました。
 本書でまず目につくのはイラスト。
 表紙カバーの絵はファミコンソフトのものを流用しているようなので問題ないのですが、本文イラストが3等身キャラなんですよ。
 原作漫画の特徴である、線の細いシリアスタッチで描かれた絵柄と真逆で、世界観ぶち壊しです。これはむごい。
 絵柄が合わないだけでなく、ギャグも入れて追い打ちをかける念の入れようです。例をあげると、人間が魔物の皮をかぶって偽装していたのが判明したというシーンでは、着ぐるみのジッパーを開けて人間が出てくるイラストになっています。中ボスの手前にラーメンが描いてあるイラストは、本文では真面目な中ボス登場シーンで、もちろん直前までラーメン食べていたなんて書いてない、といった具合です。
 双葉ゲームブックで、たまにある悪いパターンですね。同じ双葉の桃太郎シリーズならこのイラストでぴったりなんですが、マダラでこれはないわ。
 
 イラストのおかげで印象が悪くなったのですが、本文はギャグではないので遊んでみた感じでは普通でした。マダラはもっと本格的な小説仕立てのゲームブックにした方が合っていた気がしますが、小学生向けに無難にまとめた感じです。
 一方向システムのゲームブックで、各エリアごとにマダラの体の一部を持つ中ボスが登場するので、RPGというよりアクションゲームが原作みたいに思えます。
 ファミコン版では入れ替わりで仲間になる登場人物が結構いたようですが、こちらはヒロインのキリン以外には、カオスしか仲間が登場しないので、ファミコン版のファンにはちょっと寂しい感じです。それにファミコン版ではマルチシナリオが売りだったらしいのに、ストーリーがほぼ一本道というのも気になるところ。
 ただ、ゲームブック1冊の容量でファミコン版の全てを詰め込むのは難しく、マダラが体を取り戻す過程がある都合上、中ボスたちの存在は減らせないので、こうなるのは仕方なかったのかもしれません。

 ゲームルールは戦士度と体力の2つの能力値管理の他に、秘術(RPGの魔法にあたるもの)やチャクラポイント(取り戻した体を表す数値で能力値というよりフラグチェックの役割)と多めで、メモは必須です。
 戦士度は経験値というより、戦士としてのモラルみたいなもので、戦闘に勝つだけでなく選択肢の行動でも上下します。体力の方は0になると死亡しますが、戦闘力に影響するうえ回復する機会が限定されます。サイコロやバトルポイント表のようなランダム要素はないこともあり、特に前半は数値が減るほど戦闘に負けやすく、ジリ貧になっていずれゲームオーバーという悪循環に陥りやすかったです。
 途中、単調な通路が続く迷路が2カ所あるのはどうかと思いましたが、マッピングせずとも左手法であっさりクリア。先日に無限ループ迷路のやたらある某ゲームブックを遊んだばかりの私にとっては楽勝ですよ。

 4度目の挑戦でクリア。ラストの展開は漫画版とファミコン版でかなり違うのですが、ここはファミコン版の展開でした。
 作者後書きでは、漫画版とファミコン版のギャップを埋めるのに苦労したような事が書かれていました。そもそも出版社もファミコン版という移植をさらに移植という面倒くさいことをせずに、素直に漫画版を原作に企画すれば良かったのに。いったい権利関係はどうなっていたんだろう。


山口プリン |HomePage

My追加