冒険記録日誌
DiaryINDEXpastwill


2016年03月13日(日) 戦闘宇宙艇SRV4−B シャングリラ作戦(ワールドフォトプレス/光文社文庫)

 ゲーム開始前が長いのが特徴のワールドフォトプレス作品。今回の前フリは46Pとやや抑えめですが、それでも十分長いです。
 米ソ対立の緊張感が続く発売当時からみた近未来のストーリー。今となっては懐かしいスターウォーズ計画が実現している設定のゲームブックです。
 内容的には軍事使用の宇宙基地に潜入して、テロリストの計画を打ち砕くというものですが、読んでいると主人公の冒険活劇より、米大統領など政界人達の策謀がメインという気がしますね。少なくとも主人公が死亡してからも、10パラグラフくらい長々と世界の破滅のシナリオが展開されるような作品は他にないでしょう。
 ゲームのルールは、2つの能力値による判定表を使った、他のワールドフォトプレス作品と同じものですが、作品のゲーム性は最悪です。
 問題点として、一つには9割くらいの判定は一度でも失敗すれば、バッドエンド確定ということが挙げられます。失敗すると即ゲームオーバーにならなくてその後の判定に成功したとしても、結局任務は失敗。主人公が死んだか生還できたか、くらいの違いしかありません。どっちにせよ世界は核戦争突入です。
 しかし、それよりも凄いのは選択肢が少ないこと。全パラグラフ数が132のゲームブックで、選択肢がたった2つですよ。
 他の分岐は全て戦闘やトラブルに対して、サイコロ判定による分岐なので、読者ができるのはサイコロを振りながら見守るだけです。
 世界観自体は実際のスターウォーズ計画を参考に作られたと思われる凝ったもので、敵の正体が後続の「オルフェウス作戦 海上原子力発電所を奪回せよ!」につながっている小ネタも興味深いですが、この非インタラクティブぶりには、そんなものなど完全に影になっています。ゲーム性より世界観メインで楽しむならありですが、それだとゲームブックでなくてもいいや、という話しになりそう。
 試しに判定は全て成功したことにして進めると、ストーリー的には狭い宇宙船内の話しだからなのか、あっさり終わってしまいました。やや難解でわかりにくいプロローグをじっくり読んでいた時の方が時間がかかった気がするくらいです。
 畑違いのルポルタージュ作家が、無理にゲームブックを書いたらこうなるのかなぁ、と考えさせられ、次に編集部は気にしなかったのかと、ここまでくると逆に感心してしまいました。
 でもまあ、同レーベルの「サバイバル 東京ひとり暮らし」や「一緒にアクシア 大遺産を探せ!」まで含めて考えると、そもそもゲームブックとはなんなのか編集部も理解していないまま、当時のゲームブックブームに乗っかっただけなんだろうなぁ。


山口プリン |HomePage

My追加