冒険記録日誌
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2016年03月12日(土) マネーゲーム きみも億万長者になれる(RED BOX/光文社文庫)

 タイトルでわかるとおり、30万円を元手に株や商売などで金を貯めて、資産1億円を目指すという内容です。
 先日に感想を書いた、同じRED BOX作品「サバイバル 東京ひとり暮らし」の第二弾的に作られている感じなので、ハウツー本っぽい要素も多少は残っているのですが、今回は資産1億円という明確な目標があって、選択肢もまともなので、ちゃんとゲームブックとして遊べる出来になっています。
 逆にハウツー本としては、基本的にハイリスクハイリターンな金策が多いので、実践するよりゲームとして遊んだほうが無難です。作者ですら、やり直しがきく若者が挑戦するべきで、オジンが退職金を元手に実践しようと考えてはいけないと警告をしているくらいですから。

 序盤は雀荘の店員やスナックのボーイなどでバイトをして、資金を地味に増やし、次第に商売や株、いずれは不動産や先物取引などに手を出していくのが大まかな流れです。
 ルールなしの分岐小説なので、資産のチェックは必要なし。各パラグラフの最後には必ず太字で現在の資産額を表示してくれています。遊びやすさ優先で単純化しているので、一度にできることは株なら株のみ、商売なら商売のみ、と複数の財テクを同時に駆使することはできません。
 ゲームの進行は、例えば株取引に挑戦した場合、現在担当してもらっている証券マンにどんな情報があるか聞いたうえで、どの株を買うか?もしくは売りか買いか?などの選択を何度かします。株取引もある程度落ち着きが見えたら清算。その結果、資産が増えていれば次は不動産取引や先物取引に挑戦するか?という選択肢になり、損害が酷ければ残った資金でどんな商売を始めようか?といった選択肢といった具合になります。
 ゲーム的に言うと、だいたい資産が200万円の時や1400万円の時、などで段階的にいくつかのステージが用意されており、成功失敗で次のステージに上下するような感じですね。(ちなみに前のステージの結果で残った資産が、400万円とか半端に多いと遊びまくって少し休憩しようとか、逆に177万円とかだと生活費から足しておこうとか言われて、強引に200万円スタートのステージに移行します。)
 このためゲーム性は「サバイバル 東京ひとり暮らし」よりはむしろ、ファミ通ゲーム文庫の「ダービースタリオン」(2011年5月3日の冒険記録日誌参照)に近いといえるでしょう。

 無機質な相場情報だけでなく、女の子と仲良くなったり、証券取引の達人とされる老人に教えを乞うなど、添え物程度でもストーリーが展開されるので読みやすくていい感じです。また、株の銘柄などで多くの企業が実名で登場するのも、イメージが沸きやすくて何気にポイント高し。
 ただ、バイトをすればソープ嬢と同棲を始めることになるし、商売のため英会話を覚えないといけないとなると、風俗店の外国人の女の子にベットの上で教えてもらうことになり、せっかく起業した商売が軌道にのったのに、雇ったインストラクターの女の子達と遊び過ぎ、これまた以前手を出した女子社員らにつるし上げを食らって退社になるとか、この主人公は肉食系すぎます。
 もっとも、仮にも億万長者を目指すという人間は、これくらいアグレッシブな性格がないとやっていけないのかもしれません。でも中には、田舎の一軒家を買ったうえ小説家を目指すとか、自己啓発に取り組んだあげく占い師をするようになるとか、金策から盛大に脇道に逸れる選択肢があるのも面白いです。
 また、財テクの種類はいろいろ出ますが、詐欺などの非合法なものは基本的になし。風俗店絡みや金の取り立てみたいなスレスレの商売はありますが、大抵最後は本業のヤの方々に叩きのめされて終了といったオチがついています。
 本作の欠点としては、分岐のないパラグラフ移動が多い中、ここで選択肢を入れてくれ!といいたくなるシーンが時々あること。
 さっきのスレスレの商売でも、そろそろ撤収した方がいいとプレイヤーが思っても叩きのめされる展開まで進んでしまうし、詐欺にあった展開では、続いて「奴らから金を取り返します」という人間が登場するわけですが、プレイヤー的に胡散臭いと思っていたのに、主人公が信用して準備金を渡してしまい案の定逃げられ二次被害にあってしまうという始末です。
 あと資金が900万円あたりになった時の展開が酷い。次の財テクの選択肢が、埋蔵金発掘かM資金という2択ですよ。どっちも破産フラグにしか見えませんってば。

 最後は終盤の金策によって結末のかわるマルチエンディング方式ですが、どれも一億円達成もしくは達成は確実になるという同じような内容です。ただ、やったぜ!という感じで終わるものもあれば、札束ベットを本当にやって寝ころんだが思ったより空しかったとか、主人公のテンションが全然違うのはなぜなんだ。
 ちなみに山口プリンは、最初のプレイでいいところまでいったのですが、終盤の先物取引で失敗すると、ステージダウンどころか一気に破産という、先物の恐ろしさがよくわかるゲームオーバーになりました。何度目かの挑戦で資金が十分に増えたところで「ビッグ」「信用貸付」「中国ファンド」などの比較的手堅いものを使って、やっと1億円突破できましたが、あなたはオモシロ味のないタイプになっているはずだ、会社じゃケチといわれているだろうとか、作者に難癖つけられました。
 本作の発売(1986年)の後、バブル経済は崩壊したわけですが、果たして本書のようなことを実践した読者は生き残れたのでしょうか。

 と、こんな内容ですが、山口プリンはなんだかんだいいつつ、本作を気に入ったので何度も挑戦しましたし、パラグラフのところどころに挟まっている過去の実例をあげた財テクコラムも全部楽しく読みました。
 これは現代版にリメイクするのもありなんじゃないですかね。内容もルールも手軽で、Kindle版で配信するのにも丁度いいと思いますよ。誰か企画してみませんか。
 


山口プリン |HomePage

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