冒険記録日誌
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2014年01月03日(金) |
もしもソーサリーがライトノベルだったら その3 |
「時間の無駄だよ、僕のそばで魔法使っても」
小妖精がせわしなく羽音を響かせながら悪戯小僧のようにクスクスと笑った。旅を再開したあなたと遭遇した、この指一本くらいの大きさの生き物は何が気に入ったのか、いっこうに離れようとせず。自分のことをミニマイトのジャンと名乗り、先程からぶんぶんとあなたの周囲を飛び回っている。 うるさいだけで実害はないと思っていたら、どうやらこいつは魔法を無効化するバリアなようなものを持っているらしい。とんだ疫病神だ。魔法を使って追い払おうとしたが当然のように効かない。
「魔法が効かないなら、捕まえて捻りつぶすよ!」
アリアンナもいらただしい気持ちらしく、先程から何度も首根っこを捕まえようと手を出すが、軽く避けられてばかりいるのだ。
「いまいましい。あたいはお前みたいなチビ妖精を連れて行くと言った覚えは一度もないんだ!」
それは君に対しても同じなのだが。と、あなたは思った。 アリアンナの家を出ようとしたあなたに、アリアンナは旅の同行を申し出たのだ。いや、申し出たのではなく、有無を言わさずついてきたと言った方が正しい。 この旅は遊びではない危険な任務だと説得したのだが、この森では刺激が少ないからと気にする様子もない。檻の中に閉じ込められたことは、彼女にとって刺激的な部類には入らないらしい。 しかたなくこの奇妙な3人連れで旅を続けることになる。 魔法が封印された状態ではかなりの危険が想定されたが、旅そのものは概ね順調だった。一度、全身黒づくめの暗殺者が襲ってきたが、ジャンの警告で不意打ちはまぬかれたし、アリアンナから借りた「剣術熟達の腕輪」のおかげもあり、剣術だけでねじ伏せることができた。暗殺者は殺さずに解放してやると、彼はフランカーと名乗り、感謝しながらまた闇に消えた。
「ほんとにお前は、お人よしだな」 「いいんだ。不必要な殺生はする理由がない」
いくつかめの村にたどりつき、疲労回復効果のあるという滝で小休止をとることにする。 村人に金貨を払ってタオル代わりの布切れを受け取り、滝の轟音が響く広い滝つぼに入る。アリアンナは「覗くなよ。覗いたら殺す」などといって水しぶきの奥に姿を消した。 あなたは手近な岩に腰掛けると身体を休める。慣れない旅で消耗した体力が戻ってくるのを実感できていい気分だ。 しばらくするとアリアンナが、体に布を巻きつけた格好で戻ってきた。あなたを軽く睨みつける。
「覗かなかったな。つまらない男だ」
どうしろってんだ? 思わずあなたはジャンと顔を合わせたが、あなたが妙な表情をしていたのか、ジャンは何も言わずニヤニヤ笑っているだけだった。
続く
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