冒険記録日誌
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2014年01月11日(土) |
もしもソーサリーがライトノベルだったら その4 |
その夜は宿で一泊をしたあなたたちは、翌朝早くから旅を再開する。それから断っておくが、もちろん部屋は別々にした。 ジャンとアリアンナが、ブラックロータスの花を避けるかどうかでもめた他には、平和な道中が続く。 午後になり、道沿いに丘の斜面を登っていくと、またジャンとアリアンナが口論を始め、あなたはいらいらしてきた。 やがて、ぽつんと一軒の小さな小屋が立っているのにさしかかった。小屋の周囲には、いろとりどりの花が植えられ、辺境とは思えない明るい雰囲気をただよわせていた。戸口の小さな階段にちょこんと、女の子が腰かけている。 遠目に見ると、近づいているあなた達に向かって手招きしているようにみえる。ジャンがあなたを見上げて気遣わしげに言う。 「回り道のあとは寄り道するつもり?そんな調子じゃ、いつまでたっても目的地なんか到着しないからね。ここは無視して進もうよ」 「さっきのは回り道なんかじゃねぇ。近道したけりゃ、てめぇ一人でブラックロータスに埋もれて死ぬまで寝てればよかったんだ!」 アリアンナがジャンに怒鳴ったが、あなたにもビシッっと指をつきつける。 「だがな!寄り道するなってのだけは同意するぜ。こんな人里離れた場所に住む女がまともなわけがない。誘いにのったら、絶対酷い目にあうからな」 そうだな。確かにそうかもな。ウッドゴーレムをけしかけられたりとかな。
「こんにちは〜。道中疲れたでしょう〜。少し休憩していってはどう〜?」 家の前まで近づくと、妙に間延びした声で女の子は声をかけてきた。年は14・5歳に見えるだろうか。ずきんのようなものをかぶっているが、その下に見える顔は可愛く、少しぽっちゃりした健康的な娘だ。 仲間に言われるまでもなく急ぐ旅ではあるので、丁重に断わって旅を続けようとすると、背後から電撃が襲ってきて目の前の地面が焦げたので、気が変わって招きに応じることにした。
確かにまともじゃなかった。だいたい、ジャンがいるのになんで魔法が使えるんだ?
小屋の中に入ると、娘は清潔なテーブルにいそいそとカップを並べ、お茶の支度をはじめた。こんな寂しい場所でなぜ暮らしているかなどいろいろ尋ねたが、娘は自分のことをガザムーンと名のったものの、他の質問は笑って答えようとしなかった。 「美味しく出来たわ。さあ、召し上がれ〜」 「怪しすぎるわい!」 アリアンナが我慢も限界だという風に叫ぶと、ビシッと、ティーカップを指差した。 「この紅茶!毒が入っているんじゃないか?いや、間違いなく入ってるね。あたいだったら入れるところだからな。こっちのカップをもらうぜ」 いうやいなや、ガザムーン本人の分のティーカップを奪い取ると、一気に飲み干す。たちまち顔が青ざめて、小屋の外に飛び出し吐き始めた。 ガザムーンはくすくす笑いながら、ちょっと舌を出した。 「あらあら、かわいい人ですねぇ。そうくるかなぁと思って、わざと私の方ににがい薬を入れておいたのですよ〜。うふっ、お出しした方は大丈夫だから、そちらの色男さんは、安心して召し上がれ〜」 安心できねぇよ!と、内心つっこみながらも、平静を取り繕ってお茶に口をつけると、なるほどこちらはちゃんとした紅茶だった。
ガザムーンは本当にお茶会をしたかっただけらしく、それ以上は引き止めようとはしなかった。 茶の礼を言って立ち去ろうとするあなたにガザムーンは、羊皮紙を丸めたものを差し出した。カーレに立ち寄ることがあるなら、ついでに配達をお願いできないかと言うのだ。 「ロータグというお爺ちゃん学者さんに渡してね。これを無事渡せたら、ちゃんとロータグさんからお礼がもらえるわよ〜」 「なんか怪しいなぁ」 「うふふっ。ミニマイトは私大嫌いなのよ〜」 ガザムーンが笑うと、ジャンも慌てて外でふてれくされて待っているアリアンナのところまで飛んで行った。
続く
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