冒険記録日誌
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2014年01月02日(木) |
もしもソーサリーがライトノベルだったら その2 |
一夜を野宿したあなたは、人里はなれた谷を抜ける途中で一軒だけ建った民家を発見する。 中に入ると、うら若い乙女が小さな檻に閉じ込められているではないか。エプロン姿からして、恐らく彼女がこの家の住民なのだろう。細身の体に、犬用の首輪と鎖とで檻につながれている姿が痛々しい。
「私はアリアンナといいます。助けてください。いたずらな妖精が、私を檻に閉じ込めたのです」 「それは大変。この程度の鍵など魔法ですぐに開けてみせますよ」
あなたの短い詠唱で、たちまち首輪ははずれ、檻は開いた。アリアンナが檻から出てくる。しかし彼女は立ちあがって伸びをすると、高笑いをしてあなたを指差した。さっきまでとはまるで別人のような態度だ。
「ありがとう、あたいを檻から救ってくれて。でもどうせお前も物取りの類だろ。お礼にこんなのはどうだい?」
彼女が椅子を指差すと、椅子はたちまちウッドゴーレムに姿を変え襲いかかってきた。なんてこったい。 急いで呪文を唱え、強烈な火の玉をゴーレムにぶち当てると、ゴーレムは枯れ木のように燃えさかってもがき始めた。ゴーレムから飛び火した火が家の家具に燃え移る。 アリアンナが悲鳴をあげて消火しようとするが、なかなか消えない。思ったより火の広がる勢いが強く、このままなら家は全焼する勢いだ。 ま、因果応報ってやつだな。 このまま踵をかえして、恩知らずの家から立ち去ろうとしたのだが。
「くそっ、手伝ってやるよ。水はどこだ」
2人かかりの初期消火によって、調度品の一部が焼け焦げた以外には大きな被害もなく火は鎮火した。ゴーレムも焦げた椅子に戻っている。アリアンナは不思議なものでも見たような目つきであなたを見た。
「どうしてあたいを助けたんだい。こっちはいたぶってやるつもりだったのに」 「人里離れたところに一人暮らしの女性。用心深いのも仕方ないさ。見捨てるなんてできないよ」 「ちぇ、調子くるうな。いいさ、2度も助けてもらった礼だ。飯くらい食っていけよ、お人よし」
アリアンナは困ったような表情で、床をつま先でつつきながらつぶやくように言った。
続く
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