冒険記録日誌
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2013年09月24日(火) 完全犯罪ゲーム(桜井一/西東社)  その2

※警告!今日の日記にはネタバレがあります!プレイ予定の人は絶対に読まないでください!※



※今日の日記には完全犯罪となる殺人のトリックを解説しています。くれぐれも現実に応用しようなどと考えないでください!山口プリンはゲームブックファンの良心を信じます!※




 さて、昨日の続きです。主人公の考えた憎むべき完全犯罪のトリックとは以下のとおりです。

1.まずは舞台は郊外にある別荘地帯。金持ち(名前は金田)の別荘の近くに、借金の抵当に入っているとはいえ偶然にも主人公にも両親が残した別荘があります。

2.40cmは積もった雪の日の夜。借金を返すので自分の別荘に来てほしいと、金田をおびき出し酒を飲ませて眠らし、翌朝首を絞めて殺害。

3.殺害時刻はAM7:00。殺害の後にアリバイ作りの為、主人公は窓を開けて道行く通行人に挨拶。
 ついでに金田の荷物から小切手を取り出し、合計一億円分の小切手を3枚ほど自分あてに作成する。

4.AM9:00。遺体をあらかじめ金田の家から盗んでおいた毛布に包む。そして徒歩30分の山道を歩いて遺体を金田の別荘に運び込む。
 あとしまつを終えたら、金田の家から警察に通報し、自分が訪問したら死体を発見したと説明する。

5.いずれ遺体を調べれば死亡推定時刻はわかるが、その時刻には主人公は自分の屋敷にいてアリバイがある。
 また、金田の家には主人公がやってきた時の足跡しか残っていないので、犯行自体が誰にも実行不可能。よってこの事件は自殺として処理されるか、謎の密室殺人となり迷宮入り。

6.ほとぼりが冷めたら小切手を換金して再び裕福な生活に戻る。


 シンプルイズベストを地で行く、なんと大胆な計画でしょうか!捻りすぎてかえって墓穴を掘るいかにもミステリー小説的なトリックよりも現実味があるので恐ろしいと思います。
 金田がその夜の予定や訪問先を誰にも喋っていないこと。別荘に監視カメラなどがつけられてないこと。アイバイ作りのタイミングでは道に運よく通行人がいること。逆に遺体を運ぶ間は運よく通行人がいないこと。警察が「この人、他の場所で殺されたんじゃね?」などとは夢にも思いつかないこと。
 これらの些細な点さえうまくいけば、確かに完全犯罪は達成できそうです。

 しかし、ゲームが始まってから主人公はこのトリックの致命的なミスに気づきます。
 暖かい主人公の別荘から運んできたので、冷たい屋敷で倒れていた遺体にしては暖かいのです。(ただし、展開により事前にこのミスを防ぐ選択肢はある)
 ここは気合の迷路ゲームで正解のルートを選び出し、警察が遺体に触わらないように祈るしかありません。
 ここを切り抜けると続いて、遺体を担いで雪道を歩けば、普通の人の足跡より深く雪にめり込むという至極当然な事実に思い当ります!主人公はこの点を警察に気づかれないかと内心焦っています。読者もつられて思わず、警察の現場検証中にもかかわらず「ホウキで足跡を消す」という斬新な選択肢を選んで、証拠隠滅をはかりそうになってしまいます。
 しかし、主人公が墓穴を掘らない限り、警察は今回もこの数少ないトリックの穴には気づきません。
 こうして優秀な日本の警察をだましきった主人公。確かに犯罪を自慢したくて名探偵を呼ぶ気持ちが出るのも無理ないことかもしれません。

 そして主人公の敵は警察や名探偵だけではありません。それはナレーションです。
 どうも作者は正義感にあふれる方のようで、警察につかまるバッドエンドでは「殺人犯が逮捕されたということは社会的にはハッピーエンドだね」とか「なんとも素晴らしいことだ。正義が勝利し、悪が敗北したのだ。君の刑務所暮らしにカンパイ!」とか散々ないわれようです。主人公が死んでしまうエンドでは「それが犯罪者にはお似合いだ」とまで言われてますし。
 たとえ完全犯罪を達成しても、「犯した罪に自らさいなまれ、一生眠れない日々が続くことだろう。君の暗い、心安まらぬ一生にカンパイ!」とのナレーションとともに、被害者の顔を背景に主人公が頭を抱えるという暗いイラストが出ています。つまり全部バッドエンド?
 ハッピーエンドにする気がない程なら、こんな企画で書くなって気もしますが、ここまで嫌われると、逆に意地でも完全犯罪を成立させてやろうという気になってきます。「どうせ周りが信じてくれないなら、そのとおりにしてやらぁ!」と叫ぶ不良少年の気持ちが良くわかる本です。
 実際、復讐ものみたいな中途半端に犯人に同情する展開の方がモヤモヤしますもんね!
 
 余談ですが、完全犯罪を成立させても、その後に一億円も小切手を使ったら自分が犯人ですって名乗っているようなもんじゃない?という気もしましたが、賢明な主人公のことなので、きっとなんとか乗り越えられるのだと思います。

 主人公の幸多き未来にカンパイ!


山口プリン |HomePage

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