冒険記録日誌
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2013年09月19日(木) サッカー・ゲーム(高橋義宏/西東社)

 わかりやすいタイトルどおり、サッカーを題材にしたゲームブックです。
 野球のゲームブックは数社から出ていますが、サッカーは意外にないです。発売当時はワールドカップ初出場はおろか、まだJリーグも発足していない時期ですから、野球人気に劣るのはしかたないとはいえます。でも、アニメではキャプテン翼がヒットしていましたし、そこそこの人気スポーツだったと思ったのですがね。

 さて、西東社のサッカーゲームですが、舞台はFIFAワールドカップ。
 日本代表チームとして、最終予選(VSフランス)、準決勝(VS西ドイツ)、決勝(VSアルゼンチン)の3試合を全て勝利すれば優勝という、シンプルな構成です。

 これが野球ゲームブックなら、高校野球かプロ野球がせいぜいですが、こちらは派手な世界大会です。
 
 サッカー界では無名の日本が、ここでは世界を凌駕するのです!

 すごいぞ、侍ジャパン!

 ………。

 遊んでみたのですが、こんな派手な大舞台なのに、とても静かな雰囲気がしてしまうのはなぜでしょう?試合会場の歓声が読者まで伝わってこないというか。
 1パラグラフに1ページでイラストと文章がついているタイプのゲームブックなので、臨場感を出そうと思えば出来たはずと思うのですが、なんだかとてもたんたんとした感じでゲームが進行していくのです。
 ゲームには特定の主人公はおろか、監督や選手などでも名前のある登場人物が一切登場しないので、人間ドラマ的な要素はまったくありません。まあ、人間ドラマは無理に入れなくてもいいのですが、架空の選手でも実在選手の名前をもじったものでもいいから、西ドイツには伝説的なキーパーがいるとか、アルゼンチンは○○と○○選手のコンビネーションが要注意だ。と、相手チームの驚異点を具体的に出すと雰囲気がでたのにと思います。

 ゲームルールの方は、能力値などのポイントは一切なく、試合中の得点を記録するだけでいいので簡単です。
 乱数の要素があり、これはサイコロではなく数字を書き込んだサッカーボール型とゴールポスト型の半透明の用紙を使います。このため古本で本書を入手してもカードが切り離された状態だと遊べないことがあるのは難点です。実際はわざわざカードを切り離さなくても、想像でページにカードを当てはめるだけで十分遊べるのですがね。

 ゲーム中は、この状況でどこにパスすべきか?などと、サッカーのセオリーを問うような選択肢が多いです。自分としてはセオリーを重視するなら、個々のプレーだけでなく、チームとしてどんな戦術でいくのかを問うような選択肢もあってほしかったと思います。
 それはそれとして選択肢の結果がうまくいけば、次はシュートのシーンで選択肢、失敗すれば次はカウンターアタックでピンチを迎えての選択肢など、得点を取ったり取られたり防いだりして、また次のシーンに写る感じです。
 しかしなんといいますか。選択肢を間違えばスローイングのやり方を間違えて無様に反則を取られる、なんてこともあり、世界一レベルのサッカーとしてはどうにもレベルが低い気がします。
 派手なスーパーシュートの一つも出せればいいのですが、地味な展開が多いというか。これがもしプロローグで舞台は高校サッカーの大会だと設定されていても違和感がなかったのじゃないだろうか、という気になってきます。

 あと、先ほど書いたように乱数要素があるので、正解の選択肢でシュートしてもゴールを阻止されたり、まずい選択肢でも低確率でシュートが決まったということもあり。
 どの試合も同点なら試合が延長してPK戦のシーンに突入。負けたらゲームオーバー、勝てば次の試合です。
 ちなみにどの試合にもきっちりハーフタイムになるシーンが設定されており、ハーフタイム中のパラグラフでは、ワールドカップの概要やらマラドーナなど実在の有名選手の紹介など、サッカーにまつわる薀蓄を教えてくれます。
 一人用ボードゲームみたいな気分で、サッカーの入門的な内容と思って遊べばいいのかな。そうなるともう、スポーツ少年団の試合か町内会のサッカー大会レベルの感覚になってしまうのですが。

 同社の野球ゲームブック「ベースボール・ゲーム」(2002年08月15日の冒険記録日誌で紹介済)と比べると、ゲーム性はあきらかにこちらが良いと思えるし、そう悪い作品ではないとは思うのですが、なぜか感想を書けば書くほど、大会のスケール感が縮まってしまいました。このへんにしておきます。(汗)


山口プリン |HomePage

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