冒険記録日誌
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2011年05月07日(土) 拓植久慶のランサン作戦(拓植久慶/日経企画出版社)

 ベトナム戦争を題材にした戦争シュミレーションゲームブックです。
 けっこう大判で四コマ漫画のコミックと同じサイズの本で、パラグラフ数は全部で221あります。昔遊んだ、「オペレーションコニー グリーンベレー特殊作戦」(2002年08月03日の日記参照)に似ていますが、それの強化版みたいな印象。

 さて、筆者の名前がタイトルになっているあたり、おそらく拓植久慶氏はミリタリー関係の有名人と思われるのですが、そっち方面に疎い私には、どんな人か知らないのでありがたみがイマイチわからないです。
 本の著者紹介欄によると、軍事ジャーナリスト兼作家だそうで、大学時代の夏休みに外国人傭兵としてコンゴ動乱に参加した経験があるとか。文字通りひと夏の危ないアルバイトだなぁ。

 本をひらくとルール説明の前に、4ページの漫画で拓植久慶本人が登場しての解説があります。どっかの応接間で椅子にくつろぎワインなんか飲みながらなのでキザというか、方言で言うと、ええかっこしーな感じです。
 続いてルール説明ですが、トランプひと組を指定の方法で4山に分けたものと、サイコロ4個というちょっと面倒な準備を求められました。これはメンドイ。能力値のような数値管理はいっさいないので、その気になれば、もっと手軽に遊べるゲームにできたと思うのですが。
 次に登場人物紹介。主人公であるイエロー大尉を始めミッションを行う小隊のメンバー13名が紹介されています。
 年齢、体重、小隊での役割、簡単な経歴と習得している語学が書かれていますが、名前はブラック曹長だのグリーン二等軍曹だの適当に色の名前になってました。部隊の名前はないので、レッドリボン軍と勝手に呼ぶことにします。
 そして作戦会議ということで、ミッション説明のシーンがありまして、これがプロローグとなるのかな。
 今回のミッションの内容は、敵の本拠地に潜入して、弾薬庫を爆破すること。そして反撃してくる敵陣の中から脱出して、無事生還することです。
 次に小隊が所有する武器や爆薬の解説、各自が持っている野戦服まで含めた装備品の解説。これが14ページにわたる力の入った解説で、装備品の重量から、なぜこの装備が必要なのかまで細かく書いています。
 ルールでは所持品のチェックは必要ないので、ゲームプレイそのものには装備品のページは無関係ですが、純粋に豆知識として紹介しているのでしょう。とはいえ、単純に「一人40キロ近い荷物を背負ってのジャングルでの強行軍」と書かれるより、ゲーム中のリアリティーが増す効果はあります。
 最後にミッション開始直前の作戦会議として、部下も含めたミーティングが始まり、最初の選択肢として5つ考えられたルートのうちどれを選ぶかから、やっとゲーム開始です。

 基本的に用心深い行動を選択していけばいいのかなと、進めていくのですが、そんなに単純にはいかないようで、何度も絶滅しました。
 落ちているものを拾うか?のような時間とは関係のない選択肢なら、安全重視でよかったのですが、大抵は安全策を選ぶと、道を迂回するなどの行動になるので、それだけ時間と隊員の疲労が蓄積されるらしく、ゲーム中の主人公があせり始めて、悪い状況になるようです。とはいえ、楽天的な行動は敵兵に見つかってしまうのでこの兼ね合いが難しいところ。
 各隊員の個性はあまりなく、若干25歳でやや軽率な行動がみられる副隊長のブラウン中尉と、一番経験豊かなブラック曹長、それと現地案内人のカーキ少佐以外はまったく印象に残っていませんが、休息の指示をすると、火のついたタバコで体に吸いついたヒルを落としたり、レーション(食料)を食べたりし始める隊員たちが、生生しくて好きですね。
 ゲームは作戦ルートが多いので自由度がありそうですが、実際はシビアで、間違った選択肢を選ぶとすぐにゲームオーバーになります。
 現実的なシュミレーションゲームだからか、戦闘での死亡率が高く、一応は隊員が死んでも主人公さえ生きていれば大丈夫とはなっていますが、ほとんどは戦闘突入した事態でゲームオーバーが確定するので、敵に発見される=絶滅の覚悟で戦闘を避けることが必要です。
 武器庫を破壊してからの終盤の脱出も厳しかったのですが、それよりもミッション達成のエンディングシーンがなきに等しいくらいあっさりしているのが残念。

 感想としては、先日の日記に書いたダービースタリオンのゲームブックが、競馬のリアリティより遊びを重視したシュミレーションゲームだとすると、こっちは現実的なシュミレーションをゲームブック形式にしたという感じ。
 ゲームブックファンというより、ミリタリーマニア向けの本と思って楽しんだ方がいいのかもしれません。


山口プリン |HomePage

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